見出し画像

長編連載小説『流刑地』第47話。

 市街地の3丁目のオフィスは、入り組んだ場所にあり、ツンドラが凍っていて、冷えるどころじゃない。タクシー運転手が、

「例年、ロシアは冷えますからね。年々、厳しくなってきますよ。寒さが」

 と言って、被っていた帽子を、被り直して、ハンドルを切る。この運転手も、いろんな意味で、仕事慣れしていて、運転にも慣れているようだった。実際、ハンドル捌きは、軽い。現地の人間だろう。多分、適当に雇われて、タクシーを運転しているに違いない。

 市街地の3丁目のオフィス界隈には、いろんな人がいる。主に、ロシア人だ。日本人はほとんどいない。タクシー運転手が、

「ロシア人のお姉さん、お名前は?」

 と、トルーニャに訊いてきた。トルーニャが、

「トルーニャ・ミハイルです」

 と言うと、今度は、運転手が、あたしに、

「日本人のオバサン、あなたは?」

 と訊いてきたので、あたしが、

「土師未知です」

 と答えた。この運転手も中年で、女性の名前を聞いて、セクハラ紛いの事をする。実際、タクシー運転手とか、仕事は、長時間でも、いい加減だ。乗りっぱなしで、お給料が出る。歩合制なのだろうが……。(以下次号)

いつも読んでいただき、ありがとうございます!