【ショート・ショート】声が大きい人たち
「お母さん。先生がこの紙家の人に渡してくれって」
小学校6年生の美久がランドセルからプリントを出してきた。
「『緊急アンケート』?」
「そう」
「給食のことみたいね」
遥子はプリントの見出しをざっと読んだ
「給食が、カロリードリンクか、給食をミキサーにかけた物のどちらかになるんだって、先生言ってたよ」
「そのどっちか?」
「うん。そうだって。どちらも嫌なら、給食をやめるって言ってた。そこに書いてあると思うよ」
「どういうことなの。おかしいわよ。こんなの。先生に文句いわなきゃ」
「え?やめてよ」
「給食だって教育なのよ。なのに、飲むものか給食やめるかって横暴よ」
「私、カロリードリンクでいいから」
「そんなの給食じゃないわ。信じられない。教育委員会に直接抗議するしかないわ」
「お母さん。そういうことやめて」
「美久のためなのよ!ママ友集めて集団で抗議してSNSに書き込むしかないわね」
「お母さん。ちょっと落ち着いて、そのプリント良く読んだ?仕方ないの」
「何が?」
「私の学校、先生の半分近くが気持ちの病気で休んでるの」
「え?」
「これ以上先生いなくなったら困るの」
「それはそうだけど、給食は関係ないでしょ」
「何かあったら、またいろいろと叩かれて先生たちが疲弊するから、とにかく危ないことはすべて無くすんだって」
「じゃあ、なんか給食であったってこと?食べ物喉に詰まらせたとか。でも、そんな話、学校から聞いてないわ!」
「別の学校ではそういうことあったみたいだけど、うちの学校は違うみたい」
「え?じゃあ何?」
「うちの子が嫌いな物を出すなって抗議が多くて、作れるメニューがなくなったんだって」
「なにそれ。バカみたい。そんな親の抗議なんて無視すればいいのよ!」
「はぁ」
(終わり)
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