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映画『夏へのトンネル、さよならの出口』 | 友情だと思ったら恋だった

ジャズのアニメーション映画『BLUE GIANT』がとんでもなく良かったので、

もしかしたら私が知らない面白いアニメーション映画がまだまだあるんじゃないかという気持ちにさせられ、こちらの映画『夏へのトンネル、さよならの出口』も見てみました。


あらすじはこちら↓

とある田舎町で噂されている「ウラシマトンネル」。その不思議なトンネルに入ると、あるものを失う代わりに欲しいものが何でも手に入るのだという。掴みどころがない性格に見えて過去の事故が心の傷となっている高校生・塔野カオルは、芯の通った態度の裏で自身の理想像との違いに苦悩する転校生・花城あんずと、トンネルを調査してそれぞれの願いをかなえるため協力関係を結ぶ。


原作は、第13回小学館ライトノベル大賞(2019)でガガガ賞と審査員特別賞をダブル受賞した八目迷の小説『夏へのトンネル、さよならの出口』。
ガガガ賞(ガガガってなんか勢いありますね)と審査員特別賞をダブル受賞した上に、デビュー作で映画化までされるなんてすごいですね。


原作未読のため、映画のみの感想です。
※一部結末に触れていますので、観ようかな〜と思っている方はご覧になってから読んでいただければと思います!



物語のキーはもちろん「ウラシマトンネル」。
このトンネルを受け入れられるかどうかで印象は全く変わると思います。

ウラシマトンネル。
まず名前が強烈。
名前のインパクトに挫けそうになりましたけど、受賞時のタイトルは『僕がウラシマトンネルを抜ける時』だったということで、この「ウラシマトンネル」という名前に作者はとてもこだわりがあったんだろうと思って踏みとどまりました。


このトンネルの力がすごいんです。
中に入ることによって年を取る代わりに欲しいものが手に入るという都市伝説があるトンネルで、しかもこの都市伝説はほぼほぼ合っています。
トンネルの中と外では時間の流れが異なっていて、トンネルの中での1秒は現実世界では3時間というとんでもないトンネルです。

で、どうしても気になったのは、ここまで正確な内容の噂があるにも関わらず、何でウラシマトンネルがただの都市伝説で片付けられてるかってことです。


例えば、たまたま見つけてトンネルに入れたけど、もう一度行こうとした時はもうない(場所が変わっている)とかならわかります。トンネルを見つけた人がいくらトンネルのことを周囲に話してもそのトンネルの場所がわからないんだから都市伝説になりそう。

でも主人公たちは何度も何度もこのトンネルを調査するんですよ。つまり、場所がわかった人は何回でもそこに行けるわけです。


じゃあ絶対めちゃくちゃ話題になるでしょ。



都市伝説どころの騒ぎじゃないですよ。
いつもそこにあるわけですから、マスコミも取材し放題。大学教授も日本政府も研究し放題。世界中から人が押し寄せて、あの田舎町は大パニック。欲しいものを手に入れようと半狂乱になる人続出。トンネルに入って帰って来れない人続出。

トトロみたいに、ある年齢のある環境、境遇、精神状態の人にしか見えない、たどり着けないということなら何となく納得できますけど、大人になった彼女も普通にトンネルに入って来れてたし、場所さえわかれば誰でも何度でも行けそう。
なのに都市伝説扱い。

……何故。


「ウラシマトンネル」についても、科学的説明とか論理的説明とかじゃなくていいんで、この場所では昔こういうことがあって〜とか、こういう伝説があって〜とか、こういうことがあって時空が歪んだんじゃないだろうか〜とか、もう何でもいいから何か説明がほしかったところです。
あまりに不思議な現象が起きるトンネルなので、やっぱり何かしらそれがある理由が個人的には気になりました。


そしてですね、この映画を見て自分自身のことで気づいたことが1つあります。


もしかしたら、私もう、恋愛要素はあんまりいらないのかもしれません。


ラブストーリーならいいんですよ?もちろんラブが主題なので。
でもそれ以外をメインに置いてるもので恋愛要素が絡んでくるとその部分を余計に感じている自分がいます。なんでしょう、歳でしょうか?


昔は逆に何でもかんでも恋愛入れて欲しかったんですよ!なのに今はそれが不要ってどういうこと?と自分で思います。


『弱虫ペダル』で山岳の幼馴染の女の子が出てくると「ラブ入れて来ないでよ?この話にラブ入れなくていいからね!」と思いますし、『名探偵コナン』で新一と蘭がイチャイチャしてるの見ると、数年前まできゃーきゃーしてたのに心がスンっとなっている自分がいます。


『夏へのトンネル、さよならの出口』も途中まで2人は友達だと信じてました。
周囲が2人を「付き合ってるの?」などとからかっても、それは逆に2人がそういう関係ではなく、同志として強い友情で結ばれてるからこそのからかいの描写なんだと信じていました。

個人的にはカオルとあんずの抱えているもの(カオルは重すぎるけど、あんずはただの思春期)、トンネルに求めるものが違いすぎて、あんずには「……お前はウラシマトンネル研究する前にできること沢山あるだろ!」となりましたけど、それでも2人は互いを同志だと感じているんだろうなと思ってました。

付き合ってると囃し立てる周囲の子たちに、
「すぐそうやって恋愛と結びつけて子供だねぇ。カオルとあんずはそういうんじゃないんだよ。なんて言うの?同じ目的のための同志?他の奴にはわからない深い結びつきがあるけど、だからって恋愛じゃない。恋とか愛とかじゃない繋がりがこの世にはあるんだよ」
と思ってました。

そしたらですね。



がっちり恋でした。

あ、恋だったの?



全てを投げ出してトンネルの奥で出会えた妹に別れを告げ、現実に戻る活力になるほどの。
普通なら届かない電波が届く奇跡が起こるほどの。
8年経っても忘れられないほどの。
あんなに求めた仕事を投げ出すことになっても彼を迎えにいけるほどの。

で、映画見た後によくよくサイトを見たらですね、ひまわり持ってる2人の手が若干重なってました。(っていうかもはや手繋いでる?)

そりゃあ恋だよ!!!
絶対恋だよ!!!
高校生の少年と少女が出会ったら恋だよ!!!


友情とか言い張ってた奴誰だよ?
どう考えても恋じゃねーか!

ごめんなさい。友情の物語だと思っていたら完全にボーイミーツガールの物語でした。


ラストは何と、ウラシマトンネルのせいでカオルとあんずは8歳差に!
そして迎えに来たあんずも外の世界とは5年ズレました。
カオルに至っては13年もズレてます。


……ってことはさ、カオルはまだ17歳くらいですけど、現実世界では30歳ってこと?!
え、いろいろ大丈夫?!
カオル、見た目が変わって無さすぎて本人と分かってもらえるのか心配。
そんで、あんずも5年ズレたの?!仕事は?!
周りからしたら失踪みたいなものだよね。またスルッと漫画家に戻れるの?

私の焦りをよそに、2人はキスして幸せそうでした。エンディングでキス。ハリウッド映画的ラスト。

恋っていいですよね。


心も体も高校生だけど、30歳のカオルと、
心も体も25歳だけど、30歳のあんず。


いろいろ大変そうだけど、
幸せになるのだ、若者たち!!!


おしまい。


復習。
心に傷を抱えた男子高校生と、東京から転校してきた容姿端麗な女子高生が出会ったら間違いなく恋です。


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