紫陽花の窓

見えない天空へと続く

螺旋階段の上から響いていた

重力を知らない蝶の飛翔

ピアノの旋律が途切れるとき

少女の手から零れた銀の時計が

ゆっくりと

冷たい大理石の床へ落ちていく

散らばった哀れな時間たち

水の中に落ちた花火のように息絶えて

虚ろに残された文字盤の白さが

悲しみと絶望に見開かれた窓の

破れたレースカーテンとなって

荒れ狂う五月の風とワルツを踊りだす

するともう黒い雨だ

庭先に微睡んでいた紫陽花たちが

青ざめた瞳を一斉に見開いて

窓際の揺り椅子に腰掛けた

骸骨の人形のような

白い髪の老女の遥かな追憶を

憂鬱な色彩のレリーフで飾る