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ラオス旅行(仮)その4

「朝6時半にトゥクトゥクが来るから」
昨夜教えてもらった通りにゲストハウス前にやってきたトゥクトゥクに乗り込んだ。ここからタケークまでは5時間かかるらしい。トゥクトゥクに5時間か……。早起きも手伝って、私は既に疲れ初めていた。

「車の助手席に2人座れるんじゃないか」
2日前から行動を共にしていたイリヤはすかさず運転席に提案し、オーケーの返事を得ていた。トゥクトゥクだろうと何だろうと、助手席は普通の車と変わらない。イリヤ、実にめざとい。さすがだ。

しばらくは2人でお喋りに興じていたが、イリヤはそのうち寝てしまった。私もそうだが、彼も当然疲れているのだろう。車酔いを避けるために私の口数が減っていたのも理由のひとつかもしれない。

途中のバス停で進行方向を同じくするお客を順次拾い、荷台席は満員になっていた。お客がトゥクトゥクの到着を知っているのは、このトゥクトゥクが定期便だからなのだろう。文字通り、彼らにとってはバスなのだ。

トゥクトゥクはおよそ1時間に1回の割合で休憩を取ってくれたため、まずまず快適だった。いや、それどころか、ラオスに来て以来、1番快適だったと言ってもよい。座席が激しく揺れる荷台じゃないのが大きい。

始めはタケークまで5時間と聞いて恐れ慄いていたが、予定よりも早く、私たちは4時間半弱でタケークのバスターミナルに到着した。都合の良く、パクセー行きのバスが1時間後にある(というか、トゥクトゥクは接続を考えての早朝便だったのだろう)。朝が早く、朝食を抜いていた私たちはターミナルの食堂で腹ごしらえする事にした。

私が頼んだのは、タイ米のご飯に野菜炒め、オムレツ、角煮、揚げ豆腐、魚の甘辛煮と色んな物を乗せた丼飯のような物で、これがなかなか美味しかった。日本の食堂でも出てきそうな代物だ。

気持ちも落ち着き、ここからが後半戦である。『地球の歩き方』によれば、タケークからパクセーまでは6時間かかる。まだ先は遠い。

私たちのバスは韓国車の韓国バスで、前面になぜかミシュランマンのような人形が取り付けられていた。乗り心地は中の下といったところ。私の座席はリクライニングが故障していたが、まあこれは大した問題ではない。乗客のほとんどはカーテンを閉めていて車内が薄暗い。いかにも車酔いを誘発しそうで、私にとってはこちらの方が気になる。出来るだけ景色に集中して気分を紛らわせる事にした。

トゥクトゥクと同じように何回か休憩を挟み、午後6時半過ぎにパクセーのバスターミナルに到着した。12時間以上が経っていた。

バスターミナルでは、乗客を待ち構えていた市街地行きのトゥクトゥクに乗り換える。当然、行程はここで終わりではないのだ。すでにラオスの通貨は手元にあまりなく、できれば手を付けたくない。
「タイバーツでも払える?」
と訊くと、周りの運転席仲間と何やら話した後に、オーケーと言う。ひとまず安心だ。

しばらくトゥクトゥクに揺られ、「センターセンター」の叫び声で乗客はトゥクトゥクをぞろぞろと降りる。私が今夜泊まるホテルからは少しだけ遠い。そう思っていた矢先、運転席が私に、助手席に乗るよう手振りで示した。ひょっとして、ホテルの近くまで送ってくれるつもりではないかーー。

喜んで助手席に乗り込み、トゥクトゥクの運転席が連れて行った先はATMだった。どうやら、ここでキープ(ラオス通貨)を下ろせという事らしい。私は苦笑いしつつ、ポケットからお金を取り出して彼に支払った。

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