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【短編小説】日曜日の終わりに

日曜日の午後、美咲は家でぼんやりとしていた。ソファに横になり、窓の外を見る。少し暗くなってきた空に、夕焼けの名残りがかすかに残っている。

ドアの鍵が開く音が聞こえ、美咲は我に返る。健太が合鍵を使って入ってきたのだ。

「よお」

健太が顔を見せた。

「お疲れ様。休日出勤だったんでしょ?早かったね」

美咲が振り向くと、健太が疲れた表情で立っていた。

「まあね。15時に終わったから、まだよかったよ。しかし、働き方改革の時代に日曜出勤だよ。まったく。疲れたよ。昼も食べてないんだ」

「ごめん、もうお昼食べちゃった。カップ麺だけど」

「そっか。何か食材あるかな。作っていい?」

「いいよ。ただ、残り物の野菜があるくらいだよ」

健太がスマホでレシピを探しながら、キッチンに向かった。

健太と美咲は、付き合って3年になるが、最近少しマンネリだ。

美咲はスマホを手に取り、SNSを開く。友人たちが休日を楽しんでいる写真が目に飛び込んでくる。

「ねえ、健太。私たち、このままでいいのかな」

ふと、美咲が口を開いた。

「どうしたの、急に」

驚いた健太は、スマホを右手に持ったまま、美咲が座るソファの近くに戻ってきた。

「友達が結婚するんだって。私も27歳だし、そろそろ考えないといけないのかなって」

「美咲・・・」

「私って、子供の頃は、世界中を旅して、たくさんの人と出会って、心躍るような毎日を送るって夢見てたの。でも今は、毎日が同じことの繰り返し、なんかなぁって思うんだ」

「ごめんな。俺の仕事が忙しいばかりに、美咲と一緒にいる時間がなかった。結婚についても落ち着いて考える余裕がなかったんだ。でも、美咲と一緒にいると、毎日がかけがえのない時間に感じるんだ」

「健太・・・」

「たしかに、毎日は平凡かもしれない。でも、美咲と一緒にいる時間は、俺にとって特別なんだ。これからも、君と一緒に歩んでいきたい」

健太の言葉に、美咲の目に涙が浮かぶ。

「ごめんなさい。私、少し疲れてたみたい。でも、健太がいてくれて本当に良かった。これからも、一緒にいてね」

健太は、美咲の左横に座り、スマホを持つ手で肩を抱いた。美咲が頭を健太の左胸に傾け、体を預けた。

「健太。ごめんね」

美咲がそう言った時、健太のスマホが振動した。SNSで健太宛のメッセージが届いたようだ。

健太は右手に持っているスマフォを操作した。顔認証でロックを外し、SNSを起動した。

(仕事忙しそうだね。会えて本当に嬉しかった。今度いつ部屋に来てくれるの?今日は2時間だけだったから、今度は一緒にお昼食べたいな)

メッセージを読み、簡単な返事をフリック入力で書いた。

(今は、仕事で手が離せないんだ。あとで連絡する)

健太は微笑み、スマホをソファに投げた。

そして自由になった右手で、美咲の肩をまた抱きしめた。

(終わり)    

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