見出し画像

雛鳥プロジェクト体験談⑤ 永井 達也さん

雛鳥プロジェクト体験談 
永井 達也(東京都立大学 3年)
参加地域 鳥取市用瀬町

〇プロジェクトに参加した理由


私がこのプロジェクトを知った時、“鳥取って行ったことないよな…、どんななんだろ”といった感想を持ちました。大阪などの関西エリアの人からすると多少は身近なのかもしれませんが、東京といった関東やその他のエリアの人からすると鳥取に行ったことがある人は他地域と比較すると少ないのではないかな、と思います。私は旅行に行くのが大好きで、日本全国色々なところに行っていますが、鳥取や島根といった山陰エリアには行ったことがありませんでした。そこでこのプロジェクトを利用してぜひ鳥取に行ってみたいと思いました。
鳥取が注目されにくい理由としては、“鳥取といえば○○”が少ないのがあるのではないでしょうか。自分は日本全国色々なところに行っていますが、最初は鳥取というと砂丘しか思い浮かびませんでした。実際問題観光名所といえる場所は少ないかもしれませんが、どの地域にも魅力は必ずあります。田舎で何もないようなところでも、そこに都会の人がいけば“時間がゆっくり流れているな”とか“川の水がきれいで川底まではっきり見える!”などといった多様な感想が上がります。これは現地に住んでいる人からすると当たり前すぎて魅力とは感じないかもしれません。
コロナからの回復期、日本の観光業界では新しい形の観光が注目を浴びました。エコツーリズムやワーケーション、フードツーリズムなどと様々ありますが、ここで注目したいのは“ずらし旅”です。ここでいう“ずらし”の捉え方は1つではありません。例えば平日に旅行に行くことや混雑する時間帯を避けて移動すること、そして有名ではないマイナーな観光地に行くことなどが挙げられます。コロナの前からオーバーツーリズムは有名観光地の各地で起こっていました。誰々が行っていて楽しそうだったから行ってみよう、とかこの時期行くべき観光地といえば紅葉がきれいな○○しかない、といった固定観念が観光にはあります。しかし、これでは注目されていない観光地や地域はますます廃れてしまいます。コロナをきっかけにこうした場所に観光に行くことが流行りだしました。普段、基本的に有名観光地しか行かない身としては、今回の鳥取訪問はこうしたずらし旅のような感覚でした。

〇鳥取で参加したプログラム


私は鳥取市用瀬地域のプログラムに参加しました。最初はのりさんという現地の方のコーディネートのもと街歩きから始まり、薪割りやわらしべ長者体験をさせて頂きました。用瀬はかつて宿場町で、いたるところにかつての生活感が感じられました。用瀬駅は自分がかつて購読していた“週刊 鉄道模型 少年時代”にあった駅舎のジオラマにそっくりで懐かしい雰囲気でした。また、薪割りは振り返ってみると今回が初めてで、想像以上に難しいものでした…。薪割りに慣れている人は難なくきれいに割りますが、まず斧を薪の狙ったポイントに振り落とすのが大変です。そして薪は硬いので、斧が狙ったポイントに当たってもなかなか割れません。
 次に、メインのわらしべ長者体験についてです。わらしべ長者とは、もともとはわらしべ1本から次々に物々交換をして最終的にすごいものになった!というものです。今回は持参した個包装のお菓子を最初のわらしべとし、交換していく中で得られたものや最初にわらしべとしたお菓子を織り交ぜながら次々に交換をさせてもらいました。これを都会でやろうとしたらかなり無理がありますよね。まず近所であっても顔を合わせたことがない人も多く、道ですれ違っても素通り、といったことも普通です。もちろんこれを鳥取の初訪問の地域でやるのは都会以上に抵抗があることでした。見ず知らずの人間が突然“これと何か交換してください”と言ってきても普通は困ります。しかし、実際用瀬でわらしべ長者体験をして、どの方も快く応じてくださりました。この取り組みを事前に知っていてくださった方は交換するものを用意してくださっていたり、そうでない方も何かに交換したいと必死になってくださったりと、人の温かさを存分に味合わせてもらいました。結果として写真のようになりました。これが最初はお菓子から始まったと思うと凄いですよね!

 また、プログラムの2日目は、初日に街歩きをコーディネートしてくださったのりさんのお宅にある囲炉裏を囲んで芋煮やカニ鍋をごちそうになったり、3日目は週末住人さんが主催で月1回のペースで行われている“なべ部”に参加させていただきました。囲炉裏を実際に目にしたのは恐らく今回が初でした。天井から鍋を吊るして、3時間くらい煮込んだ芋煮は絶品で、鳥取ならではのカニ鍋も最高でした。囲炉裏のそばには日本酒の一升瓶がたくさんあって、いろいろ飲ませてもらいました。日本酒というとツーンとして飲みにくい印象があったのですが、飲ませてもらった鳥取の地酒はどれも飲みやすかったです。そして、3日目の夜のなべ部では同世代の若者が大勢集まりました。鳥取の田舎にこんなに若者が集まることってある??と思ってしまったくらいでした。


      

〇鳥取での活動を通じての印象


プラスの印象とマイナスの印象の2つあります。プラスの印象は、何といっても自然豊かで、住宅のすぐそばを流れる瀬戸川のせせらぎが心地よかったことです。写真を見てもらえればその良さはわかってもらえると思いますが、特に気動車(汽車?)とのコンビや夜のライトアップされた景色は最高でした!また、夜の星空もきれいでした。きれいな星空は田舎の特権ですよね!


            
マイナスの印象は、かつては宿場町として栄えた用瀬の寂しさです。わらしべ長者体験のなかで用瀬の多くの方々と会話をし、口を揃えて仰っていたのが“昔は良かった”とか“昔は栄えていた”といったことでした。日本全国各地でまちの衰退化は見られますが、できるだけ少なくしたいものです。用瀬では毎年春に流し雛が行われ、聞いた話では6000人ほどの来場者が訪れるとのことでしたが、これだけの人たちが訪れるということは十分な魅力・価値があることだと思います。個人的には年1回ではなく年間を通して用瀬を訪れてもらうようなきっかけが必要だと感じました。プロジェクトの成果発表会では、大学の講義で知った水辺空間を生かしたまちづくりを提案させて頂きましたが、話を聞いてくださっていた用瀬の方が“前に瀬戸川沿いで机を出してお酒を飲んでいた”というお話をしてくださり、是非このような取り組みができないかなと思いました。流し雛が行われる千代川も非常にきれいで流域面積も大きかったので、流し雛に限らず何かしらの取り組みができると感じました。

〇プロジェクトに参加してみての地域イメージ


 普段観光に行くときもそうですが、あまり下調べをせずに鳥取に行きました。観光は初めて知ることや見るもの、新たな発見にこそ価値があると思うからです。今回はプロジェクトということもあり、軽くネットやガイドマップで調べはしましたが、鳥取の中心街ではない地域ということでそもそも事前に知ることができる情報が少なかったので、前提知識ほぼ0でお邪魔したことになります…。観光地に行って“もう行きたくない”という感想を持って帰ってきた経験はないので比較はできませんが、今回訪問させていただいた用瀬地域も是非再訪したいと思いました。また、今回は鳥取の一地域のみの訪問だったので、他の地域にも行ってみたいという思いもあります。今回の訪問で大きかったのは、現地の人たちと交流させていただいたことに尽きる気がします。普段の観光では観光“客”として、よそ者として行くわけですが、今回は知り合いのように、家族のように接していただき、より地域に密に関わることができました。個人で地域を訪問してここまで現地の方々と交流することは無理なので、今回のプロジェクトは本当にいい経験でした。

〇最後に


 今回、このプロジェクトに参加できて本当に良かったです。私は観光に限らず地域創生にも興味があり、以前にはワーキングホリデーで岩手県の八幡平に行ったことがあります。鳥取とも関連することとして、八幡平も関係人口をいかに確保していくかが課題となっていました。普段は都会にいて移住は難しくても、定期的に訪れてほしいというのが地方の想いだと思います。八幡平は東京から新幹線で盛岡まで行き、そこから乗り換えなしのバスで行くことができ、鳥取も東京から飛行機の直行便が出ていて、行こうと思えば気軽に(というと言い過ぎかもしれませんが…)行くことができます。なぜそれでも来訪者が少ないかを考えると、やはり“きっかけ”がないことが大きな理由だと思います。これは日常生活全般に言えることですが、何かをやるにはきっかけが必要です。私が今回鳥取を初めて訪れることができたのもプロジェクトの存在を知って、参加できたおかげです。このプロジェクトをきっかけに、全国各地でこのような取り組みが行われて都会の人の目が地方に向くようになれば、地方の衰退化を止めることにも繋がるのではないでしょうか。また、多くの若者がもっと地方に足を踏み入れていくべきなの2ではないでしょうか。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?