見出し画像

よこはま~、たそがれ~ 四分の三

トップガンマーヴェリックの謎を解け‼#235~ウラニウム・ロゼッタストーン


これって、実は『トップガン・マーヴェリックの謎を解け‼』
シリーズ(番外編)なんですよ。

本編『トップガン・マーヴェリックの謎を解け‼』は#14までで、
一旦完結したのですが、その後も聖地加古川を起点に
桂川で上映があると聞けば京都へ飛び、
枚方で上映があるのを見つければ、大阪へはせ参じ。

そして流れ流れて有楽町から、みなとまち横浜へ。

映画を観るたび、自分の中では新発見があり、
その都度noteに綴ってきたのですが、
これが通算で26本目、思えば遠くへ来たものだ。

さすがに注目するポイントがだんだんと些細な物になり
普通に映画を観る分には『どっちでもいいんじゃない?』
と言われるであろうレベルになっています。

それでもいいんです。
もはや誰のためでもなく、自分自身のためだけのnoteへ、
レッツゴー!

First ヒント

前回の『よこはま~、たそがれ~四分の二』の経験で
やはりアメリカ映画、登場人物の機微な感情は、
オリジナルの英語でなければ
なかなか汲み取れないものだとわかりました。

とはいえ私が英語に精通しているわけでは全くないので、
英語を聞いて耳で受けた印象ではなく、
あくまで英文と日本語字幕、日本語吹き替えの文章としての違いを
分析して手掛かりを掴むという手法なのですが。

そんな事情で、英語に注意を傾けていた鑑賞29回目
ふと気になるフレーズがあったのです。
ホントに重箱の隅をつつくような自分でも嫌らしいと思う指摘!

マーベリックがノースアイランド基地へ出頭したときの
最初のウォーロックの説明に出てきた次の言葉です。

”NATO Treaty” 


なんかおかしい・・・

日本語ではNATO条約です。

NATOは”北太平洋条約機構”すなわち
North Atlantic Treaty Organizationなのです。

北大西洋条約に準拠して出来た組織なのでNATO

という事は、NATO各国が準拠べき条約は、
NATO条約:北大西洋条約機構条約
ではなく、
NAT:北大西洋条約 でいいんじゃないの?

”条約”の二重化です。

でも考えればこういうのはよくある事。

例えば、排気ガス
排気は英語でExhaust gas、この後に更にガスを付けるとは
Exhaust gas Gasと言っているようなもの。

あとちょっとマニアックですが、ECCN番号。
これは『科学と政治と戦争と平和』で書いた
安全保障輸出管理の実務能力認定試験で出てきたものです。

アメリカ合衆国が輸出規制をするための管理番号ですが
ECCNとはExport Control Classification Number、これに”番号”を付けると
Numberの二重化になるのです。

しかし、”ECCN”で一つの用語だから、
ECC番号というとやっぱり語感としておかしい。
とはいえ”ECCN”だけだと、なんだろう?と思う人がいるので
あえて”番号”を重ねて言うわけです。

これは英語日本語混ざったために起きる事かと思っていましたが
英語だけでも起こるとはね。と注目

さらに関心をこのセリフの前後の流れにまで広げると
『NATO条約に違反して建てられた敵のウラン濃縮プラントが・・・』
とおっしゃっている。

おかしいな?
そもそも”ならず者国家”がNATOに加盟しているハズないし、
NATOではない国がNATO”条約”に抵触する行動をしたからといって
違反”とは言わないだろう。

念のためNATO条約、ではなく”北大西洋条約”を調べてみました。

でも検索は”NATO”で引っ掛かるのです。
おっ!外務省欧州局様が日本語版の資料をアップロードしてくれてます。

最悪英語の条項を解読しなければならないかと覚悟していたのですが!
たーすかった!もうかった!

加盟国は西ヨーロッパ、北米を中心とする32か国

この人たち。軍人っぽいな


ちゃんと!『北大西洋条約の概要』と記載されています。
さすが外務省

条約前文で”目的”が書かれていて、
集団的防衛並びに平和及び安定の維持のための努力の統合
なんだそうです。

集団防衛については第5条でもう少し詳しく書かれており、要点は
欧州又は北米における締約国に対する武力攻撃
全締約国に対する攻撃とみなす。
締約国は、武力攻撃が行なわれたときは、集団的自衛権を行使して、
北大西洋地域の安全を回復するために必要な行動(兵力の使用を含む
を共同して直ちに取ることにより攻撃を受けた締約国を援助する。

なるほど!
うちののもんによくも手を出してくれたのぉ、ワレ!
このままで済ましとったんじゃあ、代紋が泣くってもんじゃあ!
という訳である。

KENTO(健さん条約機構)

それでは核兵器の原料であるウラニウムが関係する部分を捜すと、
2010年に”NATOの「新戦略概念」(第7版)”にて
”大量破壊兵器(化学兵器、生物兵器、核兵器等)の
拡散等といった新しい安全保障環境における
NATOの役割を再定義した”とかかれているのが見つかりました。

改めてNATOの「新戦略概念」(第7版)を調べると、
やはり外務省の日本語版がちゃっかりと出されている。
抜粋すると
)NATOの任務
NATOはいかなる国も敵とはせず
加盟国の領土及び国民の防衛が最大課題。

)防止・抑止
・通常兵力の適切な調和を維持
大量破壊兵器の脅威に対する防衛能力の更なる向上

)危機管理を通じた安全保障
NATO加盟国の領土及び国民の安全保障上の直接の脅威となり得る
域外の危機・紛争に対し、可能かつ必要な場合には
危機の防止・管理、紛争後の安定化に関与

しかし、欧米のStrategyも日本語に訳されると、
未だに(イ)(ロ)(ハ)とは!

なるほど、日本の法律があくまでイロハにこだわるのは、こういう気持ちが込められているのか⁉


やられたら、やり返す。ですがあくまで防衛が目的。

ならずもの国家のウラン濃縮プラント建設を
どれだけの脅威と捉えるか次第ですが、
さすがに、武力攻撃をする根拠とまでは言い難い。

いきなり(しかもウラン搬入前に)
敵基地にトマホークを叩き込むは、プラントを戦闘機で爆撃するわ!
ちと、やりすぎではないだろうか?

それ以前に、ウラン濃縮プラント稼働の脅威が、
武力攻撃をしかけるに相当するものだと認めたのだとしても
これはならず者国家の北大西洋条約違反ではなく
NATO加盟国の北大西洋条約準拠した行動とういことになる。

いや待てよ!確か日本語吹き替え版では
ちょっと違う事を言っていたような!

トップガンマーヴェリックの謎を解け‼#9では
トップガンマーヴェリックにおける””というのは、
なぜ国連を通して交渉もせず爆撃をするのか
とか
・F-18でなくても無人戦闘機を大量に飛ばして
 自爆覚悟でウラン濃縮プラントに突っ込めば
 一つくらいは目標に当たるのではないか?
とか(これをストーリーに対するケチともいう)ではなく

と書いていて、敢えてこの問題には目を背けていたのですが
やっぱり気になる

よしこの部分だけでもAmazon Primeで調べてみよう。
(ここで、自分史上初めて
『アマプラでの英語字幕表示&静止画像確認』を自らに許す。)


まずはオリジナルの英語から

The target is an unsanctioned uranium enrichment plat built in violation of a multilateral NATO treaty.
The uranium produced there represents a direct threat to our allies in the region.
The pentagon has tasked us with assembling a strike team and taking it out before it becomes fully operational.

ちょっと知らない単語があるぞ!
unsanctionedは…[未承認の]
あとNATO treatyの前についている
multilateralは? 特別な意味あり?…[多数国参加の]
NATO自体多国間の参加するものだから、当たり前のことか。
念のため、in violation ofも確認して…[違反して]で間違いない。

そして英語版の日本語字幕(字幕って句読点ないんですね。)

攻撃目標はNATO条約に違反して建設中のウラン濃縮プラントだ
その地域のわが同盟国にとって深刻な脅威だ
国防総省の下命で稼働段階に達する前にプラントを破壊する

ちょっと簡潔に表現されてはいるが、ほとんど意味は同じだ。

そして最後は日本語吹き替え版。やはり日本語は聞き取りやすい。

目標はこれだ。(ポチっとな、で画面に表示)
核拡散防止条約に違反して建設されたウラン濃縮プラントだ。
濃縮ウランはこの地域の同盟国にとって、直接の脅威となる。
攻撃チームを編成しプラントを破壊するのが任務だ、完全稼働を阻止する。

全体的な内容はむしろ字幕よりも、英語に忠実な
表現になっている。
直接の脅威”という言葉もNATOの新戦略概念で見た言葉だ。
しかし、NATO条約のところが、核拡散防止条約に置き換えられている!

それでは、今度は核拡散防止条約を調べてみるか。

外務省さん、毎度有難うございます。
Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons
NPT
核兵器不拡散条約ともいうのか。

いま、気が付きましたけど外務省
Ministry of Foreign Affairs of Japanの頭文字をとって
MOFA(モファ)ともいうのか。
なんか、もふもふの動物みたいで可愛いな。
よし、こいつを外務省のキャラクターに推薦しよう

外務省キャラクターの もふぁです。諸外国に圧力をかけるのは任せてね♡

税関キャラクターのカスタム君よりは良いと思うぞ

カスタム君 Cがなければ ただの犬

注目すべきは、核兵器を現在保有している
五か国(米、露、英、仏、中)以外の国に課せられる義務
を規定した第二条です。(非核保有国の義務)
・本条約締約国たる非核保有国は、核兵器を製造しないことを約束する。
・非核保有国は(核)兵器を自国の国家管理に移すことを
求めないこと
を約束する。

”約束すること”が義務なのかな?
約束はしたけど守らないとか、屁理屈言える系?

締約国は、2021年5月現在で191の国と地域
いっぱいだ!
むしろ非締約国を数える方が楽
インド、パキスタン、イスラエル、南スーダン
それだけ⁉
イランも北朝鮮もNPT締約国なんですね!びっくり。

核拡散防止条約であれば、ならず者国家締約国となっていると
考える方が自然です。

だって非締約国としてしまったら、
上記の4か国に疑いがかかってしまうんですもの。

非核保有国としての締約をしながら、ウラン濃縮プラントを
建設してしまうとは!
まさに約束を破るというエチケット違反である。

さて、この英語と日本語のセリフの中での条約名の違いはなぜ?
単なる間違いなのか?

むしろNATO条約の方がアメリカ人にはピンとくるからなのか?
それが高じて”軍人であっても、条約名を間違えてしまうほど
のNATOの知名度という訳で”、
正しい条約名を言うよりもむしろリアリティーがあると考えて、
あえて間違えた条約名をセリフとしたのか?

いずれにしても日本語版をつくるときに、生真面目に考えて
”これは間違い!”と修正したのでしょう。

これまで、それぞれ表現としての違いはあるにしても
言葉の意味を分析するうえでは
俳優たちが直接話す英語が一番正確だと思っていたのですが、
決してそうとばかりはいえない⁉

英語日本語字幕日本語吹き替え3つの”言語”
見比べながら意味を紐解く必要があるようです。

まさにウラニウムの謎を解くためのロゼッタストーン

おお、ロゼッタ、ロゼッタ、どうしたあなたはロゼッタなの?
シャンポリオン、それはロゼッタで発見されたからよ。

注)本物のロゼッタストーンは
ヒエログリフ(古代エジプト神聖文字)
デモティック(古代エジプト大衆文字)
ギリシア文字3種類の文字です。


ただ核拡散防止条約であっても、
お約束を破っただけで
直ちに攻撃をするのかという疑問が残るのはNATO条約と同じこと。

結局はウラニウムの濃縮をするというのがどれほどの危険度なのか
確認しなければ検証次のステップへは進めないのです。

濃縮ウランで調べると
ウラン(ウラニウム)には非核分裂性のウラン238
核分裂性のウラン235があり、
天然ウランではウラン235の含有率は約0.7%

濃縮ウランはこの割合を人工的に高めたもので、
濃縮後のウラン235の割合を濃縮度という。

濃縮度が20%以下低濃縮ウラン、
濃縮度が20%を超えるものを高濃縮ウランという。

低濃縮ウランが原子力発電所の核燃料として使用されるのに対して
高濃縮ウランは核分裂型原子爆弾に使用されるが、
特に90%以上の濃縮度のものを”兵器級”(Weapons‐grade)とも呼ぶ。

では原子爆弾は高濃度ウランがあれば作れるのか?
これも調べてみた。
原子爆弾の構造には大きく分けて
ガンバレル型インプロ―ジョン方式
の二種類に分類される。
(なぜ、””と”方式”と使い分けるのかは
本家”と”元祖”くらい謎)

ガンバレル型では兵器級高濃度ウランが必須になる。
それでも核分裂の効率が低いため大量のウランが必要になることと、
その構造に起因して小型化が難しい。
更に兵器を運用する側に対しても安全性の問題があるため、
ヒロシマに投下された「リトルボーイ」以外に
ガンバレル型の原子爆弾はあまり作られていない。

”安全性”というのは、もともと核分裂暴走危険が高い
兵器級の高濃縮ウランを用いることにより、
暴発防止するために非常に慎重に
取り扱わなければならないということである。

言い換えれば、ここまでウランの濃縮度を高める事自体が
危険であるということ。

インプロ―ジョン方式は、兵器級には至らないレベルの
高濃縮ウランを使用することが出来るのだが、
そのためのキーテクノロジー爆縮レンズである。

あぁ、あれか! 爆縮レンズ、爆縮レンズね。

少年マガジンで連載されていた『ゲットバッカーズ』で
MAKUBEXから爆縮レンズを奪還するっていう話が
あったなぁ。

憶えているのは爆縮レンズのところだけだけどね。

note記事の治安のために『爆縮レンズ』の詳細は調べませんし、
書きませんが、どうやら製造するためには
国家機密レベルの高度な技術が必要なもの。

う~ん、やはり原子爆弾製造するという脅威が確認されないのに
ウラニウム濃縮プラント建設だけで、
いきなり領土へ侵入して攻撃というのはさすがにマズかろう。

建設しているウラニウム濃縮プラントは
兵器級の高濃度ウランが製造できるほど、高度な設備なのか?
あるいは、そこまでウランを高濃度にせずとも原子爆弾を作れる
爆縮レンズの技術を保有しているのか?

結局考えられる脅威のレベルは、仮定×仮定であり
どうしても断定はできません。

しかし、脅威がある断定はできないが、否定も出来ない所に
米国防総省がウラン濃縮プラント爆破作戦を発動させた
本当の理由が隠されているのではないだろうか?

今はまだその理由はわからないが、
きっとそのを解き明かすためのロゼッタストーン
他の場面にも埋まっているのではないだろうか?

注)ロゼッタストーン以外にも古代エジプト語とギリシア語で
書かれた法令の石碑は実際にあるのだそうです。
・アレキサンドリア法令
・カノポス法令
・メンフィス法令
・第三メンフィス法令

第30回目の鑑賞では、それらを見つけることに集中。

そんなに簡単に見つかるのか?と懐疑的なアナタ

大丈夫!
既に、ロゼッタストーンが埋まっていそうな場所の地図は持っています。
あとは掘り出すだけ。

そう、以前からウラン濃縮プラント爆撃作戦に関して
違和感を感じていたシーンはいくつかあるのです。

そのシーンで違和感の正体をもう一度確認し、
やはりヒントが隠されている!と判断すれば
文字起こしするのみ!
もちろん文字起こしはアマプラです!

Second ロゼッタストーン

ルースターとのドッグファイトで下限高度を破って
サイクロンに怒られた時に、
すかさずウォーロックがフォローするところからの会話。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
What exactly do you suppose you were teaching , Captain?
 That as good as they are, sir, they still have something to learn.
You are talking about the best fighter pilot on the planet, Captain.
And they’ve been told that their entire career,while they've been dropping bombs from a high altitude with little to no dogfighting.
The parameters of this mission call for something they have never encountered.
Okay, you have less than three weeks to teach them how to fight as team and how to strike the target.
 And how to come home. And how to come home ,sir 
Every mission has its risks. These pilots accept that.
 I don't sir.

君は何を教える気だ。
 彼らはまだ学ぶことが…
世界最高のパイロットが?
 彼らは高々度から爆弾を投下するだけ、空中戦はお粗末
 今回のミッションには力不足です。
とにかくミッションを成功させる訓練期間は3週間だ。
 そして生還。必ず生還させる。
ミッションにリスクが伴うことは皆承知の上だ。
 私は違います。

具体的に何を教えたかったんだ?
 まだ学べることはあるという事です。
彼らは世界で最も優秀なパイロットなんだぞ。
 彼らが教わってきたのは、敵のいない環境下での高々度対地爆撃です。
 ですが、今回の任務は彼らにとって一度も経験していない…
3週間で彼らに叩き込め、チームとしてどのように闘い、攻撃するのかを
 そして戻る、彼らは戻らねばなりません。
リスクは避けられない。彼らは承知している。
 私はしていません。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

本当に奇怪なやり取りです。まさに奇々怪々
よくこれで会話が成立したなと思います。

ちょっと長いですが、ポイントを絞るならば
海軍戦闘機武器学校(通称トップガン)の技量レベル
作戦遂行上のリスクに関する認識です。

日本人の我々が一番印象に残っている”言語”はどれでしょうか?
1回や2回の観賞ならば日本語吹き替え版を選ぶ
という人も多いと思いますが、
やはり何度も見るなら上映劇場の多い字幕版になります。
そしてどうしても印象に残りやすいのが
我々の母国語でバーンと目に焼き付けられる日本語字幕です。

日本語字幕を見ると、なんとマーベリックは
トップガンのエース達に対して、あろうことか
『空中戦はお粗末』と言っているのです。
奴らは『高々度から爆弾を落とすだけ』だと。

それに対して、サイクロンは
世界最高のパイロットである』と断言しており、
英語のセリフに至っては”世界最高”どころか
”the best fighter pilot on the planet
この惑星のどこを探しても彼らに勝るパイロットはいない』
とまで言っているのです。

ここまで意見が合わなくてもいいんでしょうかね?

ケンカをやめて!
二人を止めて!

トップガンと称される1969年に設立された
Fighter Weapons Schoolの目的とは
空中戦の極意を教え込むことであると映画冒頭に出てきます。

では、現代のトップガンは
マーベリックが訓練生だった頃と違って
空中戦を教えなくなったのだろうか?

そうではないでしょう。
以前の映画『トップガン』(1986)でも、
トップガンは空中戦セオリーを守る事や
下限高度は重要視しており、
マーベリックがそれに反発する場面も度々ありました。

定石通りの動きは敵も、もう研究済みなので
状況に応じて臨機応変に対応するのが、
ドッグファイトの神髄なのだとマーベリックは思っているのです。

それに対してサイクロンは理詰めでの最適な動きをいつでも
安定してこなせるのが最高のパイロットだと思っている。

単なるそういう価値観の違いなのだと思います。

”with little to no dogfighting”という言葉に惑わされますが
英語では、”彼らの教育課程を通しての爆弾投下訓練は、
ドッグファイトをほとんどしていない状態での
高々度からのものである。”と言っているだけなのです。

少なくとも”空中戦がお粗末”とは言っていない。
そのあたりは日本語吹き替えも、英語に近いニュアンスを表現している。

確かにわざわざトップガンに来て
爆弾投下訓練なんてほとんどやらないでしょうし、
マーベリックだって、若い時そんなのやっていませんでした。

そもそも空中戦が目的のチームなのに、
敵機との空中戦を避け、対地目標に爆撃する、という作戦に
使おうというのが間違っている、とも言えますが
高い操縦技術が必要であることは間違いないので、
白羽の矢が立ったのだと思います。

ドッグファイトの操縦技術を、
今回のミッションに適用させるには訓練が必要であるとわかっていて、
サイクロンもここはこれ以上議論はせず
”Okay”とさらっとスルーしたのでしょう。

それからミッションのリスク
英語ではEvery mission has its risksと言っております。

確かに”どんなミッションでもリスクは伴うもの”、
訓練中であっても、ジェットウォッシュによるエンジンストールや
バードストライクに遭遇する可能性はあるわけで、
パイロットは常に命の危険があるのです。

パイロットはみんなそれを認めているが、
マーベリックは『認めない』とは!これ如何に?

じつはサイクロンはここでも一般論のように言っていますが、
マーベリックは明らかに、このミッションの特性について話をしており
サイクロンも、無茶な任務にパイロット達が
送り出されようとしているとわかったうえで、
はぐらかしているのではないでしょうか?

その点、日本語吹き替え版では
リスクは避けられない。』とどちらの意味にも取れるような
微妙な表現でこの会話の駆け引き感を表しているところが
絶妙だと思います。

それでは2枚目のロゼッタストーンのポイントをまとめます。
 
『トップガンパイロットとはいえ
このミッションに対する準備はまだ出来ていない。
リスクは減らすよう最善の準備をすべきだ!』
というマーベリックの個別論

『世界最高のパイロットでも
ミッションにはリスクはつきものなんだから』
という一般論でサイクロンがガッツリガードを固めて
はぐらかしているところです。

まずはピーカブースタイルでガードを固めて様子見

Third ロゼッタストーン

アイスマン亡き後、さっさとマーベリックをクビにした
サイクロンが、トップガンパイロット達に新作戦を発表して
地味に拒否られるシーンです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
You‘ll be entering the valley level at reduced speed.Not to exceed 420 knots.
Sir, wot’t we be giving their planes time to intercept?
Well, Lieutenant, you have a fighting chance against enemy aircraft.
What are the odds of surviving a head-on collision with a mountain?
You’ll be attacking the target from a higher altitude,
level with the north wall. Gonna be a little harder to keep your laser on target.
But you will avoid the high-G climb out.
We’ll be sitting ducks for enemy missiles.

山は越えず 減速して谷へ マックス420ノットだ
 敵の迎撃を受けるのでは?
諸君は受けて立てるはず
崖との接触を避けるため
飛行高度を山の北壁の高さまで上げる。レーザー照射は困難だが
ハイG上昇は回避
 敵ミサイルの餌食だ

減速して水平飛行で侵入する。速度は420ノット以下だ。
 敵に迎撃する時間を与えてしまうのでは?
反撃して生きて戻れる可能性はあるだろう
だが山に激突したら助かるか?
目標攻撃は北壁から高々度水平攻撃する。狙いを定めるのは難しくなるが、急上昇によるハイGを避けられる。
 敵の格好の餌食になる。 
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

この部分の面白いのは、
伝わってくる情報はどの”言語”でもだいたい同じなのに、
文章の組立て方も、厳密には言っている内容てんでバラバラなのです。

たとえば最初の一節。
高い高度でゆっくり飛ぶのだな、
というのはわかりますが、
もとの英文 ”entering the valley level at reduced speed.”に対して、
日本語字幕ではなぜか、”山は越えず減速して谷へ”で
level”いったいどこ行った?”山越え”どこから来た?

日本語吹き替えは”減速して水平飛行で侵入する”と一新!
valleyの対訳がなくなったのは省略かな?とわかりますが
levelを”水平飛行で(=水平に)”と解釈したのか?ふうん。

でもlevelは、”水平な”という形容詞
”水平”あるいは”水平面”という名詞はあるが
”水平に”という副詞はないんだな。
”水平に”と言いたければ、”on the level”と言わねばならない。

一方でentering the valleyまでは、”谷に侵入する”と
英語の教科書通りに気持ちよく訳せます。
ただ、その後ろにlevelが付くと少しわからなくなる。
valley levelで”谷と同じ高さ”(levelは”高さ、高度”の意味もあるので)
と言いたいところなのだが、
全文通して訳すとなると”谷の高度へ進入する”とは言い難いのである。

そこでlevel=水平 という解釈が出てきたのだろう。

ただこの作戦では水平に飛ぶというの当たり前で
わざわざ言う必要は感じられない。
ここはおそらく谷の峰と同じ高さで谷に侵入するということが
いいたいのではないかと思うのです。

これを、ちゃんと英語にすると
entering the valley at level with peak of the valley
くらいになるのでしょうが、
口語で伝えるにはクドイので略しているのであろう。

後の方で出てくる”level with the north wall”でも
同じことが起こっており字幕では”山の北壁の高さ”と高度派
一方で吹き替えではまたもや北壁から高々度水平攻撃するとなっており
またもや水平派です。

いくら口頭指示とはいえ、
こんなまちまちの解釈ができる表現を使うとは
作戦の厳密さに支障をきたすのでは!

そんなん、あきませんのとちがいますか~?

と言いたくもなるのだが、よくよく考えてみると
高度でもaltitudelevelの2種類あり、この会話でどちらも出てきています。
語感としては
あるポイントの高度がaltitude。
すなわち地面からそのポイントまで垂直に引いた線の長さです。

一方levelは地面というか水平面に対して平行に引いた
線(面)全体を表す高度なのであって、
levelというとその高度を保つのが前提となり
結局水平(飛行)と同じことになるのである。

おそらく英語でvalley levelから受けるイメージは
”谷の(峰の)高さを保って水平に”という感じなのかと思いますが、
日本語がlevelという単語をの意味を、勝手に
高度”と言ったり、”水平”と言ったりして別のもののように
分離しているのがいけないのだろう。

ただそれとは別に、日本語吹き替えで
”目標攻撃は北壁から高々度水平攻撃する”と”攻撃”という言葉を
2回使ってしまったのは少しイケていないと思う。

これ以上このロゼッタストーンの文章的な分析をしても
蛇足というか、くどくなってしまうのですが、
それでもこのnoteは自分だけのために書くものですので
気が付いた事はすべて記しておきましょう。

英文の中ほどにある
surviving a head-on collision with a mountain
(山との正面衝突を切り抜ける)
についても、大胆不敵な解釈をされています。

まずはこのウラン濃縮プラント爆破作戦は二つのパートによって
成り立っている事を思い出しましょう。

Aパート:谷の間をくねくねと縫うように水平飛行して進む。
Bパート:すり鉢状の谷の底にあるプラント爆破のため
     上昇、降下、そして爆弾投下後再び急上昇。

どちらも崖の面にぶつかる危険性があるのです。
ここで崖(cliff)という英単語は出てきませんが、
ぶつかる相手は、あるいはと、どう言っても同じことで
これに厳密な区別はありませんね、語感だけの問題です。

さて日本語吹き替え版。
この部分は『だが山に激突したら助かるか?』と訳しており
敵に感知される高度をゆっくり飛んで、第五世代戦闘機に
迎撃されることになるのでは?という
Aパートの作戦に関するボブの問いに答えるものです。

Aパート



ちなみに英語では、ボブへの答えとしてまずは
you have a fighting chance against enemy aircraft.
敵機と闘うのは(切り抜ける)”チャンスがある”と答えておいて
その次に来る山との衝突に対しては、”チャンスがない”ではなく
What are the odds of surviving
=切り抜けられるオッズ(勝算)はどのくらいだと思う?
(ほとんどないだろう?)と言っています。
間接的表現であるが故に、”はっきり言うまでもないだろ”、
と言いたげで、逆に絶望的であることを示す
いかにも英語っぽい表現になっているとニヤリとさせれれます。

それはさておき問題は日本語字幕
ここでは『崖との接触を避けるため』と訳されていますが
前述のように””が””になったことが問題ではありません。

ここではボブの作戦Aパートへの問いに対する答えではなく、
~のため”という副詞節になっていて、
なんとその副詞節が修飾する対象は
作戦Bパートの谷底にあるプラント爆撃を高高度から行う
という作戦パラメータ変更の理由となっているのである。

したがってここのというのは
くねくね谷の間を飛行する時の両側の崖ではなく
最後の谷底からの離脱時に
ミニマム9.5GというハイG急上昇で避けねばならない正面の崖のこと。

Bパート

ここまで解釈が違うと、
間違いを指摘するというよりも、その独創性に感心してしまいます。


残念ながら3枚目のロゼッタストーンのポイントは
以上の分析の結果とは全然関係ありませんが、
 
『高度30m以下、マッハ1を超える速度で谷を縫うように飛んだり、
機体の許容値7.5Gのところを10G近くもかかるような急上昇をすることで
SAMや敵の第五世代戦闘機をの交戦を避ける』
というマーベリックの奇策

『普段から最低地上高度も定めて訓練してきたように、
トップガンのパイロットは自然の地形を相手に曲芸飛行をするのではなく
敵がどんな強力な装備をしていようが、
本分であるドッグファイト戦術で対応すべき』
という正攻法でサイクロンがねじ伏せようとしているところです。

ただし実際に出撃する現場のトップガンパイロット達からは
サイクロンの正攻法不評のようです。

製造現場では、『現場』、『現物』、『現実』を重要視すべき
という三現主義が重要視されますので、
現場のパイロットの感覚が何より正しいということになっちゃうのですが
軍隊では指揮官の指示を守ることが絶対です。

それはおそらく戦争というのは創造的活動ではないので、
局所的な事情よりも大局的な成果が大切だということ、
はっきり言えば、何かを犠牲にしてより大きな成果を得るという
非情の論理なのではないかと思います。

また映画に対する思い入れを捨てて真に客観的に分析するならば、
この段階ではマーベリックの奇策はあまりにも条件が厳しすぎて、
『1』か『0』かの答えしかない極端なもののように思えますし、
F-18 でも最初から第五世代戦闘機との戦い方を練って行けば、
全く歯が立たないとまでは言えないのではないでしょうか?

更にこの時点でパイロット達は、マーベリックによって
敵機危険・絶対無理→崖クリアしなくちゃ”という思考を
だいぶ刷り込まれていますし、
まだ誰も渓谷間の低高度飛行を成功させていないだけに
手の届かないもの=価値があるもの”という幻想
抱いている可能性もあります。

要はこの時点では、まだ奇策正攻法どちらが正しいかは
わからないのです。

師匠三島英司ゆずりのバランスの良い構え


Fourth ロゼッタストーン

マーベリックが自分の作戦は遂行可能であると示すために、
実際の作戦時間よりも短い2分15秒での爆撃シミュレーションを
成功させて帰ってきた時の会議室でのサイクロンとの会話です。
映画全編中、ここだけが外で雨が降っていたこともあり
印象的なシーンです。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
You have put me in a difficult position, Captain.
On the one hand, You have demonstrated that this mission can be flown.
Perhaps the only way it can be survive.

So what do I do?
Risk the lives of my pilots and perhaps the success of this mission, or risk my career by appointing you team leader?

とんだ事をしてくれたな
ミッションが可能であることは証明された
たぶん唯一の方法だ
・・・
私の選択は?
部下を犠牲にミッションを全うするか?
またはー キャリアを懸けー君を編隊長に?

私を困らしてくれたな大佐。
君は任務が遂行可能だということを自ら示した、
これしかないという方法で。
・・・
ではどうすべきか?
パイロットたちも、任務の成功も危険にさらすか
もしくは私のキャリアを懸け、君を編隊長にするか?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

3枚目のロゼッタストーンでは、
マーベリックの奇策、サイクロンの正攻法のどちらが正しいかわからない
と言ったばかりですが、その直後のこのシーンで結論が出るのです。

審判を務めるのはサイクロン自らです。

何が真実なのかはどこまでいってもわからないことはありますが、
指揮官の立場であり、また現場でマーベリックが実証したことも
考慮して判断したことですので、
彼のセリフが最も正しいといたしましょう。

結論から言うと
マーベリックの奇策を支持する方向に
ほとんど傾いている段階なのです。

しかし重要なのはその判断根拠
これが、ミッションの謎を解くための
全てのロゼッタストーンを通して最も重要な断片です。
ヒエログリフに書かれたカルトゥーシュのようなものです。

ヒエログリフを楕円で囲っているのがカルトゥーシュ

まずはサイクロンによるマーベリックの作戦の評価から
すべての”言語”において
遂行可能である”と言っています。
判定は?10点10点10点
更に英語と日本語字幕では、”この方法が唯一のもの”であるとまで
言い切っています。

ところが日本語吹き替えは違う解釈を取り入れました。
only wayというのは、その作戦が唯一遂行可能ということではなく
その作戦が遂行可能ということを実証したマーベリックのやり方
唯一の説得力を有するものだった!と挿げ替えられているのです。

うん!誤訳だ。とは思いません。
まずはロジカルに考えて、”マーベリックの作戦が遂行可能である”
と実証されたからといって、それが唯一の方法であるということには
ならないからです。

Aのn乗+Bのn乗=Cのn乗を成り立たせる自然数A,B,Cの組み合わせが
自然数nが2の時に存在することが確認できたからといって、
nが3以上では存在しないというフェルマー予想を証明したことには
ならないようなものといえば誰にでもわかるでしょう。

ロジカルでないからこそ、これがサイクロンの主観であり
本音らしいこともわかっておもしろいのですが。

さらにこれが翻訳として光っているのは
最も観客の気持ちに寄り添った表現になっているからです。

ミッション訓練の第一ステップすら一人もクリアーできず
フェニックスとボブはバードストライクで墜落
司令官のサイクロンからは、
『作戦が遂行可能だと信じさせることができなかった。』
という理由で教官を解任され、
さすがにうなだれて、”除隊する”というマーベリックですが、
ペニーに後押しされて、再び立ち上がる。

誰もが感動した場面の後ですので、
『やっぱこれ唯一の方法やってわかったわ。メンゴ、メンゴ!』
とサイクロンにあっさりと認められるよりも

『お前がこれしかない!という方法で作戦が遂行可能だと示したんだ。
だから俺は動かされたんだ!』
というほうがガチグッと来るじゃあ、あ~りませんか?

ところで何で”これしかない”という方法なのでしょうか?
確かにマーベリックが2分15秒でクリア出来た事はスゴイのですが
だからといって、他のパイロットが同じように出来るとは
限らないじゃないですか?

い~え、そうではありません。
マーベリックは全員ができると信じて、手本を見せ
サイクロンまでがそれに動かされた、という事実が示すのはただ一つ。

マーベリックはトップガンパイロットのことを
『空中戦はお粗末』などと言ってはいたものの
(英語では言ってませんけど)
基本的な操縦技術は認めており、あとは”定石に対する常識”を覆して
出来ると信じる心こそが必要なものだと思っていたのでしょう。

そうでなければ、『自分が出来るから、お前もできるハズ』
という行動にはならなかったはずなのです。

そしてそれはルースターに関しても同じです。
マーベリックは『ルースターは準備が出来ていない』と評価していましたが
それは別にルースターのみが慎重すぎて他のパイロットより劣っている。
ということではなく、
多少の程度の違いはあっても、
準備が出来ていないのは全員が同じこと
だから同じように常識という固定観念を破れば必ず出来る、
ということなのです。

このマーベリックのアタックがあったからこそ、
ルースターも自分の殻を破る気持ちが芽生えたのですし、
マーベリック自身もルースターに対する
『兵学校へ行く準備ができていない。』
『この作戦に出撃する準備ができていない。』
というルースターの身を心配するあまりに曇った目を晴らすことが
出来たのではないでしょうか?

それで、空母での
『君のウイングマンは?』
ルースター
のシーンに繋がるわけです。

次にサイクロンによるサイクロン自身の作戦に対する評価は?
なおサイクロンの名誉のために入っておくと
この作戦はおそらく国防総省の指示に準拠したものだと思われます。

まずは日本語字幕
『部下を犠牲にミッションを全うするか?』
パイロットの内何名かは、戻らぬ人になるが
なんとか爆撃は成功するということなのでしょうか?
”軍事作戦に犠牲はつきもの”と考えれば7点~8点くらいですね。

それでは日本語吹き替えは?
『パイロットたち、任務の成功危険にさらすか』
おい、おい、おい、
おい、おい、おい、おい、おい、おい、おい、おい、
いままでと話が違うじゃあないか。

パイロットの命を懸けてまで実行するのに
作戦の成功も危ういのか?
これじゃあ0点じゃないか!

こんな作戦をトップガンのパイロットにやらせようとしていたの?

ここは英語を見てどちらが正しいか判定してみよう。
ココ一番の大勝負‼ゴクリ

Risk the lives of my pilots and perhaps the success of this mission
って言ってます。
雰囲気では字幕のように、
パイロットの命はリスクに晒される、と文前半で言い、
ミッションを何とか成功させると後半で言っているように
読み取れなくもありませんが、
やっぱりちゃんと文法を確認しないと。

Riskはリスクという名詞ではなく、他動詞で”~を危険にさらす”ですね。
一方でsuccessはバリバリの名詞
theも付いてるし、成功するという動詞succeedですから。

つまりandは文章文章を繋ぐ接続詞だと仮定すると
前の文章はriskという動詞があるが、後の文章に動詞がなくなる。
やはりここでのandは
単にriskが受ける名詞並列に表記する接続詞なのである。

つまり”パイロットの命”も、そして”ミッションの成功”をも
リスクに晒される作戦である、という解釈でき、
やはり日本語吹き替え版の方が正しいのです。おいおい。

まぁその前に、サイクロン自らマーベリックの作戦が
唯一遂行可能なものだと言っているのですから
今更驚くこともないのですが。

・・・で省略したところは、
マーベリックが軍用機を盗んで壊したとして
軍法会議にかけて、不名誉除隊にするだのなんだの、
強気なことを言っていますが、
なんだかサイクロンさん、
4つ目のロゼッタストーンに示した短い文章の中では
ガードを下げて、シレっと本音を出しているようです。

もはやノーガード戦法


Fifth ロゼッタストーン

ダメ押しの部分。
マーベリックが撃墜され、
救助に戻るというルースターに出された非情なる指令とは?
緊急事態だけにモロにサイクロンの本音が。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
Get’em back to the carrier now.
All Daggers flow to ECP. You have bandits headed for you.
What about Maverick?
Tell him there’s nothing he can do for Maverick, not in a goddamn F-18.

帰投させろ。
ダガー全機 空母に帰投
ダガー1は?
F-18だぞ 望みはない

すぐに帰還させろ。
ダガーズすぐに帰投ポイントへ
(敵機接近中)
マーベリックはどうする?
出来ることは無いと伝えろ。F-18じゃ無理だ!
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日本語では字幕吹き替えもほとんど同じことを言ってます。
F-18では敵の第五世代戦闘機に太刀打ちできないので
戻って来いというのです。

もう、4枚目のロゼッタストーンで言ったような
リスクがある”などという間接的な言い方ではなく
無理とか望みがないとか、F-18は散々な言われようです。

英語では
there’s nothing he can do for Maverick, not in a goddamn F-18.

ん?notってなんだ?
there’s nothing he can do for Maverick, in a goddamn F-18.
ならばスッキリわかるのですが。

F-18に乗っていないので無理?
そんなにF-18を信頼してる?ガッデムビリーブ
いやいや、そもそもF-18に乗ってるし

おそらくここはeven though you are not in a ~を
略しているのではないだろうか?

『たとえくそったれのF-18に乗っていなくても』である。

既にマーベリックは撃墜されているし、
戻っても助けられないと言いたかったのだろうが
ついF-18にgoddamnをつけちゃったりして
感情が出てますね。
『無駄とわかっていても、乗っているのがF-18じゃなければ
捜索を許可したのに!』ってね。

はい、サイクロン、テクニカルノックアウトです!


Let's solve the mystery

ここまで出てきた5枚のロゼッタストーンからの
解読項目を整理してみましょう。

ロゼッタストーン1 
ならずもの国家のウラン濃縮プラントの建設は
脅威ともいえるし、
それほど迄ではないとも考えられる。

ロゼッタストーン2
ウラン濃縮プラント爆撃作戦には、
リスクはあるとしても、
地球上でもっとも優秀なパイロットである
トップガンチームが出撃するのが適切である。

ロゼッタストーン3
敵は第五世代戦闘機で防衛しており、
爆撃に特化して選定したF-18では不利であっても、
敵機を相手にドッグファイト戦術で対応するという
正攻法を取るべきだと国防総省は考えている

ロゼッタストーン4&5
F-18では第5世代戦闘機に太刀打ちできず、
パイロットの命が危険に晒されるだけでなく、
作戦が成功しない可能性が高いということを
軍部は認識している。

以上から導き出される結論は⁉
所詮、ベールに包まれたならず者国家の機密事項なのですから
絶対に正しい判断というのは無いのです。

要はどう考えるか?
もっと言うと、どう決めつけるか、ということ。

もう少し状況を見定めてから結論を下せば良いといえば
もっともらしく聞こえるし、
脅威だ!すぐに攻撃すべきだ!といえばそんな気になる。

軍部にもこの二つの意見があったに違いありません。

実は国防総省の黒幕の誰かさんが一番関心があるのは
作戦の成否ではありません。

この作戦で軍部がこだわっているは
パイロットとして世界最高レベルのトップガンチームが
正攻法で攻めることなのです。

何故でしょう。
結果よりも過程が大事などという美談でないとすれば!

作戦は失敗する確率のほうが高いと知っている
むしろ失敗しても構わないと思っている。

だってF-18でまともに第五世代戦闘機と闘って勝てるわけがないし
失敗したところで、
ウラン濃縮プラントが稼働するだけのこと。
ならず者国家が核兵器を保有する脅威はまだ先の話なのです。

では、これで得られるものは?
まずは軍部の一部の強硬派を納得させることができます。
最高のパイロットで挑んだのだが、
やはり敵に地の利があった!極めて遺憾である、と

しかしそれだけではありません。
最高のパイロットでも出来ないのであれば、
人間が戦闘機を操縦する限り無理なのだ!
という論法に持っていくことができます。

すなわち大々的に戦闘機の無人化を推し進める原動力にしたいのです。

誰もがチラっと考えて気付かないフリをしていた
”F-18でなくても無人戦闘機を大量に飛ばして
自爆覚悟でウラン濃縮プラントに突っ込めば
一つくらいは目標に当たるのではないか?”というアレですね。

おそらく今現在の技術では遠隔そうだで敵の防御網をかいくぐって
ピンポイントで地下施設を爆撃するようなことは無理なのでしょうが、
それが出来るようなAI開発に
予算ヒューマンリソースを大量に投入する口実が欲しいのです。

これがマーベリックの奇策を使って失敗したらどうでしょう。
敵戦闘機と闘うことなくに衝突して失敗するわけですから、
端から見ると、『それは作戦が悪い、ちゃんとした戦闘をするべきだ。
餅は餅屋、戦闘機は戦闘だ!』と言われるだけのこと。

だからサイクロンは唯一遂行可能だとわかっている
マーベリックの作戦を自分の権限で実行することに、
彼のキャリアを懸けねばならなかったのです。

ところで、兵器の無人化ってどうなんでしょう?

現代において戦争をすることに対し
もろ手を挙げて賛成する人は稀だと思いますが、
軍隊(自衛隊も含め)の保有、
すなわち兵器配備に対してはどうでしょうか?

これは難しい。

兵器の運用イコール戦争なのだから、持つべきではない!
と言い切りたいところですが、
他国が攻めてきたらどうするのか?
と問われればたちまち答えに窮してしまう。

まして現在の国際情勢を考えると、
いつか世界のすべての国家がわかり合い、共存していける!とか
あるいはがあれば、どんな困難も乗り越えられるとかいうのも
なかなか厳しい。(敢えて言うことも大切だと思いますが)

そもそも職場内や地域ですべての人とわかり合えているでしょうか?
当然そんなところで殺し合いはしませんが、
自分とは考え方行動の仕方が異なる相手に対して、
反感を感じたり、ヒソヒソとうわさ話をしてみたり。

人間というのは、ウソを信じることが出来るように進化をしたが故に
他の動物を抑えて地球の王者として君臨したというのが
ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』の論旨ですが、
それ故人間は動物としては極めて特殊不完全なのだと思います。

そして兵器を持つべきか?に対して答えが出ないのは
この人間の不完全さ故であり、
おそらく答えが出ないまま、
この先国家が、人間が存在するかぎり未来永劫
闘争友愛の狭間で揺れ動き続けるのでしょう。

それでも兵器の無人化に対しては一つの考えを主張できる。
人間の不完全さ故に、良い事か悪い事か答えが出ずとも
兵器を使用する限り、その使用にはその不完全たる人間責任
持たなければならない。
時には恐怖により戦線を離脱したり、
ミサイルの発射ボタンを押すことをためらったりしながら。

不完全な人間が指揮をする軍事行動において
その軍事行動の遂行手段として、
感情を持たず、論理のみに従う完全AIが兵器を運用することになった
未来の軍隊はもはや殺戮集団でしかないように思えるのです。

こういう目で改めて振り返ると、『トップガンマーヴェリック』は終始
人間の責任無人機による合理化とのせめぎ合いの物語りとなっています。

まず冒頭のダークスターのエピソード
お相手はドローンレンジャー ケイン中将です。
マーベリックがダークスターでマッハ10を記録したことで、
無人機計画へに予算を奪われることは阻止できたのか?
肝心のダークスターが爆発してしまってはどうにもならないが、
これはどちらが勝利を納めるにしても前哨戦に過ぎない。

水面下では、今回ロゼッタストーンを使って推察したような
ならずもの国家のウラン濃縮プラントをダシにした
無人化兵器開発への大々的移行が謀られていた(かもしれない)のです。

その主戦場にはマーベリックは本来は関わるはずはなかったでしょうし、
なんだったら、念には念を入れ、ケイン中将がマーベリックを
飛行禁止にしようとしたのですが、
カザンスキー大将(アイスマン)の鶴の一声で
再びマーベリックは戦いの舞台へ。

そして今度の相手はシンプソン中将(サイクロン)であった
というわけです。

立て続けに中将と闘うなんて、ホント
島耕作ばりの活躍だな。マーベリックお疲れ様

この記事が参加している募集

#映画感想文

66,996件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?