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最初から。

青年は、幼い頃から捻くれ者と呼ばれ、常にどこか周りから浮いていた。
薄い一重まぶたの下にある切長の黒い目は、より一層周囲との壁を作った。
「どうでもいい」
それが彼の口癖。


青年は大人になり、会社勤めをするようになった。
口下手で愛想の無い青年は、上司からも同僚からも後輩からも好かれなかった。
「気にしてない」
彼はそう言って、仕事を黙々とこなした。


ある日のこと、電車に乗った青年の前には年配の女性が一人。
青年は席に座っており、女性はその前に立っている。
青年の隣には、これまた恰幅の良い男性が気難しい顔で目を瞑っている。
反対側の隣には、綺麗な若い女性がスマホで音楽を聴いていた。
電車内は混雑していて空気が悪い。
青年は悪い目つきで、目の前の女性と、その周りをちら、ちらと見やっていた。
周囲の人はそんな空気に溜息をついた、
と、そのとき。
青年はさっと立ち上がると「どうぞ」とほとんど聞こえないくらいの声で目の前の女性に言った。
女性は口元を抑えて「すみません」と言うと譲られた席に座る。その顔は真っ青だった。どうやら具合が悪かったらしい。
青年は悪い目つきのまま手摺にもたれるとそのまま電車に揺られていた。


意外でしょうか?
いいえ、最初から青年は優しい人。


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