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岡崎京子『私は貴兄のオモチャなの』によせて

帯にあるコピー「愛と暴力」そのものだ、この本は。初めて読んだときは、その惨さと狂気にちょっと引いてしまったけれど、次第に、その「惨さ」や「狂気」の延長線上に自分もいるのだと気がつく。

空知くんほどじゃなくても、自分を好きと言ってくれる人をときにぞんざいに扱ってしまう残酷さや、みかちゃんほどじゃなくても、自分を傷つける人ほど好きになって追いかけてしまったりする愚かさを、わたしは持っている。

そしてそんな1人1人が、漫画の中で救われるわけでは決してないのだけれど、それを読んでいるわたしはなぜだか自分を許せるようになる気がする。許せるというと、ちょっと言いすぎだろうか。

ある種、自分のもつ汚いところや愚かだけど憎めないところが、普遍的なもの、人間らしいものとして作品の中で描かれていることによって、自分の性質を客観的に受け止められるのかもしれない。

なんて、そんな小難しいことを考えなくても、この作品は魅力的だし、岡崎京子は疑いもなく天才です。

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