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#小説

Les jours d'écume (34)

Les jours d'écume (34)

扇風機がまわる。コードはくねくね、本棚のうしろ。かま首たてて、蛇になる、龍と化す。はきだす炎が、かき氷を溶かす。クリスタルの底、ピンクの血液。

Les jours d'écume (33)

Les jours d'écume (33)

水泳、算数、ピアノ、受胎告知、少女はつかれはて、ため息のリズムは三四〇小節のボレロで、メガネはくもり、にごり、ひびわれて、なにも見えない。

Les jours d'écume (32)

Les jours d'écume (32)

先尾翼式三葉機は、一九九九年、フロリダ半島の先端、プエルトリコ、バミューダ諸島をむすんだ、三角形の海域へ。
無人島へ。
あなたが最後に見た、波、砂、月、魚、風、夢を見るために。

無題(習作)

無題(習作)

 見るものすべて威圧的な日、石川啄木のような日、うっすら曇った今日この日、窓からの景観にしかかるマンションの屋上がこわい。双子のようなあるいは残像のような相似形の立方体が馬鹿になった遠近感越しに君臨、それは給水タンク。給水タンクの陰をちらちらと人間でないものが跳梁している。それがなんなのか確認できる前にただごとでないことだけは分かる。いかなる瑞兆か。おれは死ぬのか、という恐怖。すると凶兆。なにが起

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Les jours d'écume (29)

Les jours d'écume (29)

切手のかわりに月をはって、火星の誰かに送ったハガキ。流星群の夜に、モールス信号で返事が来た。

Les jours d'écume (28)

Les jours d'écume (28)

自転車は加速する。坂をころがる車輪は太陽と月。最後の審判までもう少し。麦わら帽子が飛ばないように、ゆっくり、あせらず、ここに来て。

Les jours d'écume (27)

Les jours d'écume (27)

どこまで行っても貝殻のなか。真珠になろうか、吸殻になろうか。

Les jours d'écume (26)

Les jours d'écume (26)

悪夢が浴槽で眠っている。悪魔ではない。悪夢が、シャボン玉を飛ばしつかれて。

Les jours d'écume (25)

Les jours d'écume (25)

あなたは手に入れる、雲の、カーネーションの、ダイヤモンドの沈黙を。わたしはジョウロで水をかけ、あなたは溶ける。水銀のように、光っている。

Les jours d'écume (24)

Les jours d'écume (24)

「愛をください」と泣きながら、アイは巨大化する。ハッカのキャンディーをなめてつめたい風を吹かせ、トウガラシをかじって火を吐く。スカートのなかが見えている。

Les jours d'écume (23)

Les jours d'écume (23)

アサガオ棚にかこまれて、わたしは眠る、産婦人科のベッドの上。かすかなかおりの結晶は、肺から心臓へ。種は芽を出す、葉をつける、花を咲かせる。翌朝、少しだけ早起きする。

Les jours d'écume (22)

Les jours d'écume (22)

真夜中、メリーゴーランドがまわる。359度まわる。誰も知らない。翌朝、子供たちは白馬にのる。わたしだけが知っている。

Les jours d'écume (21)

Les jours d'écume (21)

本日の天気は、晴れのちピアノ。アップライトピアノ、グランドピアノ、パイプオルガン、ピアニカ、チェンバロ、降ってくる。受けとめたなら、あなたにあげる。

Les jours d'écume (20)

Les jours d'écume (20)

あなたは灯台に監禁され、満月の夜、貝殻ドレスで踊る。世界の終わりまで踊りつづける。