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長編連載小説『破線』第69話。

 注射針と青酸化合物を、鑑識に回せば、直に、ホンボシは見つかるはずだ。実際、照合するだけで、分かる。鑑識はバカじゃない。また、日本の警察ほど、優秀な組織というのもない。俺がそう思っていると、鎌田が、

「永井、本田豪が殺害された密室で、天井板が外されてだろ?あれが、トリックだ。天井板は外され、川岡康太が葬られた第2の密室でも、窓枠は外された形跡があった。つまり、二重トリックだ。本田と川岡は、中日を挟んで、葬られ、死体は運び込まれたように、時間軸をズラされて、遺棄されたんだ」

 と言った。缶コーヒーの缶は、すでに、握り潰されている。鎌田は力が強い。握力が、かなりある。拳銃を使うなら、握力もないと、使えない。

「鎌田、つまり、君は、こう踏むんだな?あの密室は作られて、偽装され、多重工作され、挙句、死体に施されたトリックは、二重であっただけでなく、多重であったと?」

「ああ、その通り。君の見立て通りだ」

 俺がそう返し、ゆっくりと、頷く。鎌田は、二缶目のコーヒーに手を伸ばし、プルトップを捻り開けて、飲み始めた。(以下次号)

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