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『真昼の決闘』モノクロの美しさ。孤独なヒーロー。映画感想文(ネタバレなし)

NHK BSで放送していたので、映画『真昼の決闘』を途中から見ました。

STAFF・CAST

『真昼の決闘』(1952年)1時間25分 アメリカ
監督/フレッド・ジンネマン
出演/ゲイリー・クーパー、グレース・ケリー
音楽/ディミトリ・ティオムキン

STORY

主人公のウィル・ケイン保安官(ゲイリー・クーパー)に逮捕された悪漢が、釈放されて町に戻ってくるという。銃を持った仲間3人とともに、保安官に復讐するつもりだ。正午に彼を乗せて列車が町に到着するまで、わずか85分。保安官はこの日退職したところで、結婚したばかりの妻(グレース・ケリー)と町を出ていく予定だったが、逃げずに踏みとどまることを選び、町の人々に協力を求める。だが、悪漢を恐れる町の人たちは……。

感想

悪漢に立ち向かう保安官をヒーローとして描く、西部劇のパターンを崩した名作とのことで、聞いたことはあるようでちゃんと見ていなかったので、途中から見ました。

この映画の保安官は、絶望しながらそれでも自分の道を行く「孤独なヒーロー」です。いいですよね、こういうの。

1時間25分(85分)という、決して長くない映画ですが、静かな緊迫感が続き、目を引きつけて離しません。
シナリオの構成もドラマが凝縮されていて、無駄がありません。
約85分間のドラマを85分間で見せるという、ドラマ『24』的な演出で、焦りと緊張をじっくり描き出します。

そして、モノクロ映画ですが、画面が実に美しい。もう、ずっと見ちゃいますね。
光と影の中にくっきりと際立つ人物像。
緊張と深まる絶望に、ゲイリー・クーパーの顔に光る汗。
グレース・ケリーのなめらかな陶器のような肌、髪の輝き。
そして何より、どの人物も目がきれい。
主人公の元カノのヘレン(ケティ・ブライド)もいい味を出してます。

監督が、この物語について、「これはどこでも、いつでも起こり得る話である」と語ったそうなんですが、それに近いものを感じました。
自分が困難に面したときに、正しいことをやっているつもりなのに、周りから人がいなくなったら……?
今の時代にもありそうな話に思えます。

主題歌の「High Noon」が、耳に残ります。
保安官が活路を求めて町をさまよう背景に流れているんですが、この内容がほぼ、彼の心情を歌っているように見えるんです。
主人公が、花嫁に逃げられながら、苦悩を押し殺して行動しているのに、BGMが「私を見捨てないでくれ、愛しい人……」「どんな運命が待っているのか」「時計の針が正午へと進んでいく」と気だるく歌い続けるんですよね。すごいな、これ。

数々の映画に影響を与えた名作は、さすがのおもしろさですね。


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