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1巻こばなし#06「トリリオンゲーム」

このnoteでは
色んなマンガの単行本1巻だけに焦点を当てた感想のようでそうでもないような話をする。
すでに連載終了した作品でも、まだ1巻しかでていない作品でも1巻は誰にでもやってくる。
「このマンガは3巻から面白くなっていくんだよね」「最終巻まで一気に読むといいよ」
そんなことはご存じない。だって、ボクらはいつだって1巻から読み始めるんだから
※有料になっていますが、全文読めます。よかったら投げ銭くれると嬉しいです。

俺のワガママは、
世界一だ!!!

トリリオンゲーム01より ハル

はじめのこばなし

最近のエンタメは割とテンポを求められる。
そんな気がする。

動画だったら20分もする長い動画よりも、パツパツカットを入れた3分の動画の方が求められるし、実際最後まで見てしまう。
ゲームだってだらだら長いRPGなんかよりも死んだら終わりのバトロワ系が人気だ。
そして、マンガも同じようなことが言えるのかもしれない。

「〇巻から本番」というのはある程度マンガ筋を鍛えたものだけがなせるパワームーブなのだ。
いかに1巻からポンポンと話が進んで序盤の山場を作り出すことができるかが肝とされている。
強敵に勝つための長い長い修行パートなんてのはボクらが小学校の時のジャンプまでなんだろうなあとしみじみと感じた。

ちょいと前までは「アニメは3話で判断」なんて言われていたけど最近じゃあ「3話切り(テレビアニメの3話を見て今後の視聴を辞めること)」じゃなくて「1話切り」、もっというと、タイトルやスタッフ、脚本や監督、制作会社の時点で視聴を辞めるという「0話切り」なんてのもある始末。

わが国のエンタメ、どんどん生き急いでるな……。
そりゃアニメ原作がよくわからない異世界転生で溢れるわけだよ……。
でも、俺知ってる、なろうとかで小説書いても異世界じゃなかったらダメだってこと。
でも、俺の中の変なプライドが邪魔をして異世界転生が書けないのも知ってる。

ちょっとした困難があってもそれをなんてことは無かったかのようにスマートに解決!
要するにエンタメを接種することにストレスを感じたくないわけだ。
だが、ただサクサクとRTAみたいなものではダメだ。
最初に大きな野望を描きそこに向けて、小さく進んでいくことをいい感じ(視聴者や読者らが過度なストレスを感じて投げ出さないようにすること)に作るためには相当の技術が問われる。
ここがいい作家かどうかの分かれ目ではなかろうか?

今日の1巻

今回紹介するのは「トリリオンゲーム」
原作はアイシールド21やDr.STONEでお馴染みの稲垣理一郎先生だ。

スーパーコミュニケーション能力を持ち、顔もよく、体力もあり、クラスの中心人物であるまさに絵に描いたような陽キャである主人公の1人ハルが、全く正反対(コミュ障で、顔は……まあまあ。体力なんてカツアゲされるレベルでダメダメ)だけど、エンジニアとしての腕前はピカイチのガクと出会う所からはじまる。

中学時代、不良(半グレ)に絡まれていたガクは偶然通りかかったハルに助けられる。
トラックで監視カメラの死角に入っていたため、悪びれもなく不良達をぼこぼこにしたのだが、トラックが動いてしまいうっかり姿が映ってしまった。
どうしたものかと思ったハルだったが、彼が「同級生が絡まれていたら助けるのは当然」という言葉に感銘をうけ、監視カメラのシステムに侵入。見事動画を削除してみせる。
その手腕をみたハルは感心し、ガクとハルの2人は以来親友となる。

時は流れて大学生。
就活の季節なのだが、コミュ障のガクはどこもかしこからもお祈りメールを頂き……。

余談だが、このお祈りシステムどうにかならんのだろうか? と常々思う。就活生は割と命懸けて長ったらしい、企業のお気持ちアンケートというなのエントリーシートにちまちま書いて行き、彼らの顔色伺いクイズ大会というなの面接に臨むのだ。
そこに至るために交通費もかかるだろうし、時間もかかる。
ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)を大げさなおとぎ話のように語らないといけない。
私も大学時代はそんな就活システムに心を痛めたものだ。
そして、落とすときは「返信不可のbotメール」のようなお祈りメールを投げ返す。
ひでえな。

閑話休題

一方、ハルは連戦連勝。色んな会社から内定を貰いまくる。
連敗中のガクをハルは励ますが、そんなガクの大本命、大企業ドラゴンバンクにも落ちたガク。
そんなとき、ドラゴンバンクの内定を蹴ったハルが「一兆$(トリリオンダラー)稼いで、全てを手に入れる。俺"ら"のワガママは、世界一だ!!!」なんて言ってガクを起業に巻き込む。

起業したのはいいものの、お金もないしやること(事業)もない。
いくつか資金くれそうなエンジェル投資家を当たってみるものの、門前払い。
そんな中、ドラゴンバンクの社長令嬢桐姫から1億円の出資の話がやってきた。しかし、それは株式比率51%(要するにハルとガクを買いたい)という条件だった。
そんな話は当然呑めないハルはこれを使って、セキュリティチャンピオンシップに「ものすごくながい名前(本編参照)」でエントリーし、桐姫を挑発するのだった。

大会となったら何にもできないハルはガクが全力で戦えるように食料や飲み物を準備したり、合コンと称して、協力者をかき集めていたのだ。
バイトでためた腕時計を売ってまで……。
そんなハルの姿にガクは発起し、無事に予選を突破する。


ということで

トリリオンゲーム。
今連載されている5巻以下の巻数少ないマンガの中ではダントツで面白いマンガだと思う。
テンポが早いのだが、このスピードがちゃんと早いのだ。
語るところは語りつつ、そうでもないところはサクサクっと進める。
なので、展開が早くても読んでる側が置いてけぼりにされない。
そういう全体を通した読みやすさというのも本作の魅力だろう。

あとは作中のハルとガクの友情がいい。
とにかくかっこいいのだ。絶対に信用しているハルとそれに答えるべく頑張るガク。
良い作品には良いタッグがあると私は思うが、まさしく本作の2人はそれだ。

ビジネス的なこととか細かいところに関して、専門家的な人は突っ込みどころがあるのかもしれないが、「これはエンタメなんだ。うだうだ言うな」ってのが作品全体から熱として伝わってきた。

稲垣理一郎作品のストーリー構成はマンガだけではなく、小説にも生かせないかなあともっぱら考えながら読んでいる。

今日紹介したマンガ


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