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読書レビュー くだらないものがわたしたちを救ってくれる

 面白さ★★★★☆
 オススメ★★★☆☆
 難しさ★☆☆☆☆
 ページ数:173

 ひとことで表すと…韓国での生物学研究者の等身大の感覚を知ることができる本

 この本は、韓国での生物学研究がどれだけ大変か、切実な状況を教えてくれる。内容は著者の実体験や生物学の最新事情、面白い事実を交えて日記のような形で書かれている。著者は生物学を研究する研究者であり、韓国では著者のやっている線虫の研究にはかなり研究費が出づらいらしい。一見何の役に立つかわかりづらい基礎研究は日本でも厳しい現状だが、韓国はさらに厳しい状況のようだ。

 この本の中で特に気になった部分は、遺伝と突然変異についての話である。私達も大小何かしらの突然変異を持っていると言う話である。これは面白い事実だと思った。そういった突然変異が、多様性をもたらし進化や繁栄を可能にしている。

 また著者の線虫好きが伝わってくる本でもある。線虫の研究が本当に好きだからこそ、給料が低くても、研究費が出づらくても頑張れるということが様々なエピソードから伝わってきた。

 この本は、事実に基づいた様々なエピソードを交えて、研究活動の苦しくも楽しい様子が鮮明に伝わってくる内容となっている。誰にオススメするかと言われると難しいが、読みやすくわかりやすい内容で研究活動の実情について知ることのできる面白い本だと思った。もっと基礎研究にお金が出るような、余裕のある世界だといいなと思った。

今回の本:くだらないものがわたしたちを救ってくれる 著 キム・ジュン 訳 米津篤八 柏書房株式会社 2022

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