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[オカルトな話] 電波を受信する男

あれは先々週だったかな、新宿のゴールデン街のバーでちょっと飲んでたんだよ。

そしたら、あとから入ってきた若いやつが話しかけてきてさ、ちょっと興奮した様子で、自分は瞑想をやってるとか言うんだ。

で、ビールを1缶頼んでぐっと飲むと、わーっと話始めてね。

おれもそういう話は嫌いじゃないから、読んでた本は栞を挟んで閉じて、適当にうなずきなから話を聞いたんだ。

* * *

……ぼくがやってるヴィパッサナー瞑想ってのは、最近かなり流行ってるマインドフルネスとかいうのと、まあ大体一緒で、とにかく呼吸と体の感覚をずっと見続けるんですよ。

10日間の合宿コースっていうやつで、中10日をみっちり座るから、全部で11泊12日なんですけど、とにかく朝の4時半から夜の9時まで、そりゃ休みもありますけど、ほとんど座りっぱなしなんです。

そりゃあ、きつくてね。

最初の2、3日はこんなの続くかな途思ったけど、皆やる気あるから、そういう空気の中だとなんとなくできちゃうんですよね。

なんとなくできちゃったはできちゃったんだけど、やってる間はホントにしんどくて。なんでこんなことやってるんだろうとか思いながらも、とにかく経験だからな、みたいな感じで自分を納得させて。

それできついのはきついんだけど、7日目の午後になんか少し心に落ち着いた感じがきたんですよ。で、こうちょっと気が遠くなるような感じがして、そしたら小さく男の声が聞こえてきたんです。何を言ってるんだか分からないくらいの小さな声で、でも口調からラジオでアナウンサーがなんか話してる感じで。

しばらくしたらふっと聞こえなくなって、また座ってるのがしんどくなって。

そういうのが翌日も続いて、ええ、ちょっと恐いなってのは感じましたね。幻聴みたいなことでしょ? 瞑想の先生に相談したら、
「よくあることだから、気にしないで体の感覚を見ていなさい、それで落ち着かなければ、少し強い呼吸をしばらくやってみなさい」
みたいなことを言われて、ああ、そんなでいいのか、くらいに思って。

で、瞑想は10日間みっちりやるって言ったけど、最後の10日めは、途中から話ができるようになるんです。ああ、そうそう、言い忘れたけど、コース中は基本的に喋っちゃダメなんです。瞑想の疑問点を先生に質問したり、生活上の問題をスタッフに話したりすることはできるんだけど、それも最小限にってことで、9日目まではずっと喋んないでやるんです。

だから、7日目に声が聞こえてきて、8日目も続いて、9日目で、実質今日で終わりだなと思ってたら、その日は男の声だけじゃなくて、それとやり取りする女の声も聞こえてきたんですよ。

やっぱり何を言ってるのから分かんないんだけど、二人のアナウンサーがやり取りしてるんだなってのは分かる。

これが内容も聞こえてきたらどうなるのかなって、ちょっと思いましたね。

でも時間切れというか、10日目にはもう聞こえなくなっちゃって。

それで最終日の帰り際に、いつも前のほうの席でしっかり瞑想してた年配のおじさんに、ちょっと話しかけてみたんです。こんなふうに聞こえてきたんですけどって。

そしたらその人がよくビルマに瞑想に行くってことで、人によっては聞こえてくるらしいねって言うんですよ。

で、その人の知り合いの話を聞かせてくれたんですけど、ビルマで集中系の瞑想をひと月以上もがんがんやってたら、精神的に極度に緊張した状態になっちゃって、そしたら電波をキャッチするようになっちゃったんだっていうんですよ。

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