トウドノリアキ

小説や感想文を投稿する習性がある

トウドノリアキ

小説や感想文を投稿する習性がある

マガジン

  • 単体で読めるもの

    一話完結の作品とかはここに置いてあります。

最近の記事

銀世界の峠で、悪魔を見た #パルプアドベントカレンダー2023

 このご時世に走り屋をやっている吾妻のもとに、とある違法レースの情報が舞い込んできた。 『12月18日の0時より、北海道某所の峠道で賞金制の公道レースが行われる』  それを知ったときの吾妻の反応がこうだった。 「冬の北海道で峠を攻める、か。絶対危ねえけど、ヤバイ奴らと戦れそうだな!」  吾妻が降雪地帯で高速走行をした事は一度もない。当然、彼の友人はみな一度は引き止めた。だが普通のレースすら中々行えないこの時代に賞金ありのレースが開催されるとあっては、生粋の走り屋である彼を

    • 人喰らいの牙を折れ #パルプアドベントカレンダー2021

       人里に降りてくる熊にも種類がある。山に餌が少なくなり仕方なく降りてくる熊には同情する。人間の食べ物の味と、それを漁ることの容易さを覚えてしまった熊は厄介極まりないが、懲らしめて山に帰してやることはできる。しかし、残念ながら生かしておくことのできない熊が存在する。人の肉の味を覚えてしまった熊、通称『人喰らい』だ。この地に銃が持ち込まれるよりはるか昔の時代より、人喰らいは他でもない人自身により斃された後、その一切をこの世に残さぬよう切り刻まれ、海に流され清められてきた。しかし、

      • あわてているサンタクロース

         クリスマスイブの夜、いつもならもう寝ているような時間なのに、今日のユミちゃんはずうっとテレビを観ています。 「コラッ、ゆみちゃん! 早く寝ない悪い子のところにはサンタさんが来てくれないわよ?」 「えーっ!? でもユミ、サンタさんのお顔が見たいの……」 「サンタさんは恥ずかしがりやさんだから、おめめを開けたまま待ってたら怖がって来てくれないぞ~?」 「そうなんだー……ざんねん」  パパとママにそう言われると、ユミちゃんはしぶしぶパジャマに着がえました。 「パパ、ママ、お

        • ボーイズ・ヴァーサス・ブラックボマーサンタ #パルプアドベントカレンダー2020

           Photo by Egor Oxford on Unsplash  今日は楽しいクリスマス! 嗚呼、実に楽しいクリスマス。男友達と二人きり……  今年『も』彼女ができず、サークルにもほとんど顔を出さなかったせいで忘年会に出るのも気まずかった俺は、友人の中で唯一クリスマスの日にヒマしていた日高と共にスーパーへ食材の買い出しに出かけていた。今日は腕によりをかけて料理を作る、と日高が言っていたからだ。正直、俺はピザでも頼もうかと考えていたんだが、そう口にすると日高があまりにも悲

        銀世界の峠で、悪魔を見た #パルプアドベントカレンダー2023

        マガジン

        • 単体で読めるもの
          5本

        記事

          装鬼 第2話「ハイウェイの狩人」 #2

          【第2話#1へ戻る】 【前回までのあらすじ】  深夜の札樽道にて高級車が爆発炎上する事件が発生。犯人は暴走族『我阿雨流武頭』。彼らは路上で富裕層を襲撃し毛皮製品を奪い取る強盗団でもあり、襲撃時の殺しをも厭わない残虐なグループだった。  これを受け、スティールマン・セキュリティ社は交通部道路交通課を現場へ派遣した……その中には茨木の姿があった! 『騎士』との一件で失った左腕をサイバネ換装し、現場へ復帰していたのだ!  茨木は道路交通課のハッカー・山茶花(さざんか)と共に、さ

          装鬼 第2話「ハイウェイの狩人」 #2

          装鬼 第2話 「ハイウェイの狩人」 #1

          【第1話#1に戻る】  今では珍しい年代物の高級車が、深夜の札樽自動車道の下り線を全速力で走り続けていた。後部座席に座っている少女は半泣きで丸く縮こまりながら母親に抱きしめられ、助手席に座っている主人は脂汗を流しながら、運転手とサイドミラーを交互に睨みつけていた。その運転手は無意識のうちに涙を流しており、ハンドルを握る手はあまりの力みぶりにガタガタと震えていた。  ……まるで、何か恐ろしいものに追われているかのような有様だった。  否、追われているのだ! 今まさに! 後

          装鬼 第2話 「ハイウェイの狩人」 #1

          装鬼 第1話 「黒百合騎士」 #3(結)

          【#2に戻る】 【前回までのあらすじ】  アジト内部の捜査を開始した機装係が1階で発見した者は『清田決死隊』に店を奪われ今日まで休みなく働かされていた哀れな夫婦だった。機装係は救助した彼らから今回の事件の犯人と思しき人物の姿を聞き出し、2階と地下の二手に分かれて捜査を再開した。  地下で『騎士』と名乗る犯人と遭遇した清嶋係長率いる隊は瞬く間に2名が殺され、清嶋係長も応戦したが、騎士の圧倒的な敏捷性の前に完敗し殺された。  一方、地上では奇妙な救援要請を受けた茨木らの隊が1階

          装鬼 第1話 「黒百合騎士」 #3(結)

          装鬼 第1話「黒百合騎士」 #2

          【#1に戻る】 【前回までのあらすじ】  2050年5月8日、札幌で愚連隊『清田決死隊』のアジト及びその周辺にいた構成員らを標的とした猟奇大量殺人事件が発生した。崩壊した国家・警察に代わり治安維持や事件捜査を行う民間企業『スティールマン・セキュリティ』(以後『SS社』)は地域住民からの通報を受け出動、そして地獄の様相を呈する現場と向き合うこととなった。  目撃者の証言や遺体の状態から、強力なサイバネ装備者(サイボーグ)による単独犯であると断定したSS社は対サイバネ犯罪者専門

          装鬼 第1話「黒百合騎士」 #2

          装鬼 第1話「黒百合騎士」 #1

           「スティールマン・セキュリティの須藤です。貴女が通報者の春山さんですか?」 「はい」 「突然の事でショックを受けていらっしゃるでしょうが、通報時の状況について詳しくお伺いしても宜しいでしょうか?」  玄関先で質問しているのは、民間警備・治安維持会社『スティールマン・セキュリティ』の社員だ。その視線の先にいるのは、5分ほど前に同社へ通報した春山という若い女性だ。その傍らには、未だに恐怖で肩を震わせている彼女を支える、春山より一回り背の高い女性の姿があった。 「……はい。私は先

          装鬼 第1話「黒百合騎士」 #1

          ようやく『ジョン・ウィック:パラベラム』を観に行けた ~山盛りのアクションシーンと「静」のカッコよさ~

           せっかくnoteのアカウントを作ったことだし、ジャンルだとか形式だとかはあまり気にせず書こうと思ったことをとにかく書いていくことにした。今回は『ジョン・ウィック:パラベラム』...上映終了前日になってようやく観に行けた映画についてだ。 注:上映から1か月経過している作品だし大丈夫だとは思うがネタバレがあるので注意。 人VS人でやれる戦闘シーンがほぼ網羅されていて見応えがあった 『ジョン・ウィック』シリーズ過去2作では敵もジョン・ウィックも基本的には銃で戦っており、他のア

          ようやく『ジョン・ウィック:パラベラム』を観に行けた ~山盛りのアクションシーンと「静」のカッコよさ~