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不登校先生 (20)

薬の効果は絶大で、でも一時だけのものだった。

処方された日、正直もう病院に向った時から、

すごく眠いのに眠れない。

朝まで起きていたのかねていたのかわからない。

そんな状態だったので、

家に帰りつくや否や、台所で、処方された薬を飲んだ。

喉は大きい方だが、それでも割らないと飲めない位の大きさで。

ガリッ、ガリッ。と口の中で3かけらに割ると、

一気に飲み込む。

薬特有の苦みなどはない。

ふらつきながら、布団に倒れこむと、そのまま眠ってしまった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・

気が付くと、時計は18時を回っていた。

家に帰ってきたのが11時だったので、

7時間。

布団の中で眠っていた。

これはヤバいと自覚してから2週間ほど

眠れた感覚を全然持てなかったけれど。

久しぶりに、眠った感を実感できた。

睡眠導入剤で、こんなに効くものなのか。

薬の効き目に恐ろしさも感じた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

その日から眠る前に処走された薬を飲むようにした。

成程、今から眠ろうと思うきっかけにもなる。

薬を服用する=自分で「眠るよ」というスイッチをONにする

そうすることで、布団に入るときには、眠る気持ちを作ろうと

自分の意識を自分で暗転させていく感覚を作っていくのである。

裏を返せば、病む前は無意識にできていた感覚、

それらも完全に壊れてしまったことが自覚できて、

そういう意味では悲しい気持ちにもなった。

当たり前に心と体がつながっていて、意識せずとも出来ていたことが

今は、やろうと意識して、薬による促しによってしかできなくなった。

なんか、本当に、ダメになっちゃったなぁというような自己否定の拡がりが

どうしようもなく、自分の状態を惨めに感じさせる。

でもそれも回復だ。先週までは自分の状態を、情けないなぁ、惨めだなぁ。

と思うことすらなかったのだから。ただぼんやりと抜け殻のように、

かろうじて設定された三日に一度のゴミ出しのタイマーだけが

心の中ではなり続け、それ以外には何も感じることもなく。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気持ち悪い。

しっかり眠れて寝汗をびっしょりかいていた。

首周りにまとわりつくうだるようなじめっと感に、

気持ち悪い。

そう感じた。僕は

その日、2週間ぶりにお風呂のお湯を貯めたのだった。

↓次話


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