Toshiyuki

もがいて生きる

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最近の記事

子猿

東北の風に冷ややかな秋の気配が混じり始めた9月半ば。ふとしたことから、11歳になる上司の息子を一泊家で預かることになった。以前参加した職場の飲み会に上司の子供もおり、息子さんが自分のことを気に入ったらしいのだ。 11歳の彼は、大量のゲームソフトを手にして家にやって来た。我が家のプロジェクターを使い、一晩中大画面でゲームをやろうと魂胆らしい。多動な彼は、ゲームで負けるとイライラして体や手足を落ち着きなく動かすので、見ていてこちらまで落ち着きのない気持ちになる。が、気分も移ろい

    • 飛んで、イスタンブール!!③

      トルコ旅行5日目 カッパドキアを後にして、首都イスタンブールに着く。 夕方の3時。宿のオーナーに勧められたチャータータクシーでホテルまで向かう。 1時間で6000円。高いなと思う。 ここまで余り出てこなかったトルコの物価だが、日本と余り変わらないイメージでよい。 例えばご飯は、安いレストランでも一食1000円くらいはするし、少し贅沢をすれば、あっという間に3千円は超えてしまう。洒落たcoffeeショップに行けば、coffee一杯500円。 宿は一泊10000円、観光ツアー

      • 飛んで、イスタンブール!!②

        2日目の続き。 AM8:30 カッパドキア空港で飛行機から降りると、周りには砂っぽい台地がどこまでも広がっている。気温は20℃。青々とした空には雲一つなく、肌に触れる空気はひんやりカラッと心地よい。 日差しは強いが、サングラスさえしていれば非常に過ごしやすい天気だ。 AM9:00 宿に着くと、まだ早朝だというのに部屋まで通してくれる。そして、のんびりしていていかにも気のよさそうなオーナーは、朝食も余っているから食べて良いと勧めてくれた。 だがここで、少し逡巡してしまう。素

        • 飛んで、イスタンブール!!①

          間延びしていた東北の梅雨が明けようとしていた7月下旬。 なんとか死守した夏休みで、5泊8日のトルコ一人旅をすることにした。 トルコでしたかったことはこの4つ。 ①カッパドキアにある「地下帝国の遺跡」を見る。 ②世界三大料理を現地で食べる。 ③ヨーロッパとアジアの文化の混ざった不思議な文化を味わう。 ④旅に一貫性を持たせる。 (これまでタイ、インドと行って徐々に西に移動していたので、少し西のトルコに行くと旅の一貫性があるような気がする。(シルクロードのように?))

          海水浴場でバタフライ。

          職場の先輩が毎日車でどこかに出掛けていく。1人ドライブって楽しいの? そう思って、最近色々なところに出かけている。大体は、朝か前日の夜に、一つだけ目的地を決めて、とりあえず遠くまで出掛けてみる。出掛けた先でまた新しい発見があり、予想外の体験がある。 盛岡から釜石まで車で1.5時間。当初は海鮮丼を食べることが目当てだったけど、ついでに海水浴場まで行ってみる。 ファミリーばかりの日曜日。冷たい海でバタフライをする。謎のやり切った感がある笑。 それから鉄の博物館にも行ってみる

          海水浴場でバタフライ。

          それって、〇〇的な?

          夏。 久々に同期と会った。 東北・北関東に散らばっている、シフト制勤務の5人で予定が合う。そのこと自体が奇跡だし、会えて楽しかった。 みんなで仕事の話をたくさんした。湿原のハイキング中も、ログハウスで飲んでいるときも、寝る直前も、ドライブ中も。お互いの悩みを話したり、励まし合ったり。 初めはみんな一生懸命話していたけれど、だんだんと仕事の話題も尽きてきて、話の濃度が薄まるっていく。話しすぎて、仕事のことなんてちょっぴりどうでもいいこというような、そんな感覚になる。 自分にこ

          それって、〇〇的な?

          転勤

          有明の海へ来た。それは、東京を出る前の最後の休日のことだった。よく晴れた午後の波は穏やかで、海浜公園の隅の方では、少し日に焼けた釣り人たちが欄干に寄りかかり、動かない竿の前でビールを飲んでいた。それは不思議と静かな空間で、波の音も風の音も、全くと言っていいほど聞こえてこなかった。木陰となったベンチに座ってそうした様子を眺めていると、あたかも、季節の変わり目に訪れる短い凪に居合わせたようであった。 ――――――― 離任日、先輩はわざわざ職場の出口まで見送りに来てくれて、「君な

          ラン日記20220703

          20220703 昨日、夏ランの夢を見た。それはこんな夢だ。 朝、テントから抜け出て体を伸ばす。一切の思考を挟まずに僕は日焼け止めを顔にぬり、全身に虫よけスプレーをかける。ふと、自分の自転車を立てかけている木を見ると、昨日まで孵化の途中だったエゾゼミが、もう殻だけ残していなくなっている。少しだけ上を向くと、夏の音がそこらじゅうで鳴り響いている。 --- 電車が走り始める。ホームで輪行袋を持った後輩たちが、窓の外で景色と共に流れていく。僕は、またか、と思う。ここ最近、輪行

          ラン日記20220703

          GWラン

          去年のランの日記を見つけたので、なんとなく手直ししてあげてみる。過去の自分の文章の拙さに毎度驚いてしまう。本当はもっと読み手に伝わりやすいものを書きたいのだけれど、今は、これが精一杯。  夕方。みんなで防波堤から足をぶらつかせて、昔のランの思い出話をしていた。今よりも少しシャイで、世の中の事なんて全然分かっていなかったあの頃。僕は目の前の相手がどんな人かということばかり考えていた。今でも、きちんと相手を見ることができているだろうか。 --- 金沢駅。激混みの駅前を抜けて

          季節

          朝。最近は日差しが暖かいけれど、気温はまだまだ低い。一度部屋に戻ってダウンジャケットを羽織ってから、僕は自転車にまたがった。 今日は通っている片方の小学校の、最後の勤務日だった。一応、アイフォンに挨拶の手紙も書いていった。 教室に着くと担当の生徒はおらず、校門のところでぐずっているらしかった。ひとまず現場に向かって、そこで初めてその子のお母さんを見かけた。芯はあるけど物分かりのよさそうな、どこにでもいそうなお母さんだった。 芋ほりの時に見かけた、ぬぼーっとした大柄のお父さん

          あるアニメ監督との対談

          去年の夏から週に2回、小学校で特別支援系のボランティアをしている。 今日はその学校の70周年を祝うイベントがあり、縁あって某有名アニメ監督が講演に来ていた。H.M.氏である。夏の戦。タイムスリップガール。 集会は2時間。僕は一年生の子を見ているので、長時間の全校集会なんて大丈夫かと、大いに心配した。しかし、なんと集会は教室ごとでのオンライン。画面共有なんかを使って監督がこれまで手掛けたアニメが動画で紹介され、子供たちは大盛り上がり。そして飽きてしまえば落書きしたり机で寝た

          あるアニメ監督との対談

          無題

          以前こんな人を見かけた。 その人は、いわば梯子のような人で、他人の成長の為に自らが足場になることを良しとするような人である。 その人の殺し文句は、「”自分が幸せでないと人を幸せにできない”ってほんとうかなぁ」である。 とはいえその人はマゾヒストではないので、もしも登坂者に傷つけられれば、それ相応にきちんと怒ることができるらしい。その点では健康的だ。 しかし登坂者にしてみれば、会うたびに自分の前に梯子がかけられているというのも、いったいどんな心境なのだろう。 梯子はい

          砂漠が街に入りこんだ日

          久々のnote。最近ずっと書くことが思い浮かばなかったんだけど、もう書かないことの気持ち悪さの方が勝ってしまったので、何でもいいから書くことにする。歯磨き的なね。 今日はストーリーもおポエムもなし。夢も現実もなし、希望も絶望も、愛も平和もなんもなし。なんもなしかいな、ほな般若心経やがな。 最近精神分析家がやってるゲーム実況をずっと見てる。マジおもろい。 塾での子供の成長が凄まじく、マジおもろい。関わりの中でいまいちだったところを定期的に見直して意識しつつ、まあ全体的には

          砂漠が街に入りこんだ日

          GUTI

          どんな苦しい物語でも、必ず出口が用意されている。そう思いでもしなければ、およそ人の文章なんて読んでいられないだろう。 しかし僕らの現実世界では、必ずしもそうとは限らない。そして、文章もまた人間が書いたものである以上、常に出口が用意されている保証はどこにもないのである。 箱に入れられた猫の生死を確かめるには、最後まで読んでみるほかないのだ。 僕の悩みの種は、相変わらずシェアハウスだ。まあ大概こっちが悪いのだが、全部がそうでもないというのが難しいところだ。 ところで、全体の

          メリー・クリスマス

          共同作業というものは、社会的動物と呼ばれるヒトにとって自身を定義づける本質的な行為の一つであると言えるだろう。折角の年末であるから、ここでは一つ、文を書くという行為においてそれを試してみたいと思う。 例えば今一つの短編を書くとすれば、それは季節柄クリスマスの話が良いんじゃないだろうか。そして、主人公には普段と異なる一日をプレゼントする方が、読み甲斐があるのではないだろうか。 おそらく読者の多くは、(100点満点とはいかないまでも、)やはり気の許せる相手とそれなりに楽しいク

          メリー・クリスマス

          お気持ち供養

          21時頃の電車の中というのは、まるで図鑑のようなものだ。 都会の電車に乗ってみるといい。席に座って、じっと向かいの乗客を眺めてごらんなさい。入れ代わり立ち代わりする乗客たちの人生を想像するのは、それだけできっと短編集を読んでいるようなものだから。 神田 向かいの席には全身黒服に毛虫みたいなまつ毛の金髪女子と、Here Is Loveと書かれたTシャツを着たおっさんが座って話し合っている。年の差は親子くらいだ。二人は時折視線をあげ、バーの電気が消えるまで残っていた客のことを

          お気持ち供養