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長編連載小説『破線』第78話。

「そして、俺は、あの密室にあった紙片の指紋と、外の埃に付いた成分から、DNAさえ採取されれば、そこから、芋蔓式に犯人が出てくると思う」

 鎌田がそう言って、ゆっくりと、椅子から腰を浮かし、

「警視庁に行けば、鑑識の捜査で、DNAなんか、一発で分かる」

 と言った。俺が、

「ソイツは、誰だと踏む?」

 と言うと、鎌田が、

「DNAは、認識精度が高いから、一発で分かる。多分、男性だろう。窓枠を外すという偽装工作とか、時間軸をズラすというのは、男の犯行だ」

 と返す。そして、一言、ケリを付けるように、

「男の犯行なら、全ての事に関して、辻褄が合う。あのDNAさえ、調べれば、犯行は全て、立証される」

 と言った。その時、俺のスマホが鳴り始めた。出ると、タイミングよく、警視庁の鑑識課からで、

「鎌田、DNAの持ち主は、都内在住の高橋秀雄という男だったそうだ」

 と言った。

「高橋秀雄?」

「ああ、本田豪と川岡康太を葬ったのは、紛れもなく、高橋だ」

 俺がそう返し、ゆっくりと頷いてみせる。後は、高橋の居場所を特定するだけで、犯行は全て立証される。高橋は、もう、追い詰められたも同然だ。俺は、今回の事件の悍ましさが、痛いほど分かった。(以下次号)

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