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解通易堂
2022年7月30日 16:23
第四話 外伝『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙◆ 夏休みが残り僅かとなった、17歳の誕生日の日。柚子の曾祖母が静かに息を引き取った。喪中に手渡された白い封筒から、一度しか会ったことのない曾祖母からの手紙と、誰も知らない名前が焼き刻まれた櫛が入っていた。(もしかして、これ……おばあちゃんの事を好きだった本郷さんが、何かのきっかけで渡した物なんじゃないの⁉) 櫛の本当の持ち主
2021年12月14日 22:14
第四話『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙◆第五章◆ 一つの櫛を巡った、柚子の長くて短い旅が終わろうとしていた。 配達トラックの助手席で揺られながら、タクシーで来た道を戻っていく。(ここの道のりもあと一往復くらいで終わっちゃうのか。そう思うと、なんか寂しい気がする) 柚子が風景写真を何枚か撮影していると、スマホが充電を促してきた。お知らせ欄の表示を慌ててスワイプして、節電の
2021年10月31日 17:29
第四話『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙◆第四章◆ 翌日、時計の針が昼を過ぎる頃合いで叔母夫婦の家を出た柚子は、再びミスタに連れられて解通易堂に向かった。 昼間の解通易堂は外から見ると異国情緒に溢れており、思わずスマホのカメラアプリを起動させる。「柚子様……いらっしゃいませ」「っ‼」 シャッターを切った瞬間、開けっ放しだった扉から泉が現れた。柚子は慌ててスマホを逸らし、
2021年10月1日 10:59
第四話『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙◆第三章◆ 翌日、両親を見送った柚子は、叔母夫婦に一言声をかけてから、本格的に『本郷 秀一』の捜索を始めた。 柚子は髪をひとまとめに結んで気合を入れると、開店前の櫛屋に向かって歩き出す。しかし、その途中の建物の前で、ご老人が何人か集まっているのが見えた。(こんな早くから行列? なんの集まりだろう?) 視線だけ列の先頭を探そうとして、
2021年9月14日 18:00
第四話『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙◆第二章◆ 仮通夜、本通夜こそ慌ただしかった曾祖母の葬儀だったが、以降は順調すぎる程、何事もなく過ぎていった。葬式が終わってからも人の足は途絶えることなく、老若男女問わず曾祖母の仏壇に手を合わせに来る。毎朝仏間を綺麗にする手伝いと、訪問してくる人々のお茶出しの手伝いが柚子の役目になっているため、手伝いに乗じて気の良さそうな人から順に声をか
2021年8月30日 08:57
第四話『約束の櫛 恋の行方』原案:解通易堂著:紫煙――櫛は、傷んでしまったり、折れてしまったりしない限りは、長く、長くご利用いただけるお品物でございます。吉原の遊郭では、真に想いを寄せている殿方に、遊女が櫛や簪などを贈って「いつまでも貴方をお慕い申し上げます」と言う言葉の代わりにしていたとか、していないとか……。では……贈られた櫛は、その後、どうなったのでしょうか……?◆第一章◆