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長編連載小説『サンキュー』第258話。

 麗は、神父に振り掛けてもらった香油を、手で拭い、

「私たちだけでなく、娘も、入信したいのです。映子と言います。まだ、年端ですが、洗礼を受けさせてください」

 と言って、あたしの名を口にした。恒彦も、

「映子を、入信させてやってください。正しい神のお導きで、正しい教えを勉強させてやりたいのです」

 と懇願した。その目に、ウソはない。麗が、結婚式の時に、恒彦がプレゼントしたロザリオを、懐から出し、

「神のお導きがあると思います。これは、命代わりです。映子を、入信させてやってください」

 と神父に懇願した。神父が、

「良いでしょう」

 と言って、ゆっくりと、香油を、あたしの肩に振り掛けた。あたしは、一瞬、当惑したが、神のお導きと思って、そのままにしておいた。あたしの入信は、それを機に、始まったのだ。(以下次号)

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