#39 ホラー・ヴァキュイ
「ホラー・ヴァキュイ(horror vacui)」。この言葉はラテン語で「虚無に対する恐怖」を意味していて、日本語では「空間恐怖」とか、「空間畏怖」と言われている言葉です。
古くは古代ギリシャ時代からあった言葉で、現在では特にアートやデザインの世界で空白を残さない様式を表す用語となっています。無駄に大きな余白があると、何かの要素で埋めないと不安になってしまう…。皆さんにも身に覚えがないでしょうか。
しかしながら実際はこの「ホラー・ヴァキュイ」の傾向が強くなると知覚価値が低くなると言われています。どういうことかと言うと、高級ブランドショップと100円ショップのディスプレイを想像してみてください。高級ブランドショップがあまり商品を多く並べていないのとは対照的に、100円ショップはビッシリと商品が並んでいると思います。ユーザーが商品に対して抱く価値判断は、ホラー・ヴァキュイの度合いと反比例してしまうので、例えば高級バッグを隙間なくディスプレイしてしまうと、ユーザーには安物だと勘違いされてしまう恐れがあるということになります。
これを言い換えると、店頭ディスプレイや、チラシのデザインなどにおいて、安売りをアピールするときは商品をなるべく多く並べるようにし、逆に高付加価値の商品を売る時はゴチャゴチャと多く並べてはいけないということになります。スーパーのチラシや、ドンキホーテの商品の並べ方などが思い浮かびますね。
余談になりますが、この余白や空所があると、何らかの要素で埋めないと不安になるというのは特に漫画を描いたことがある人なら、誰もが抱いたことがある恐怖ではないでしょうか。実際私もあります。いくら絵を描きこんでも不安が収まらず、無駄に陰影を描いたり、トーンを貼ったりしてしまいがちです。しかし本当に面白い漫画であれば、その必要はないのかもしれませんね(何人かの漫画家先生を思い浮かべながら)。
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