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失われていく青春へ

ころもを着ている
色の崩れたぬるいころもを
着ていると幸せになれた
朝目がさめて
食事をして
顔と名前を覚えられない人に会って
笑顔をつくって
家で眠る
同じ生活を繰り返すことができた

つまらないと言った
あなたの顔が
死にそうだと思った
私のころもを渡せばあなたは幸せになれる
分かっていたのに私は渡さなかった
目を閉じるとき私はあなたのことを思い出す

あなたに訪れる時間の中で
穏やかに空を見つめられる瞬間があることを
願わせてほしい
ころもは貸せないけれど

私とあなたが生きる今日の延長で
会える日は春がいい
あせた色のころもの匂いを
あなたに嗅いでもらうことならできるから

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