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20240613|太陽から逃げるスモークブルー

 今日は通院日だ。仕事を片付け、かかりつけのクリニックに行く。受付の女性が診察カードを渡したり、アンケートをお願いするときに「すみません、すみません」と言うのがなんだかひっかかった。謝るようなことじゃないのに謝る人がどうにも苦手だ。そんなちいさなことがひっかかるのだから、今日の自分のコンディションはあまり良くないのだろう。名前を呼ばれたので診察室へ向かう。
 私の主治医は小柄な男性で、静かで穏やかでありながら、あまり人に興味もなさそうだ。薬を減らしたいと言えば減らしてくれるし、増やしたいと言えば増やしてくれるだろう。今回は、月初に体調が悪い日が二日間あり休んだことを伝えた。先月も先々月も、一週目に体調を壊しているのだった。予防として、月曜日である七月一日を予定休とすると伝えると「それも作戦ですね」と医者は言った。あとは最近、体重が増えていることを伝え、同じ処方で痩せていた時もあったので薬は関係なさそうであることも伝えた。じゃあ現状維持で、ということでいつもの処方をしてもらう。
 帰りも受付で「自立支援の管理表に名前を書いてくださいね」と言われ、そんなこと言われたの初めてだな、とぼんやり思う。何年も通って、何回も交代しても受付の人が好きになれないのはこのクリニックの欠点だなと思いつつ、だからこそそんなに普段混んでいないのだろうし、気にしすぎないことにした。
 処方箋を片手にいつもの薬局に行くと、ちいさな薬局なのに三人も待っている人がいた。この薬局はコーヒーが無料で飲めるのを楽しみにしているのだが、今日はそのコーヒーマシンの前に人が座っていて飲めなかった。なんだかツイてない。ぼんやりと待っているとすぐ名前が呼ばれた。この薬局は仕事がテキパキしている。いつもは三十日分なのに今回は三十五日分で、大丈夫ですか?と薬剤師が首を傾けた。私は日程が合わず少し多めに出してもらったことを伝えると、そうなんですね、と笑顔になる。いつもいる人とは違うし、こんなに感情表現が豊かな薬剤師、あまり見ないなあとぼんやり思う。
 薬局を出ると、アジサイが夕陽を浴びて咲いていた。太陽とアジサイ、梅雨の晴れ間には見るけれど、なんだか変な感じがする。水色、むらさき、ピンク、西日が眩しそうなスモークブルー。あまりに輝いていると乾いてしまいそうだ。太陽から逃げるようにして、私は日陰を歩き出した。明るいだけが正解じゃないんだよ。わかってるよ。それでも光に憧れながら、私は東に進んで行った。

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