初乳~小さく早く産まれた娘へ~
母乳育児を決めたところ、その日の夕方に、MFのスタッフの方が張り切って入室されました。
「よし、やってみよう」
「はい」
「夜も起こすから、しぼっていきましょうね」
あ、夜。そうか、夜間もか。
思いもよらず予定日から約3か月早い出産となり、私も娘も生死がかかっていて、ただ祈る、なすすべなくただ今を生きる、という状態がしばらく続いていたので、生きるために能動的に何かをするという感覚を忘れていました。
それに出産するまでは、お腹の赤ちゃんを守るために、とにかく静かに横になっていないといけない一方で、朝となく夜となく突然出血するので気が抜けませんでした。
正直、この時の私は心も体も疲れていました。
でもそうか、生きることをしていかなきゃ。
生きてる娘がいて、その娘のために私にできることがあるんだ。
がんばろう。
小さな娘を取り出すために、通常の帝王切開よりもお腹を大きく切開していました。お臍の下から股ギリギリまで。テープと包帯でぐるぐる巻きで覆われてたけど、少し身体を動かすだけで激痛が走りました。輸血しながらも貧血は治っていませんでした。
寝返りをうつのはもちろん、お手洗いに行くのにはちょっとした決心が必要で、一苦労でした。
時間をかけてベットに座りると、MFのスタッフの方が、乳房や乳首を揉んでくれました。
上の息子を出産した際には、出産予定日が近くなると、自分でマッサージして母乳が出るように準備をしていたけど、今回はまったくほったらかしでした。
出そうにないよな。。
痛いくらいに一生懸命、スタッフの方は力を入れてぐいぐいと揉んでくれていました。執念を感じるくらい一生懸命でした。
出なくて申し訳ないな。。
ところが
「わ、出た出た。ほら」
スタッフの方が嬉しそうに見せてくれました。
身体って本当にすごいですね。神秘。
黄色い濃厚な初乳と言われる母乳が、たらりと出ました。
出産前後で何度泣いただろう。
この時も涙が出ました。
身体はちゃんと分かってる。
娘を出産したこと。
私の頭は、気持ちは、「早く産んでしまって、こんな予定じゃなかったのに」って現実を受け止めきれてなかったけど、
私の身体は受け止めてる。
スタッフの方は興奮しながら、初乳の大切さについてお話ししてくださったり、初乳を見せてくださったりしました。すべて、落ち込んでる私を励まそうとしてしてくださることだというのが伝わってきました。
「じゃ、あと3時間くらいで起こしにきます!」
「はい」
本当は寝たいんだけど~。。。と思いながら、とても嬉しかったです。