キャリア・ドリフト

 楠木建さんの記事「仕事は思い通りにいかぬもの 川の流れに身をまかせて」を発見。まさに「キャリア・ドリフト」の考え方で、以前ヒューマンリソースマネジメントを学んだ際に、金井壽宏さんの「働くひとのためのキャリア・デザイン」でこの考え方に触れ、今でも自分自身のキャリアに対する考え方の基礎となっている。

 キャリアは状況に応じ流されてみる。ただ、ずっと流されるだけでなく、時折訪れる節目ごとに、自分のキャリアについてじっくり考えてみる。そんな考え方のことだ。

 多くの学生さんと接してきた中で、将来の目標や仕事で実現したいことの明確さ・明快さに驚かされることが多かった。ありたい自分、なりたい自分をイメージし、目標に向かって努力していく。入社後の配属先・やってみたいことも明確。

 一方、現実はそんなに甘くない。希望通りの配属になるなんてわからないし、配属になっても学生時代の知識がそのまま通用するほど甘くない。社内調整・人間関係など本筋以外の要素に悩まされることも少なくない。就活時に自分自身のやりたいことが明確であった人ほど、この現実とのギャップに悩まされることが多いのでは?というのが人事担当者として感じたことである。

 「自分のやりたいことができない」こんな理由で転職するものの、転職先の仕事内容を聞いてみて、「それがやりたかったことなの?」と感じることも少なくない。そんな機会に遭遇する度に、新天地へ旅立つ後輩達を応援する気持ちと残念な気持ちの入り混じった複雑な想いを持ってきた。

 「やりたいこと」が明確でなかった私自身は、結果として自分のキャリアは流されたままになってきた。ところが、「おっさん」になった自分自身のキャリアを振り返った印象は、「そんなに悪くないのでは?」である。勿論、転職・退職を考えたこと、沢山。ただ、流される間にも自身の関わる仕事ではベストを尽くし、節目においては自分自身のキャリアを振り返り、考えてきた。

 固執し過ぎない、流され過ぎない。起業という選択肢に踏み切れるほどの力もない自分にとっては、好きな仲間たちと仕事に没頭し、仕事の中に自分のやりがいを見出していくのが心地よかったし、楽しかった。そんな自分からのアドバイスとしては「一旦、流されてみては?」が一番しっくりくる。

#COMEMO #NIKKEI

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