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ブレストは、アイデアを出すためにやるのではない

らしい。

世界標準の経営理論の中で、「知識を引き出す」ことに関する項目がある。そこに、ビジネスパーソンなら誰しも目を留めてしまうことが書いてある。

「ブレストは、アイデアを出す上では必ずしも効率が良くない」

そう...なの...?と思う反面、実感としてはわかる。そんな気もする。思えば、SHIFT:イノベーションの作法という本でも、ただ集まって話しているだけでは、一人では絶対に思いつけない突出したアイデアなど生み出せないと著者は断言していた。

例えば、10人の集団でブレストを通じてアイデアを出すのと、10人それぞれが個別にアイデアを出して後でそれを足し合わせるのでは、アイデアの量も質も後者の方が高くなる傾向が、多くの実証研究で示されているのだ。集団でブレストをすると、どうしても他人に気兼ねして大胆な意見が出しにくいという心理が働くし、加えて他人が話している間は自分もその話を聞かねばならず思考が停止してしまうからだ。

わかる。納得オブ納得。ではブレストが意味がないかと言うと、必ずしもそうではないそう。

チーム内で効果的にアイデアを出すための共有認識があるとよいらしい。例えばブレストで有名なIDEOは下記のようなルールがある。

・トピックに忠実であれ(Stay Focused on Topic)
・ぶっ飛んで良し(Encourage Wild Ideas)
・すぐに判断・否定するなかれ(Defer Judgement)
・会話は一人ずつ(One Conversation at a Time)
・質より量を(Go for Quantity)
・描け、視覚的であれ(Be Visual)
・他者のアイデアに乗っかれ(Build on the Ideas of Others)

このように、効果的にアイデアを出すための共有された前提があると、ブレストの欠点が補われ、その効率の悪さがカバーされるという。

ただ、この本曰く、IDEOでのブレストがもたらす最大の貢献は、「面白いアイデアが生まれること」ではないそう。それよりも、「誰がどういう知識を持っているかを知ることができる機会になっている」ことが重要らしい。毎回社内の異なる領域の専門家が集まって行われるブレストは、要するに質の高い交流の場になっているということらしい。

知を組織のパワーの源泉と考えると、確かに「誰がどういう知識を持っているか」は重要な気がする。それどころか、めちゃくちゃ重要だとこの本には書いてある。少し長く引用する。

人は認知に限界があり、一人が持てる知のキャパシティには限りがある。したがって、組織が大きくなって蓄積すべき知の総量が多くなれば、全員がそれをすべて共有することは、そもそも不可能だ。しかし、「彼は○○の専門家だ」「○○がわからなければ、彼女に聞けばいい」程度のwho knows whatを覚えるだけなら、認知の負担ははるかに軽い。これなら、組織が大きくても覚えることが可能だ。組織に重要なのは、「あの部署の○○さんならこのことを知っているから、必要になったらそこで話を聞けばいい」というメタ知が浸透し、そして必要に応じて適切な他メンバーから聞く(知を引き出す)ことなのだ。

整理すると、組織としてブレストを活用するには、(1) ブレストのルールを作り (2) メンバーをできる限り毎回変えることが重要ということになる。

そういうことらしい。勉強になる。

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