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この声色、キミ専用


「ヒロってなんでギターなの??」


数学を補習してる時、

美奈が俺の隣で聞いてくる。


「なんでって??」

「だってヒロのが絶対に
清田よりも声良いじゃん。

なのに、なんでヒロが
ボーカルじゃないのかなって。」


「おい、春日っ!!

傷付くこと言うなよっ!!」


俺達よりも前の席で
同じく補習してるフミは

振り返ってそう言ってくる。


「なんでー??事実じゃーん。

絶対にヒロのが声良い。

ね、蘭??」

「えっと、わかんない、けどー…。

清田の声の方が笹内の声より


アホっぽいかも。」


ずーん、と暗くなるフミを
貴志は哀れむ様に見つめる。


「てんめぇ…、春日!!

フミの声はギャラスタお墨付きの
超美声なんだぞ、このやろうっ!!


福本先輩だってフミの声は
よく伸びて高音綺麗って
絶賛してたんだかんな!!」


しかし美奈は俺によりかかり
俺の腕を組む。


「そーゆう歌とかの専門的なことは
私には分かんないけどー。

声だけなら絶対に
ヒロのが色っぽいって。

ね、ヒロ??」


いや、ここで「ね??」とか言われても

THIEF的に素直には
頷けないんだけど。


「つーか、春日の前と俺らの前じゃ、
ヒロ、声色全然ちげーもんっ!!

春日の前だと低くなる!!

なっ、フミ!!」


変な言い掛かりをつける貴志に

フミは見向くこともできない。


「しらねーよ…。

もう、良いんだ、俺…。

早く終わらせて
流星達に慰めてもらう。」


そう言ったフミの肩を
貴志は慰めるように叩き、

美奈のことをキッと睨む。


「お前…、
フミに謝れ、このブスっ!!」

「やー、ひどーい。
ヒロー、日高がこわーい。」


ふざけながら俺に抱き着く美奈に

日高は更にご立腹だ。


「てめぇ…、ぶっ飛ばすぞ!!」

「おい、貴志。

言い過ぎだぞ。」


俺はわざとらしく声を低くし

貴志にそう言ってのける。


「!!
ほら、見ろ、春日!!米倉もっ!!

今、ヒロの声、低くなったろ?!」

「今のは笹内がわざとやったの!!

もう、日高、ホントうるさいっ!!
バカだし、ウザい!!


38は黙ってて!!」
(※38=貴志の恋愛偏差値)


米倉の言葉に傷付いた貴志は

フミの隣に静かに戻る。


「ヒロ、いっつもわざと声低くしてんの??」


そう言った美奈の耳元に

俺は唇を寄せる。


「うん。

わざとやってんだよ。」


そのまま軽くキスすると

美奈は楽しそうに笑った。



この声色、キミ専用







**


ヒロの声はなんか、

低くて、掠れてて、


色っぽくて、私専用。






2011.09.01
【hakusei】サマ
112「声色」
【確かに恋だった】サマ
わざとやってんだよ 

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