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長編連載小説『流刑地』第70話。

 トルーニャが、カップに注いでいた水に、ウオーターサーバーから水を注ぎ足し、

「ミチ、書類を読み終わったら、すぐに、スタンバイして。今から、説明するから」

 と言って、あたしに促した。あたしが、コーヒーを飲みながら、

「ちょっと甘過ぎるから、砂糖とミルクを少なめにして、水で薄めた方が良いわね」

 と言い、ウオーターサーバーから水を足して、コーヒーを薄めた。トルーニャが、

「ロシアは、いろいろあるわよ。難しいのよ、国情が。でも、気にし過ぎないで。あたしは、ミチの味方だから……」

 と言って、ゆっくりと、あたしの方に向き直る。その目は、爛々としていた。碧眼は、死んでない。ちゃんと、輝いている。あたしは、トルーニャのその目が好きだった。ロシア人というのは、実際、あたしたち日本人にとっても、馴染みの人種なのだった。(以下次号)

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