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【陶芸】撥水剤の注意点と使い方の応用

このnoteでは、陶芸における油性の撥水剤(はっすいざい:水をはじく成分でできた薬剤)の注意点や少し変わった使い方についてまとめています😀
特に注意点については、私の実際の失敗経験から自戒の意味も込めて書いておりますので、結構役に立つかと思います👍

前半は基本的な内容ですので、陶芸経験のある方は「■撥水剤の注意点(失敗事例と対策)」まで飛ばして頂くのも良いかと思います😉

■そもそも撥水剤って何?

陶芸では、釉薬(ゆうやく:うつわにガラス質のコーティングを施すための薬)を掛けるときに使われることが多いです。
うつわの底に釉薬が付かないようにするために、素焼きのうつわに筆で塗ります。(後述しますが、うつわの底に釉薬が付いていると、窯の中で溶けてくっついてしまいます😱)釉薬は水に溶いて使うので、撥水剤を塗ることで釉薬を弾きます😉

撥水剤は油性のものと水性のものがあります。
油性のものは撥水力が高いのが特徴です。原料が無色透明なので、どこについているか分かるように着色されています。(紫色がメジャーなイメージ)キシレン、アセトン、トルエン、酢酸エチルなどの有機物から作られた製品が多いようです。撥水力に優れますが、有機溶媒のため、引火性・中毒性があり、特有の刺激臭がします
水性のものは撥水力は劣りますが、引火性・中毒性がなく、臭いも穏やかなようです。
撥水剤は窯で焼けて消えてしまうので、完成作品に影響はありません🙂ただ、焼くまでは拭いても取れないので注意が必要です⚡

他にも、溶かしたロウ(パラフィン)や、液体ゴムも撥水剤として使われます。マスキングテープを貼るのも良いでしょう。液体ゴムやマスキングテープは剥がすことができるというメリットがあります👍

以降では、油性の撥水剤について説明していきます。

■撥水剤の基本的な使い方

前述のように、基本的には撥水剤はうつわの底に釉薬が付かないようにするために、素焼きのうつわに筆で塗ります😀(写真の紫のところが撥水剤

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なぜ底に釉薬が付いてはいけないかというと、釉薬は窯の中で溶けてうつわのコーティングになるので、窯の棚板(たないた:窯の中には作品がたくさん入るように、棚板と支柱で棚を組んで作品を乗せます)に作品がくっついてしまうからです。

(▲窯の中の棚と作品、作品が触れるのは棚板だけ

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(▲棚板と支柱の画像、陶芸.comより引用)

食器の場合、裏側の底の部分には釉薬が付いていないからザラザラしていますよね?その部分が焼くときに窯と触れていた部分です😀
なので作品を作っている段階で、焼成時の棚板との接地面をどこにするか考えておかないといけません。接地面には釉薬を塗れないからです🙄

余談ですが、撥水剤で釉薬が付かないようにしなくても、釉薬を付けた後に拭き取ればいいです。撥水剤を塗るよりもスピーディーなので、工場で生産する場合は拭きとっていることが多いです。
ただ、そうすると釉薬がムダになってしまったり、拭き取りモレが棚板にくっついてしまう可能性があるので、個人で作陶する場合は撥水剤を使われるイメージがあります🙂

■撥水剤の注意点(失敗事例と対策)

私が経験した失敗から注意点を挙げます⚡当たり前の内容ですが、撥水剤での失敗は非常に厄介なので注意すべきことと、なぜ厄介なのかを説明します。

1.付いたらダメなところに付いてしまった!

本当に当たり前のことです😂でも、気を付けていてもどこかに付いてしまったりするものです。
以下はどういうシチュエーションで思わぬところに付くかです🙄

1-1.筆からしずくが垂れた!

撥水剤が入っている容器に筆を入れ、作品の方に筆を持っていく途中で撥水剤のしずくがポトっと落ちた、こういう経験のある方も多いのではないでしょうか😓
特に平たいお皿など、窯との接地面積が多くたくさん撥水剤を塗らないといけないとき、筆に撥水剤をたっぷり含ませると、途中でボトっと落ちてしまいますよね😥
★対策
ある程度筆をしごいて含ませる量を調整しましょう。焦ってたくさん筆に付けたら後が大変です。
机に落ちたら有機溶媒で拭き取らないと取れません…。新聞や作業用の板の上で作業した方がいいでしょう😎

1-2.たっぷり塗って垂れてしまった!

これもあるあるだと思います。うつわに塗る量が多すぎて、素地(素焼きの生地)に吸い込まれる前に垂れしまいます😣
★対策
これを防ぐためには、垂れてもいい方向、すなわちこれから撥水剤を塗り進める方向を下に向けてうつわを持つことです。垂れないに越したことはありませんが、最悪垂れても問題ありません👍

1-3.手に付いてて触ってしまった!

撥水剤は意外と乾きにくいです。(次でも説明します)
乾いたと思って触ってしまって、知らない間に手に付いていることがあります。そしてうつわを触ってしまい、釉薬が掛からなかった~ということがありました😔
★対策
手に付いてしまった場合はすぐにティッシュや新聞でしっかり拭き取りましょう。手に付いた撥水剤も結構乾きにくく、そこら中に付いてしまいます。

2.意外と乾きにくい!

私の印象ですが、素焼きの素地に対して塗るとき、釉薬より撥水剤の方がなかなか乾きません。釉薬はすぐに水分が吸収されますが、撥水剤はそれよりも長時間ベタベタしています😥
★対策
撥水剤を塗ったら、塗った面を上に向けて5分ぐらい乾かしておいた方が良いです。

撥水剤が乾かないまま施釉すると、手に撥水剤が付いてしまって1-3の状態になったり、釉薬がしっかり弾かれず撥水剤の上に乗ってしまいます😱

これもよくある状況だと思うのですが、「何個か作品があって、いざ釉掛けをしようと思ったら、1個塗り忘れてた」というシチュエーションです。塗り忘れたうつわに撥水剤を塗ったら、気持ち的にはすぐに釉掛けしたいですが、ちゃんと乾かしてから釉掛けしましょう😕

2-1.特に凹凸がある部分が乾きにくい!

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上の写真のお皿のフチのように、装飾として溝を掘った部分や、

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銘(サイン)を掘った部分など、溝になっている部分には撥水剤が溜まってしまうので乾きにくいです😣
★対策
「乾いたかな?」と思っても乾いていない場合があるので、溝の部分はなるべく触らないようにしましょう

撥水剤がうつわに付いてしまったら

撥水剤がうつわの釉薬を掛けたい場所についてしまった場合、「しっかり釉薬を上に乗せたら付くだろう」と思いませんか?いいえ、全く付きません!😵腹が立つぐらいしっかり弾きます

一番やってはいけないのが、強行突破して釉掛けすることです😫釉薬は付きません!

なので、付いてしまった部分を撥水剤の色が見えなくなるまでしっかりヤスリで磨きましょう
磨けない部分に付いたり、広範囲についてしまった場合はもう一度素焼きするしかありません。これがかなり厄介な理由です🙄

釉掛けをしてしまうと撥水剤が付いている付近の釉薬を拭きとってからヤスリ掛けしないといけません。その部分の釉薬がムラになってしまうので、「もしや撥水剤が付いたかも?」と思うときは釉掛けする前に撥水剤が付いてないかチェックすることをおすすめします😮

万が一に備えて周りを片付けてから作業する

どの作業にも当てはまりますが、撥水剤は上記の理由で失敗すると厄介です。陶芸教室に通われている方は特に、他の方の作品や持ち物には絶対撥水剤が付かないように、作業前に周りを確認しましょう😎
また、撥水剤の容器を倒したり、筆が転がったりしても大丈夫なように、環境を整えてから作業しましょう👷‍♀️


■撥水剤を使った装飾のアイデア

撥水剤は「棚板との接地面に釉薬を付かないようにする」という基本的な使い方以外にも、「水分を弾く」という特徴を利用して装飾に使うことができます😊
私が実際にやってみたことがある技法や、ネットで発見してやってみたいなと思っている技法について紹介します。

1.素焼きのうつわに塗るアイデア

基本の使い方と同様、素焼き後の素地に撥水剤を塗るパターンです。

1-1.模様の形に塗る

上の動画では、3分15秒くらいから、ストライプに撥水剤を塗って柄にされています。(サムネイルの写真)
撥水剤を模様の形(ストライプや〇など)に塗るとその部分にだけ釉薬が付かないので、模様になります。
ポイントとしては、撥水剤の上に少量残った釉薬をスポンジでしっかり拭き取ることです👍撥水剤の上に弾かれた少量の釉薬が玉型のしずくになって溜まります。これは取り除かないとくっついたまま焼きあがってしまいます🙄

2.釉薬の上に塗るアイデア

2-1.釉薬を掛け分ける

1つの器に複数の種類の釉薬を重ならないように掛けたい場合です。次の釉薬を掛ける前に、前の釉薬の境界の部分に撥水剤を塗っておけば、釉薬が重なる心配がありません。

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上の写真では、まずいろんな色の釉薬を丸い形に塗っています。丸以外の場所に白い釉薬を掛けたいです。

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次に掛ける白い釉薬が付かないように丸の部分に撥水剤(写真の紫の部分)を塗ります。

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コップを丸ごと白い釉薬に沈めると、上の写真のように撥水剤以外の場所に釉薬が掛かります。

注意点としては、釉薬同士の境界をどれぐらい開けるか考えながら撥水剤を塗る必要があります🙂少し重ねるのか、まったく重ねないのか、少し間をあけるのか。上の写真の場合は少し間をあけて、素地が見えるようになっています。

2-2.釉薬を重ね掛けして模様を出す

釉薬が1種類だけ掛かったところと、2種類重ねて掛かったところとで模様を出す方法です。

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上の写真では、白い釉薬を全体に掛けた後、撥水剤で丸模様を描きました。その上からグレーの釉薬を下3分の2に掛けています。

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焼き上がりはこのようになりました👍撥水剤を塗った丸の部分は白の釉薬しかかかっていませんが、茶色っぽい部分には2種類の釉薬が重ね掛けしてあります。

3.乾燥後の素地に撥水剤を塗るアイデア

3-1.素地を均一に掘る

こちらの動画の1分20秒頃から、素焼き前の生で乾燥状態の素地に撥水剤を塗っています。その後1分40秒頃から、スポンジで素地を拭き、撥水剤が付いていない部分の土をスポンジに染み込ませるというやり方で削っています😲

下記の作品もおそらくこのやり方で作陶されたのではないかと思います。

この方法を応用して層を作る方法が以下です。

こちらの動画でも同様に、スポンジに土を吸収させる方法で削っています。12分55秒頃から、一度スポンジで削った後に、再度撥水剤を塗って2回目の削りをしています。こうすることで削りを2層にしています。(サムネイルの右の作品)

上の2つの動画を参考に私が作ってみたのがこちら。

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魚の撥水剤

1回目は①の青い部分に撥水剤を塗ってそれ以外の部分をスポンジで吸い取って削ります。次は②の赤、次は③黒の部分に撥水剤を塗って、同様にスポンジで吸って削っていくことで、層を作ることができます。
この技法はなるべく目の細かい土を使う方がスポンジで吸い取ったときにキレイです✨私は半磁器土を使いました😀

4.化粧土の上に撥水剤を塗るアイデア

4-1.違う色の化粧土を塗り分ける

Instagramで見かけた技法です。素焼き前、成型時の装飾に撥水剤を使っています。動画を解説すると、
・紙の型を使って、カラフルな化粧土(装飾用に使う液状の土)をイチョウ型に塗っています
・化粧土が乾いたらその上に撥水剤(ロウかな?)を塗ります
撥水剤と化粧土を素地ごとヘラで土を描き落として溝を掘っています
溝には撥水剤が付いてないので、黒の絵の具が付き、それ以外の部分は弾いています
こうすることで細かい線をくっきりと描くことができますね。
近々やってみたいと思っているので、また更新します✨😎

■最後に

撥水剤の注意点と使い方の応用でした。質問がございましたらお気軽にコメント欄からお願いします😌
また、注意点について、他にもお気づきの点があれば書き足したいので是非教えてください😃
使い方の応用についても、「こういうのはどうか?」「ネットにこういう方法が落ちてた!」等、コメント頂けたら嬉しいです😊









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