お金で買う尊厳

ひとは、お金で尊厳を買っていた。
昔は、お金がないと、尊厳を保てなかった。

お金がないと、食べる物を乞わないといけない。
お金がないと、みすぼらしい服を着ないといけない。
お金がないと、人を呼ぶことができない貧相な家に住まないといけない。
お金がないと、嫁をもらうことができなかった。

それが、近い過去まで、続いていた。

お金がないて、外食できなかった。
お金がなくて、ヨレヨレのスーツを着ているのが恥ずかしかった。
お金がなくて、狭い家にしかすめなくて、遠い家にしか住めなくて、友達を呼べなかった。
お金がなくて、女の子にふられてしまった。

でも、変わってきた。

安い外食ですましてしまう。
スーツを着るより、ラフな格好の方が自分らしい。
そんなに汚くない家に住むことができる。
結婚できるかどうかは、お金じゃなくて、その人と気が合うかどうかだけ。
仕事も給料ではなく、やりたいことで選ぶ時代。

つまり、尊厳をお金で保つ必要がなくなってしまった。

つまり、お金がその人の社会的な価値を決めなくなってしまった。

だから、世の中は尺度がなくて困っている。今まではお金が人の社会的な価値を示す尺度だったのに、今はそれでは社会的な価値を測れないから。


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