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#yume-nikki 04

わたしの地元は都会じゃないからパンの専門店なんてほとんどない。けど実は一軒だけ、とってもオイシイ、パン屋さんを知っているから、教えてあげよう。



そのお店は、煉瓦造りのノスタルジックな外観。なんてことはなく、もしパン屋さんだと知らなかったら通り過ぎてしまうような、簡素で飾り気のないお店である。入り口を入ると、とても狭い。3〜4人入ったら店内はぎゅうぎゅう状態。しかも、そのパン屋はたまにしか営業していなし、開店時間もすごく短い。でも、ものすご〜くオイシイから売り切れてしまう。ここのパンを食べられたらラッキーということだ。ツイてるね!

あの柔らかくてもちもちのパンの味がどうしても忘れられない。忘れられなくて、久々に行ってみよう、とわたしは家を飛び出した。いつぶりかな、小学生ぶりかな。買ったばかりのもちもちパンと、お母さん手作りの温かい野菜スープ、という最強に平和な休日のお昼ごはんを思い出しながら。


辿り着いた場所は、あのパン屋ではなくなっていた。教室ふたつ分くらいの広さのある半屋外の空間。床には赤茶色の煉瓦が敷き詰められている。所々にある黒い鉄の棒が、テントの支柱のように白い布でできた天井を支えている。

ここはどこ‥‥?

そんな疑問をいだきながら、わたしは当たり前のように列に並んだ。どうやらパンを販売しているらしい。パンが食べられる!わたしはちょっと安心しながら、順番を待つ。


ショーケースには、それはそれは多種多様なパンが、ぎゅうぎゅうに、並んでいた。シンプルな食パン、マヨネーズとコーンのお惣菜パン(このパンはどのパン屋でもハズレはない!)、林檎と砂糖で煮詰めたジャムの入ったパン(青森旅行に行ってから林檎に取り憑かれてしまったわたしは、林檎の含まれているものを見ると、必ず食べなきゃ、という謎の責任感に襲われるのであった)‥‥。


目移りしながらも、ここのパン屋の一押しはバターロールパンだったことを思い出した。

バターロールください!

もごもごしてしまう癖のあるわたしにしては、結構はっきり声に出した方だったと思う。でも、店員さんは、

‥? バターロールなんてありませんけど‥?

衝撃が走った。と同時に、もう二度と食べられないことを悟ってやりきれない気持ちになった。あのパン屋さんは、もうここには無いんだ。もう、あのパンは、無い。その事実だけがわたしに突き刺さり、わたしは列からはみ出たまま再び戻ることはなかった。


たくさん食べて、たくさん眠れるようになります😴