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『Shuggie Bain』(Douglas Stuart )

「数少ない、永遠の美しさを持つデビュー作」、「心を打ち砕かれる──」ダグラス・スチュアートのデビュー作。2020年ブッカー賞受賞作。

1981 年、死に逝く街・英国グラスゴーで生き抜くために、仲の良い家族が引き裂かれていく──。明るい未来を望む母、アグネスは常に夢を持って生きていた。 しかし、女好きな夫に捨てられたことで酒に溺れるなか、子供たちは必死に彼女を助けようとする。だが、子どもたちも自分自身を救うため、彼女をすてる。そのなか、常に希望を持って生きている末っ子のシャギー。彼は兄姉と違い、母のものとに残る。シャギーは一生懸命頑張れば、他の男の子たちと同じように普通になれると信じている。そして、母親をこの絶望的な場所から助けることができる、と。

商品紹介より抜粋、翻訳

読み出してすぐ、その英語にちょっと手強い…と感じました。難しい単語や表現が出てくるわけではないのですが、私には読み通すのが結構難しく、読み終わるまで時間がかかりました。登場人物が結構多いのと、スコットランド訛りの多い話し言葉…。

さらに話の内容も、心を締め付けられるような辛いもの…。主人公は少年シャギーですが、物語の中心はシャギーの美しい母・アグネスといえます。アルコール依存症で夫や2人の子どもに見放された彼女の物語が、ただ一人残った、末の子シャギーの目を通して、語られます。

シャギーは作者自身がモデル。それもあって、物語は三人称の語り口にも関わらず、シャギーがその場面にいなくても、読者はまるで、かわいそうな母を見守るシャギーになったような気がします。なので余計に辛いのかも。

救いなんてなさそうな物語ですが、シャギーと兄とのちょっとした兄弟がふざけ合うやり取りや、母の荒んだ心に優しく触れ、励まそうとするシャギーに心が温かくなります。

シャギーは男の子っぽいものや遊びに興味がなく、人形や洋服に興味をもつ子供。作者もファッションデザイナーでありながら、小説家としてデビューした異色の経歴で、彼の自伝ともいえます。

日本語訳書はこちら


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