なぜあなたは福祉の仕事をしようと思ったのですか?

「なぜあなたは福祉の仕事をしようと思ったのですか?」
「なぜあなたは看護師になろうと思ったのですか?」
 そっか。と昨日、お話しをききながら思っていた。○○の仕事、教師、介護士、ソーシャルワーカー、看護師、セラピスト、医師。。。こういった対人支援の職業や専門職にはこういった問いがつきまとう。弁護士や司法書士さんなどはどうなのだろう、そんな問いが学校を選んだ時点や職業に就いたあとにも、飲み会の席とかではないことでまじめにやりとりがされるのだろうか。
 自分自身が福祉の世界といわれるところに身をおいているからか、「福祉」についてはとてもとても多く、そのやりとりをきいてきた。

「なぜあなたは福祉の仕事をしようと思ったのですか?」
私が10代の後半に自分の将来の方向性を考え、話をしはじめたときの反応は【稀な者】。
 そして、周りにしてもなんらかの自己経験、つまりは自分自身が福祉対象者であったり、自分の周りにいる者が福祉対象者であったりが圧倒的に多かった。
 1990年代の半ばくらいになり、自分が福祉や介護の学校で教鞭をとるようになったとき、第一回の講義のはじめのアンケートにはかならずこの問いを設定していた。
「なぜあなたは福祉の仕事をしようと思ったのですか?」
多くの答えは、
「今後高齢化社会になるから.これからの仕事だとおもって」
「自分の親や親戚、知り合いなどが、介護の仕事をしていて」
と、いう回答が劇的に増えた時期だった。
 変わったなぁ。とそのときにおもっていたが、その流れはそれほど長くは続かなかった。そのうち、回答は従前の自己経験との拮抗になった。
 それにしてもなぜ、福祉関係の仕事・職業を中心にこういうやりとりがおこるのだろうか。もちろん、10代の後半に自分の進路を考えるときに、なぜその職業につこうとおもうのか、その進路を選ぼうと思うのか、という問いはそれほど特別なものではない。しかし、看護師や福祉職にまつわる問いには一定の社会的バイアスがかかっている気がしなくもない。
それは【稀なる者】というラベリングとともに、収入が高くない職業選択であるという背景もあるのだろうか。確かにそんな気もする。
 自己経験からこの職業を選ぶのは実はいくつか難しいことを抱えることにもなる。職業倫理的にも、どうしても支援者が「上」にたててしまう中で、その優越性をもっている方も少なくないし、自己覚知していないと危険である。また、共感性が強すぎて自分がつぶれてしまうこともあるし。
 なかなかこの問いにまつわることは悩ましい。

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