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ようやく『ジョン・ウィック:パラベラム』を観に行けた ~山盛りのアクションシーンと「静」のカッコよさ~

 せっかくnoteのアカウントを作ったことだし、ジャンルだとか形式だとかはあまり気にせず書こうと思ったことをとにかく書いていくことにした。今回は『ジョン・ウィック:パラベラム』...上映終了前日になってようやく観に行けた映画についてだ。

注:上映から1か月経過している作品だし大丈夫だとは思うがネタバレがあるので注意。


人VS人でやれる戦闘シーンがほぼ網羅されていて見応えがあった

 『ジョン・ウィック』シリーズ過去2作では敵もジョン・ウィックも基本的には銃で戦っており、他のアクションシーンはというと、銃撃戦の合間にクルマでぶつかり合ったり伝説の再現と言わんばかりに鉛筆で追っ手を殺したりする程度に抑えられていた。引退した元殺し屋(ジョン・ウィック)が、波のように押し寄せる敵を無駄のないプロの銃捌きでクールに撃ち殺していく姿に観る者の焦点が合うようになっており、そこから「渋さ」とか「カッコよさ」を感じられるように出来ていた。


 では今作はどうなのか。結論から言うともう詰め込みすぎなんじゃないかというくらい多彩なキリングアクションが観られるようになっている。ナイフは使う、も投げる、に蹴らせたり市中引き回しの刑にさせたりもする。
日本刀も振り回していた。突如時代劇の侍みたいな構えを取ったりせず、西洋人らしい剣捌きなのがキャラクターに合っていて良かった。は...ソフィアがけしかけていた。
ジョン・ウィックは今まで一人で戦ってきたが、今作ではモロッコ・コンチネンタル・ホテル支配人のソフィアとその飼い犬たちと一緒に戦ったり、NY・コンチネンタル・ホテルコンシェルジュのシャロンと手分けして刺客と戦うなど、戦いのシチュエーションも幅が広がっていた。
そして当然ながら、ガンアクションがあった。ある時はその場にあった弾の入らない銃のパーツを組み替えて、またある時は相手から奪い取って、最後にはコンチネンタル・ホテルで装備を整えて...ジョン・ウィックは銃を手にし、冷徹に引金を引いていた。

 そして何より重要なのが、アクションの種類は増えたが、どの場面においてもジョン・ウィックの殺しのスタイルが一貫していたことだった。敵を必要以上に痛めつけたり大声を上げて暴れまわったりせず、最低限の攻撃で敵を殺し、いちいち感情を表に出さない......プロの殺しをガンアクション以外にもあらゆるアクションで観られるようになった。
それは単純に見どころが多彩になり、「もう似たようなシーンを見すぎてお腹いっぱいだよ...」とならなくなったことを意味する。「カッコよさ」を維持したまま見応えが増えたのだ。



敵がかなり強くなっていてエキサイティングだった

 今作は敵が強い。コンチネンタル・ホテルのサービスも使えないので装備を整えるのも一苦労というのも相まって、今までのように毎度毎度出てきた黒服を全員ヘッドショットして次のシーンへ...とはいかなくなっていた。しかしそれが体術多めの戦闘を行う理由になっており、過去作の積み重ねもあって「まあジョン・ウィックが死ぬことはないだろう」という安心感も少し持てていたのでストレスには感じなかった。むしろ戦闘に張り合いが生まれ、敵のキャラが立ち、双方のアクションに魅力が溢れるようになっていた。

 特に気に入っているのはガラス張りの部屋でのジョン・ウィックVSゼロのシーンだ。
倒れてから顔を上げると敵が消えている...?!困惑しながら周囲を警戒していると、死角や画面の最も暗い所から音もなく一閃を喰らわせてくる......
こういうベタだけどみんなが好きなシーンを、敵味方の両サイドで組み込めるようになったのも、ひとえに敵が強くなってくれたおかげだろう。ちなみに俺はこのシーンの中でも、ジョン・ウィックが今作がホラー映画にならない程度のいい塩梅で暗闇から出てきて攻撃する所が特に好きだ。


 しかしながら、これまで戦闘とは無縁そうだったシャロンが銃を手に主席連合からの刺客と戦っているシーンは流石に肝が冷えた。何せ今作は敵が強いからだ。シャロンは個人的にかなり好きなキャラクターだったのもあって、他の従業員が次々と撃ち殺されていくシーンを観ていた時は「この流れで死んでしまうのでは...?」と考えてしまい気が気でなかった。最終的には何食わぬ顔で生還していたので、俺は安心して劇場を後にすることができた......



過程や準備がいちいちカッコよかった

 『ジョン・ウィック』シリーズの見どころはアクションだけではない。アクションに至るまでの過程や準備......武器の準備、スーツの新調、銀行や図書館のような施設での隠れたやりとり、そして殺しの瞬間には見せない人間らしい感情......そういったシーンをもカッコよく描ききる事によって、観る者の熱量を冷めさせないように出来ている。『ジョン・ウィック2』は特にその傾向が強く、「男の子はみんなこういうのが好きなんでしょ?」的要素が序盤に山ほど詰め込まれており、アクションシーンへの期待を否応なしに高めてくれる。

 今作のそういったシーンもカッコいいが、味付けが変わっている。凄腕の殺し屋から逃亡者になってしまったので当然と言えば当然だ。でもカッコいい事に変わりはない。
敵の足音が迫る中で、リボルバーを解体して組み直すだけで緊張感がビリビリ伝わってくるし、そこから弾を込め一発でヘッドショットを決めた瞬間をカッコいいと思わない奴なんていないだろう。
裏社会全体から追われる身でありながら、頼れる人物が裏社会にしかいないという絶望的な状況の中、そんな人物たちに対して交渉によってなんとか生き残る道を繋いでいく姿からは、ここで道が絶たれるかもしれないという緊張感と、そのような状況でも折れない精神的な強さ......内から出るカッコよさを感じた。


 そして忘れてはいけないのが、敵サイド......主席連合側の「アクションシーンの前の動き」も描かれているということだ。
そういったシーンを動かすのに使われていた人物が裁定人だ。ジョン・ウィックに陰ながら手を貸した者たちの行動は全て筒抜けであり、彼らの元には裁定人が訪れる。そして裁定人は厳粛に処罰を宣告し、彼らにはジョン・ウィックの殺しのスタイルとは真逆な惨たらしい処罰が与えられる。この裁定人は画面に出てきた瞬間に只者ではないと分かるくらいクールで、嘆願なんて一言も聞いてもらえそうにない雰囲気が最高だった。


 そんな裁定人がゼロへジョン・ウィック暗殺の任務を伝えに来るシーンは特に良い。ゼロの表の顔は寿司屋で、最初はコテコテの日本語訛り英語で話すのだが、裁定人から任務の話を聞いた途端ネイティブ発音に変わり、主席連合に仕える殺し屋の顔になる......「表社会に紛れ込んでいた人間が裏の顔を出す」というこれまたベタなシチュエーションだが、男の子の好きな要素がしっかり詰まっているのでカッコいいと思わされてしまうのだ。
この一連のシーンから、弟子たちと共に先ほどの処罰のシーンの執行役を次々と務め上げていき、「こいつは今作でも特に強そうだ......」と思わせてくれるのも良い。


 アクションが始まる前から既にキマっている、「静」の状態が既にカッコいいのも、今作を含む『ジョン・ウィック』シリーズの美点だ。



犬、犬、そして犬

『ジョン・ウィック』と犬の間には切っても切れない縁がある。何せ一歩間違えればただの冷酷な殺戮マシーンとして描かれそうなジョン・ウィックがヒロイックなのは、妻と妻が遺した犬、そして今飼っている名もなき犬のおかげだからだ。犬への愛情、(一作目に限れば)犬を介して妻への愛情を湿っぽくなりすぎないラインで示してくれるから、ジョン・ウィックを狂人ではなく愛の為に戦う男として見ることが出来る。


 今作では新たな犬が登場した。ソフィアが飼う二匹のベルジャン・マリノアだ。訓練され、勇猛なこの二匹は、『ジョン・ウィック』シリーズにおける今までの「愛情の向かう先」としての犬の在り方を保ちつつも、「共に戦う仲間」としての犬の在り方を拓いた。
そうなった要因は、主席連合の一人・ベラーダが犬を「愛情の向かう先」と捉えられず、「持ち物を壊してわからせよう」くらいの感覚で危害を加えようとしたためであり、結果としてソフィアは一作目のジョン・ウィックのように覚醒し、ベラーダは犬に噛まれて股間を血で染める事となった。


 そして最後には、ジョン・ウィックの名もなき犬がコンチネンタル・ホテルから駆け出して、ご主人を追うように路地裏へ走り去っていく......
ジョン・ウィックと犬は、これからも共にあることだろう......


今作でも、犬はジョン・ウィックやソフィアに人間らしさを与え、時には心なき敵を映す鏡となり、重要なファクターとして存在していた。



最後に

 『ジョン・ウィック:パラベラム』を観て頭に思い浮かんだことはあらかた書ききった。だがこの映画はアクション映画なので、言葉で伝えられる要素には限界がある。なのでまだ上映されているのであれば、やはり実際に観に行ってほしいし、上映期間が終わったのであればDVDとかAmazonプライムとかの正規の手段で観てほしい。
既に観たという人も、今作はいつもより一対複数の格闘シーンが多く、細かい部分の見逃しが多発するのでもう一度観に行ってほしい。

 今回の記事はただの感想文だったが、「コイツは『ジョン・ウィック:パラベラム』を相当楽しんだんだな」という事が伝われば幸いだ。


 今後も何か思いつき次第、書けるだけ書ききって感情とか思考とかを解放していくつもりだ。

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