歯医者とまんじゅうこわい。

 歯医者とまんじゅうほど怖いものはない。

 先日、朝起きたら奥歯の歯茎が腫れていた。口内炎かなとおもって放置していたが少ししてから気づいた。その口内炎、びっくりするぐらい臭い。口内炎とは思えない臭さだった。僕は最初、おじいさんが口の中に住んでいるのかと思った。もしそうならすぐに立ち退きを命じたが、おそらくおじいさんはいない。僕の辞書には、『口内炎:口の中にできるでき物。おじさんのような臭いがする』という記述はないということからも推測できる。

 僕はすぐに歯医者に駆け込んだ。2年ぶりの歯医者だった。

 歯医者はこわい。待合室で僕は色々リスクを想定した。「いろんな神経が死んでます」や「日本の医療の限界を超えたレベルです」などと言われないだろうか。ユーチューバーのような歯医者で、「全部抜いちゃいましょう。盛り上がるんで。」と言われたらもう終わりだ。震えながら審判の時(ジャッジメントタイム)を待った。高くも低くもない声で名前を呼ばれ、椅子に寝かされた。そして意外と眩しくない光で口内炎を照らされ、世界一小さい鏡であろう“歯医者の歯を見るやつ”で患部を見られた。

「親知らずですね。」

僕の何を知ってるんや!と一瞬言いかけたが、歯のことであるということに気づき、拳を緩めた。恐れていたようなことは起らず、すぐに施術は終わった。さっきまで口内にいたおじいさんもまるでローラっぽいタレントの水沢アリーのようにすぐにいなくなった。

歯医者こわい。ここで僕の歯医者の物語は終わってはいない。むしろ始まったばかりなのだ。これから通院が始まる。親知らずに親の有り難みを教えてやんぜ。

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