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読書レビュー LOON SHOTS

 面白さ★★★★★
 オススメ★★★★★
 難しさ★★★★☆
 ページ数:502

 ひとことで表すと……イノベーションを生み出すルーンショットとは何か?生み出せる組織とはどんなものか?について考える本

 ルーンショットと呼ばれる、誰もが成功すると思わないような馬鹿げたクレイジーな発想が、時に素晴らしいイノベーションを生み出す。この本では、ルーンショットとはどんなものなのか、それを生み出す構造についてや、組織でルーンショットを育てる土壌はどうしたら育てられるのかについて論じられている。

 ルーンショットは大きく分けてSタイプ(新しい戦略)、Pタイプ(新しい製品・テクノロジー)の2種類がある。Sタイプのルーンショットは例えばFacebookやウォルマートなど、当時「儲かるはずがない」と思われていた方法で成功したものである。Pタイプのルーンショットは、AppleのiPhoneなどのそれまで世の中に無かった技術が代表例として挙げられる。

 この本では、こういったルーンショットについて、その特性としての脆さや圧倒的な成功、もしくは愚かな失敗などの実例を説明しつつ、どういった組織、考え方、戦略であればルーンショットを育てることができるのかについて論じる内容となっている。

 相転移と動的平衡についての説明がこの本で論じられているルーンショット成功のポイントとなっている。相転移とは、例えば水であれば0℃を境界として固体と液体(相)が変化することである。また、動的平衡とはこの0℃である時、水は固体と液体が混じった状態となり共存するこの状態の事を指す。この状態が、ルーンショットのイノベーションを育てる際に重要な組織の状態を表している。すなわち、水で言う固体と液体が、組織におけるアーティスト(改革者)とソルジャー(持続者)の事である。アーティストが多すぎると経済的に困窮し、事業は持続せず成功しない。ソルジャーが多すぎると変化への柔軟性は失われ、いずれ他に敗北し事業は縮小する。要はこれらの平衡状態を保つことで、ルーンショットが生まれる。

 この本は会社の経営者や、組織の運営者が読むべき本であると感じた。最後の付録では本の要点がまとめられており、後で読み返す場合はこの付録を読めばすぐに内容について思い出せるようになっており非常に良い。中身もさまざま実例を交えてわかりやすく書かれており、ページ数は少し多めだがオススメである。

今回の本:LOON SHOTS クレイジーを最高のイノベーションにする 著 サフィ・バコール 訳 三木俊哉 解説 米倉誠一郎 日経BPマーケティング 2020


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