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しなないでいえない

明日は来ないね
大宮駅に降り立った君は言う
星が1度も降り落ちなかった空には
まっさらな日がホームを照らす
地獄に行けたら行きたかったよ
落ちたら素直な苦しみにもがいていた
君は笑って手を引っぱる
何もいらなかったよ
お金も友達も恋人も地位も祝杯も
生きる意味を持とうとしなければ
死ぬことはできると思ってた
絶望して苦しめると思ってた
平淡な声にかかる毒の息吹は
花を散らす風と消える
いいんだよ君が言う
隕石が来るまで人は何度でも
絶望に戻ることができる
それまで自分が感じられる最高度の
絶望を探して生き延びていけばいいよ
鮮やかな苦しみは味わえなくても
緩やかに首を締める絶望が
あなたの生が終わるまでに延びていくから
幸せになりたいよ
その言葉を嗚咽を出してのみこむ
その音を君もきっと聞いていた
君の手にひかれ浦和駅に続く線路を歩く


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