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東野圭吾『透明な螺旋』|ガリレオシリーズ第10弾|裏切られる予想と湯川先生の秘密

久しぶりに東野圭吾を読みました。
ガリレオシリーズ10作品目、文庫最新刊(東野圭吾の新刊はしょっちゅう出てますけど)『透明な螺旋』。

私が初めて読んだガリレオシリーズは『予知夢』(2000)です。
なんだか不思議な話だなと思いつつ、当時はそこまで湯川先生にハマらなかったんですけど、『容疑者Xの献身』が販売された時に「あの『秘密』を超える感動」という煽り文句に釣られ(『秘密』めちゃくちゃ好きです)、普段買わない単行本を珍しく買いました。
『容疑者Xの献身』は、『秘密』でも受賞できなかった直木賞を見事に受賞。ガリレオシリーズの知名度も一気に上げました。


そして何と言っても、福山雅治主演でドラマ化された『ガリレオ』。


私の中では地味な印象だったガリレオシリーズが、印象
的な音楽とスケールのでかい実験、超絶イケメンの福山と柴咲コウ演じる内海薫のコンビにより、めちゃくちゃポップに。
ドラマ『ガリレオ』を見たが最後、もう福山雅治を知らなかった頃には戻れません。


ガリレオやってる福山ってめちゃくちゃかっこよくないですか?
もちろんガリレオじゃなくてもかっこいいんですけど、ガリレオやってる福山は異常。ファンでもなんでもなかったんですけど、ガリレオやってる福山がかっこよすぎて、シリーズ一作目何度も見返しました。

頭がいい。
顔もいい。
背も高い。
声もいい。
女の影もない。


福山の湯川先生、最高。



というこで、読みながら映画でも見ているように福山の湯川先生がはっきりと見えた文庫最新刊『透明な螺旋』のあらすじはこちら。

南房総沖に、男の銃殺死体が浮かんだ。同時に、男の行方不明者届を出していた同居人の女が行方をくらませた。捜査にあたった草薙と内海薫はその過程で、思いがけず湯川学の名前に行きつく。草薙はすぐさま湯川の元を訪れたが、彼はそこ、横須賀のマンションで意外な生活を送っていた――。

公式サイトより

今、明かされる「ガリレオの真実」。

ガリレオシリーズ最大の秘密が明かされる。


というコピーの通り、『透明な螺旋』では湯川先生の秘密が明らかになります。


※ここから先はネタバレ含みますので、読破した方だけ読んでください!
東野圭吾は読みやすいので、普段本をあまり読まない方でもさらーっと読めてしまうと思います。



シリーズ第1作『探偵ガリレオ』の単行本が1998年に刊行されてから、第10作『透明な螺旋』の単行本が2021年に刊行されるまでおよそ23年。
ええ、まだこんなの隠し持ってたんですね、という感じです。


これだけ長い間続くガリレオシリーズの中で、私たちは湯川学という男についてまだ何も知らなかったんだと気付かされ、まだまだこの人のことを知りたいと思う。
小説もドラマも映画もヒットして私たちはこんなにも長く湯川先生のことを知っているのに、湯川先生にはまだ誰も触れることができない領域があると感じる。


それってめちゃくちゃ凄くないですか?
そろそろ少しマンネリしてもいい頃合いなのに、まだ新しい湯川先生を見せてくれるんです。
これからもっと見せてくれる予感さえするんです。
さすが東野圭吾。
さすが平均100万部の男。


これはこういうことかな?と思って読んでいると見事に予想は裏切られ、しかも、そこにはいつも、より悲しい真実が明らかになることが多いガリレオシリーズの長編作品。
『透明な螺旋』も、こちらが想像していた結末より遥かに悲しくて、遥かに残酷です。

本当に本当にそれでよかったの?
と泣きたいような気持ちで、彼女に聞きたい。
頑張って頑張って生きてきて、最後の最後に刑務所なんて、あんまりじゃないか?

子供だったらわかる。孫だったらわかる。血族だったらわかる。
逆にもう、そうだったらどんなによかっただろうとさえ思ってしまう。


わかりたくないのになんとなくわかってしまうこと、それでも気づかないふりをしたいこと、目を逸らしたいこと、可能性が1%しかなくても思い込むこと、信じたいこと、全てが嘘かも知れなくても全てをかけて守りたいと思うこと。

人を殺したことは間違っていても、その相手を思って行動した彼女の強さには圧倒されます。

しかも、殺された相手が本当にクソ野郎なので余計に彼女を庇いたくなりますよね。
わかってます、人の命に違いはないです。どんな人にも親がいて友達がいます。殺しちゃだめです。
でも本当にクソなんですよね。
東野圭吾はそういうクソ野郎を書くのも上手い気がします。
読んでるこっちが
「お前何腐ったこと言ってんだ!弁護士呼ぶぞ!全部ネットに晒すぞ!!!!」
と喧嘩売りたくなるほどのクソ野郎。


あんな聡明そうな人が、他の方法を選べないほど、彼女を救いたかった。そしてそれよりもっと、決して真実を知りたくなかった。
きっと今も、凛とした顔で自分を奮い立たせ、彼女を守ったとこに後悔はないと心の中で何度も唱えながら、真実が明かされないか怯えているかも知れないと思うと胸が痛い。


思うんですけど、もう血族ってことでいいんじゃないでしょうか。もう血族ってことにしようよ。微かに残った0.001%の可能性を2人で事実にしちゃえばいいよ。
たくさん会いに行ってさ、不安は全部胸の中に押し込んで、楽しく2人で話したらいいと思う。
お母さんの話、仕事の話、最近読んだ本や最近見た映画の話、幸せだなと思ったことはどんな小さいことでも話してあげて。
それで、2人の過ごしす時間の中で、可能性が0.002%くらいにあがったような気がしたら、それでもう彼女は幸せな最期を送れると思う。そんな最期を送って欲しい。


ところで、登場人物の設定や年齢が変わらないシリーズものも多い中、湯川先生はちゃんと歳を重ねています。当初はまだ30台前半だった湯川先生も、『沈黙のパレード』では40歳過ぎ、今回の『透明な螺旋』では髪に白髪が混ざっています。
実写化で湯川先生を演じる福山も歳を取るので、そういう意味でも俳優が歳を重ねることが不自然にならなくていいです。
東野圭吾も湯川先生を描写する際に、ドラマから入ったファンを戸惑わせない絶妙な書き方をしてくれていますよね。要は、頭の中で福山をイメージしても、何も違和感のない描き方なのです。それがとても嬉しい。
私なんて本から入ったはずなのに、今やもう湯川先生は完全に福山の姿で存在してます。


ああ、まだまだ湯川先生のことが知りたい。
湯川先生、どうか、ゆっくりゆっくり歳をとりつつ、たくさんの事件を解決していってください。


おしまい。


これです!この福山がそれはもうヨダレものでかっこいいです!!!



『透明な螺旋』巻末に収録されている短編もけっこう好きでした!
そして今はこれ↓を考えてます。うむ。


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