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不登校先生(33)

ぼんやりしていても、落ち込んでいても時間は止まってくれない。

ひきこもりのような生活に辛うじて、一人暮らしの状況が、

数日に一度の食料と日用品を買いに、近所のスーパーに足を運ばせる。

だがそれだけだ。あとはずっと、何をするわけでもなく、

ぼんやりとしている。

相変わらずお風呂に入るのも3.4日に一度、

熱い時期には激弱の太ったおじさんなのに。

髪も3月末から一度も切っていない。こんなに伸びたのは人生で初めてだ。

時折やってくるとんでもなく落ち込んだ気分や、

眠れなくて、眠りが短くて、がっかりとした気分になる時間が多いまま

季節は夏の装いに。6月になった。

6月、水無月、梅雨の頃。かれこれ20数年住んでいるこの地方は、

空梅雨、短い梅雨、集中豪雨。

そんな気候が特徴だ。梅雨前線が通過する頃は、

夏の気団にぐいぐい押し上げられていくときで、

ざぁっと振って、ぱっと終わる。

そんな季節の変わり目に、もう一つ自分には節目がある。

誕生月。6月で一つ年を取る。

今年の誕生日は、いつもの誕生日とは勝手が違って、

周りへの感謝を思い返す心の余裕もなく、

自分がこの一年も頑張ろうという、前向きさもなく、

ただただ迫ったその日は、

3度目の病休申請のための診断書をもらう

週に一度の診察の日となった。

肩を落として、髪も伸ばして、

最近はもうたっているだけで汗がにじみ出る季節なので、

病院に出掛ける前にシャワーだけは浴びるものの、

ひげは伸ばしっぱなしでマスクでかくして、

こんな誕生日になるって思ってもみなかったなと、

まだ、雨の降る気配のない、夏のような空気の中、

まだ何にも震えない心を、ただただ守り治すために、

川沿いの道を、一人、歩く。

一つ齢をとった今日からに、希望が全く見えないのは、

これで、2度目、、、、3度目か。

だとしたら、見えないだけで、だいぶ先ではあるけれど、

おそらく希望はあるはずだ。

これまでの様に気付いたら、見えてくるに違いない。

ただ、この時の僕には、そんな前向きな気持ちは、

川面に揺蕩う日差しのように、わずかに光ってもすぐに、

心の闇に沈んでいくばかりだった。

足取りがいつになく重い。

↓次話



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