地域ブランディングにみる小さなチャレンジの大切さ
『クラフトツーリズムが拓く新しい産地コミュニティ|新山直広|ネイバーフッドアリマツ』がとても面白かったのでノートにまとめます。
TSUGI llc.は福井県鯖江市を拠点に地域産業のブランディングを行うデザイン事務所です。
鯖江市はメガネや漆器、刃物など、ものづくりが古くから盛んな街で、高い技術を持った職人さんがたくさんいます。
その一方で労働人口の減少や後継者問題などの課題があり、
その背景に下請け仕事中心の産業構造や鯖江=安物のイメージがあったそうです。
TSUGIの代表である新山さんは「ものづくりを目指す若者が一番憧れる町にする」という目標のもと、時代の変化と向きあった鯖江のものづくりを提案したり、作り手の熱量を消費者へ伝える仕組み作りをされています。
TSUGI.Inkの取り組み
具体的な取り組みとしては、
鯖江のものづくりのアウターブランディングと直接消費者に届ける流通網づくりをされています。
アウターブランディングとしては、
職人さんとのコラボ商品作りだけでなく、鯖江を中心にデザインを行う「インタウンデザイナー」を増やすために、美大生向けイベントや就活生とのマッチングイベントを行ったり、
「TOURISTORE(ツーリストア)」という複合施設の立ち上げや、鯖江の職人さんの仕事見学をとおして、ものづくりの現場を体感できるイベント「ReNEW」の企画運営など、鯖江に来てもらうためにソフト・ハード両面で様々な活動をされています。
TSUGIさんの取り組みで面白いのがデザイン会社にも関わらず、流通網づくりもされているところです。
様々な職人さんに商品デザインの提案にいくと「それで結局売れるのか?」とよく聞かれたことがきっかけだったらしく、
それなら、どうやって売るか、自分たちで流通網まで作ってみようとECサイトを立ち上げ、生産計画から在庫管理といった部分も自らやり始めたところがすごいところです。
↓↓眼鏡フレームの形成技術を活かしたアクセサリーブランドSUR
ものづくりの背景を話したくなって、プレゼントにすごくいいですね。
体験型イベントRENEWについて
鯖江市の作り手の人たちのことを知ってもらうために、最初は大きな場所での展示会などにも参加されていたそうです。
けれど、展示会は東京なら1回130万くらいかかるのに、実際名刺交換をしてその後も交流がある人は数えるほど。コストの割に大した出会いが生まれないという実感を感じ、
「たくさんの人たちに鯖江の熱量を伝えるには、鯖江に来てもらうしかない」と体験型イベントRENEWを企画されました。
実施までのプロセス
RENEWは企業や鯖江市という枠を超え、様々な組織とコラボレーションする大きなイベントです。
それだけ多くの人を巻き込むイベントにどうやって成長できたか、そのプロセスに私自身強い関心がありました。
お話を聞いて感じたのは、一緒に挑戦できる仲間を増やすために、小さく初めて「実績という見える結果」をつくることがキーだと感じます。
昔から続けてきた職人さんの仕事にデザインをミックスするときには、ECサイトと流通の運用を実際にやってみて、「売れる」という結果を作ることで、職人さんを前向きな気持ちにする。
その後、勉強会という定期的に集まる場を作ることで、仲間を増やすと同時に多数の人に向けて提案できる環境を作る。
RENEW自体も最初は1人2万円の出資と小さな投資から始めることで「失敗したっていいやん」という雰囲気を作り、やってみた結果を体感してもらう。
初回のRENEWはフライヤーのデザインを作り、レンタサイクルも地域の自転車を借りたりと、本当にお金をかけずに実施したそうですが、結果1200人が来場し、うち4割が県外から来た人だったそうです。
その手応えを体感することで前向きな人が増えていく。
前向きな人が集まれる場を作りチームでの温度感を持続する。
そしてさらにチャレンジする。
そうした循環がうまくまわった結果、今のような規模のイベントに成長したのだと感じました。
チャレンジを生むための循環
新山さんの話を聞いてて感じたことは、自分たちでできることをまずはやってみて、実績を積み重ねることの大切さです。
現在の結果だけみると、「こんな大きなことやるの自分では無理」と尻込みしてしまいますが、その過程を聞くと一つ一つ実績を積み上げた結果、賛同する人が増えて成長してきたことがよくわかりました。
協力者が増えない理由は、自分の企画が周りに評価されないことより、結果が見えないことによる恐怖の方が大きいのかもしれません。
だからできる範囲で実績をつくり、作業の流れや結果が具体的になれば、それが周りへの安心感につながり、協力者が増える。協力者が離れていかないように維持するための機会を作る。
ホームランでなくヒットを繰り返すことを自分も意識してやっていきたいと思いました。