【サービスデザインの学び ①】柔軟性/コアアクティビティ/実践コミュニティ
マネーフォワード Xのデザイナーを中心とした有志メンバーで『サービスデザインの実践』の輪読会をしました。「世界中のサービスデザイン実践者の叡智を結集したバイブル」というだけあって、読めば読むほど学びがあります。
今回は『サービスデザインの実践』の内容に関連する、マネーフォワード Xでの活動をご紹介します。
サービスデザインを実践する方の参考になれば幸いです。
サービスデザインには柔軟性が必要
サービスデザインの長所のひとつは、柔軟性を認める、いや必要とすることだ。解決したい問題に合わせてアレンジできるのが最良のデザインプロセスであって、問題のほうをプロセスに合わせるわけにはいかない。
マネーフォワード Xで大事にしている3つのポリシーの1つに、「Flexibility(柔軟性)」があります。多様なクライアントとの共創プロジェクトがあり、クライアントの状況やスケジュールに合わせてアプローチは毎回変わります。
たとえば、最終アウトプットのかたちが決まっておらず、クライアントの戦略のためにユーザーとどのような関係を築いていけば良いのかを探ることが重要だった場合は、最初にユーザーの現状把握のためのアンケートやインタビューをしていきました。その調査結果をもとに、ジャーニーマップなどでユーザーの不満や価値、事業課題などを視覚化します。そうしてフォーカスする課題の認識を合わせた上で、アイデアを展開しプロトタイプをつくって評価をしていきました。
クライアントの構想やサービスのコンセプトがある程度明確だった場合は、ユーザーシナリオを視覚化したストーリーボードや操作できるプロトタイプをつくり、ユーザーインタビューの中でコンセプト評価、ユーザビリティ評価をしていきました。
反復を繰り返すコアアクティビティ
初期段階でリサーチをして、その結果をもとにアイディエーションをおこない、プロトタイピング活動を開始するとしよう。場合によってはもう1度さらにイテレーションを実行する、あるいはもっとリサーチをおこなって、プロトタイピングで浮かび上がった問題に対処しなければならないことがわかるかもしれない。それでも、プロトタイプの制作と最終的な実装を目指し、コアアクティビティをさまざまに組み合わせながらイテレーションを続けるのだ。
マネーフォワード Xでは、MFSD(Money Forward Service Design)と呼んでいるアプローチをモデル化していますが、順番に各ステップを踏んでいくとは限りません。
たとえば、プロトタイプをつくりながら並行してアンケートやインタビューを計画したりします。
複数のユーザーグループが想定される場合には、被験者のリクルーティングの都合もあり、一つのユーザーグループの調査と分析をしたあとに、もう一方のユーザーグループの調査をしたりすることもありました。
はじめにユーザーの課題や事業課題の仮説を洗い出して、それを解決するアイデアを展開するワークショップをやった後に、可能性がありそうなアイデアをプロトタイプにして、現状把握のインタビューとコンセプト評価を並行して行う場合もあります。
現状のMFSDは、実装前のプロトタイピングの活動がメインになっています。そこでのコアアクティビティは、問題/仮説設定、調査/評価、分析、アイデア展開、プロトタイプ作成です。
(X型MFSDモデル)
調査/評価では、ユーザーインタビューにクライアントの方にも同席していただいて、一緒にユーザーへの理解を深めていきます。
分析では、ユーザーの本質的な課題や価値を整理するワークショップをやったり、アイデア展開では、全員で描いた何十枚ものアイデアシートを共有し、実行可能なアイデアに統合していきます。
そして、検証したい仮説に応じてプロトタイプをつくり、評価を繰り返すことで問題/仮説への確信を強めていきます。
社内でゆるやかな実践コミュニティをつくる
実践コミュニティを構築することでセーフスペースが生まれ、そこでは誰もが自分が学んだ教訓やサクセスストーリー、あるいは失敗談を安心して共有できる。
マネーフォワード Xでは、UX/サービスデザインのトレーニングプログラムをつくり、デザイナーに限らず、実際のプロジェクトや課題に合わせてレクチャーやWSに参加してスキルを向上させる機会をつくっています。
プロジェクトがひと段落したらナレッジ共有会を開いて、プロジェクトに参加していないメンバーにも良かったことや失敗したこと、次回に活かすことなどを共有しています。
また、クライアントとの共創プロジェクトとは別に、UIデザイナーが採用活動でMFSDのアプローチを実践したりしています。
まとめ
『サービスデザインの実践』を読んで、プロセスの柔軟性、反復するコアアクティビティ、社内の実践コミュニティなどの話は特に共感しました。
これまでのプロジェクトの経験を振り返ると、コアな活動は変わらず、アプローチのパターンが見えてきます。そのパターンを軸に、プロジェクトの状況に合わせて適切な手法やツール、ナレッジを活用することで、自分たちの組織に合ったサービスデザインアプローチができるようになっていくのだなと、改めて感じました。
社内の実践コミュニティについては、マネーフォワード Xのフラットなコミュニケーション、個人の「やりたい!」という意思を尊重する文化があるからこそ、できている活動なのかもしれません。
今後もサービスデザインの学びを続けて、さらにマネーフォワード Xのビジネスに貢献していきたいと思います。
ありがとうございました。
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