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こんな想い知らなかった


俺の家に来たくせに

俺のベッドで爆睡する明日香。


どうやら、課題をやってる間に
飽きて寝てしまったらしい。


「…おい、」


呼び掛けてみたものの

起きる気配はない。


「あすか、起きろ。」


大体、寝るなら
ココに居なきゃ良いじゃないか。


「…。」


そう思いつつも

明日香に布団をかけ直す俺。


…なにしてるんだ、本当。


昔の俺だったら
たたき起こして追い払い
出て行かせていただろうに。


なにをこんなに

可愛がってしまってるんだ。


そして何をこんなに

愛しく感じてしまっているんだ。


ベッドに腰かけた瞬間、
明日香が寝返りを打つから

慌てて立ち上がる。


「よしあき、くん…」

「なんだ。」


答えたのに何も言わず

不審に思い覗き込むと

目を閉じたままだった。


「…寝言か。」


人の布団で

どれだけ寝ているんだ。


いつも、ちゃんと
寝てないんじゃないのか??


「すーきー、」


ふふー、と
寝たままでも笑う明日香は

やはり変態だ。


「バカじゃないか??」


冷たくそう呟いてはみたものの

俺の左手はなぜか

明日香の髪を撫でていて。


変態はどっちだ、と

ため息が漏れる。


明日香に一歩近付いた瞬間。


「ちゃんと、着いたか??」


とゆう、俺の声。


ビックリして起き上がると

明日香もゆっくり目をこすり


俺を見て

慌てて起き上がる。


「わぁっ!!
よ、よしあきくんっ!!」

「人のベッドで勝手に寝るな。」


目を逸らした俺を見て

急いでベッドから降りる。


「ごめんなさいっ!!」

「なんだ??あの俺の声は。」


指摘にあぁ、と

笑顔で携帯を向ける。


「私のメール着信音。」


そしてニコニコしながら
もう一度俺に聞かせる。


「この間義旭くんが電話で
私の到着の無事を確認してくれた時の
義旭くんボイス、ですっ!!」


なぜそれを持ってるのかは

面倒なので聞かなかった。


「人の声を着信音にするなんて
本当、気持ち悪い女だ。」

「よく言われますっ!!」


だったら少しは意識してほしい。


「とゆうか…、

この布団、まさか、義旭くんが…??」


俺のかけた布団を掴み

心なしか嬉しそうに聞いてくる。


「風邪引かれる方が迷惑だからな。」


そう答えた俺にまた
抱き着こうとしてくるので

すかさず横に避けた。


「よしあきくんっ!!」

「なんだ??」


「すーきー!!」


そう言いながらまた、

俺を押し倒そうとするから

ベッドから立ち上がる。


すると明日香は

「あれ??」

と、首を傾げた。


「どうした??」

「これ、なんか夢で見た気がするっ!!

私が好きって言ったら
そうやって避けられる夢!!」


なぜか楽しそうな明日香に

また、ため息が漏れた。


「夢でも俺はお前を避けるのか。」

「うんっ、そりゃあ、現実のがもっと
すごい避けるけどー、」


明日香も立ち上がり、

上着を着ながら言う。



「現実の義旭くんのが

私は好きだなっ!!」



夢の中の俺なんかに

負けてたまるか、なんて


子供みたいなこと

考えてしまった。



こんな想い、知らなかった







**


恋とはどうやら

そうゆう、何と言うか


結局、

面倒くさい感情だ。






2011.03.14

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