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移ろいゆく金星【あらすじ、筆者紹介】

あらすじ
 男子校に通っている創は、普段あまり話さないタイプの寧音ねおと下校のタイミングが被ったことから仲良くなっていく。男しかいない環境のなか、寧音と出会うことで自らの性的指向が移ろいゆくのに戸惑いながら日々を過ごしていく。出会いがもたらす変化の物語。

筆者より
『移ろいゆく金星』を書きました、しゅうです。本当は性的同意についての話を書きたかったはずだったのですが、後半部分の場面から書き始めてそれに伴うエピソードを羅列していたら、思いの外そこに到達するまでが膨らんでしまい、風呂敷が畳めなくなってしまいました。本誌テーマである「戦い」の部分もあまり触れられず取ってつけたようになってしまいましたが、まだまだ青二才である自分の一つの成長点として受け止めます。楽しく描けました。

作品抜粋
「寧音、キスとか興味ある?」
「そりゃあ、あるよ」
「え」
「えってなんだよ」
 寧音が笑う。
「まぁそりゃそうだよな」
「どうしたんだよ急に」
 どうしたんだよ急に、胸のなかで反復する。そりゃそうだ、いままで寧音とはそういう話題にならないように意図的に避けていた。自分でも聞きたいくらいだった。どうして急に寧音に話を振ったのか。よく考えないまま口を動かす。
「いや、中学の友達にこの間あった時にそういう話になって」
 そのまま話を続けていいのか逡巡したが、寧音が相槌を打つのが横目に見えた。
「そりゃ興味あるけど、男に囲まれて過ごすうちになんか満足しちゃって。いまが楽しいし、充実してるなって感じちゃって」
「悪いことじゃないだろ」
「それが、前に好きだった子が別の生き物みたいに見えて」
「なんだそれ、着ぐるみでも着てた? パンダとか」
 笑いながら身体を向ける寧音と目があった。
「なんか、なんていうんだろう。知らない、って思った。想像つかなくて。興味はあるんだけど、興奮しないんだよ。前はそんなことなかったのに」
「僕にはよくわかんないけど……。だったら」
 そう前置きして、俺のほうに身体を向ける。
「試してみる?」

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