去年の分析~製図試験について~

かなり遅れましたが、昨年に行われた一級建築士製図試験の考察を書いていきたいと思います。
あらかじめ断っておきますが、30枚程度の合格不合格図面から得られた考察ですので個人的な偏りがあるかもしれませんがご了承ください。
あくまでも私個人が感じたことをまとめていきます。

今日の内容
・製図試験全体を振り返って
・合格不合格の分かれ目
・入り口はどっちだ
・プール、コンセプトルーム、多目的室は飾り
・周辺環境は建物内部だけで考えない
・「
改めて問われる」と
・設計趣旨を蔑ろにしたのはだれだ


・製図試験を振り返って

今年の製図図面を30枚程度拝見する機会がありまして、いろいろ自分なりに推察してみました。
まあ、合格図面、不合格図面の明確な違いが見受けられたのは描いた人にもよるなので、試験全体に言えることではないかもしれません。

まずランクⅣの割合が高かったそうで、それはコンセプトルーム等の自由設定の箇所、設備・構造の整合性などを細かく精査するために、足切りがあったと推測されます。

そこがどこだったのかわかればいいのですが。それをこれから書いて行きたいと思います。ちょっとここからは推測が強くなりますので参考までに。


・合格不合格の分かれ目

全体的に描き切っていない、面積オーバーなどのよく言われる一発失格項目はランクⅣで当たり前ですがそれ以外でダメだった人は足切り的な項目に引っかかったのではと推測できます。一見すると合格してそうなまとまった図面も不合格になっているのでそういった足切り項目の存在が伺えます。
大きなところで言えば、設計趣旨の一体的利用及び避難、周辺環境への理解などが大きな所と言えるでしょう。

それでは少しずつ解説していきます。


・入り口はどっちだ。

まず入り口の問題。
今年は東西南北どこからアプローチを取っても良かった。しかし設計趣旨の一体的利用、以前からの正門としての機能、周辺環境から考えると西か北にメイン、そして南にサブエントランスも良いかと思います。東は一体的利用と内部レイアウトを考えるとメイン・サブともに持ってくるのはあまり合理的ではないかと思います。

私だったら西の桜並木からメインエントランス・北側の駐車場からサブエントランスという考えが良いかと思います。

西・北以外でエントランスは前面道路から取るという考えに固執した人は内部レイアウトにもよるでしょうが合格は難しいだろうなという印象を受けました。


プール、コンセプトルーム、多目的室は飾り

メインはやっぱりプール・コンセプトルーム・多目的室の大空間で間違いなと思いたいのですが、やっぱりこれは難易度を上げるための要素で出来ていて当たり前。ここはメインじゃない。

皆が勉強している所は出来ていて当たり前なのでここが分かれ道というほどでもない。できていないのはもちろん不合格だけど。
また構造の安定性・合理性(経済性)に配慮して、ならべく総三階建ての多目的室だけ出っ張るような配置も避けておいた方が良さそうです。


・周辺環境は建物内部だけで考えない

周辺環境は建物内部だけに影響を及ぼすものではありません。敷地内その他の施設と一体的利用と言われているのですから、周辺環境が大きく影響してきます。そういう意味で考えられていない案は合格していない図面が多かったように感じます。
公園・桜並木・駐車場や旧校舎・グラウンド、いろいろな要素を包括的に考えなくてはなりません。そして計画する建物がそれらの環境を有効活用していなくてはいけません。

考えすぎでは、というご感想もあるかと思います。しかしそこでしか差異がつかない試験内容でした。内部レイアウト、延べ床面積、要求された設備、どれをとっても難しくは無かった。周辺環境への配慮が勝負の分かれ目だったのかもしれません。


・「改めて問われる」と

「改めて問われる」といつもとは違う答えを出してしまうのは何ででしょうか。
それは問題になれ過ぎている。
答えを見てなるほどとは思うものの、なぜそうしたかを考えない。

それが大きな原因だと考えます。

今回も一体的利用と言われて、どうすれば良いかわからなかった人もいるかも知れません。ですが試験が終わった後思い返してみると、そんなに難しいことではないことに気づく。

今年ダメだった人はこれはなぜこうなっているかを自分で考える癖をつけると良いかと思います。


・設計趣旨を蔑ろにしたのはだれだ

いろいろと描いてきましたが、今年は設計趣旨から逸脱したものに関してはかなり厳しい採点だったように感じます。

まあ今まで設計趣旨を蔑ろにしても、内部がまとまっていれば合格していた一定数の人がいた為にあまり問題視されてこなかったのが一番の原因です。

今年の試験は一体的利用という一番大きい部分を読み飛ばしや軽く見た人が入り口を南と東に持っていき、なおかつ桜並木に背を向けたような計画、一体的利用が出来ない施設(カフェやコンセプトルームさえも他の施設からは利用しにくい)状態にしてしまい、大きく減点不合格の流れが一定数あるように考えられます。

今後もこのような状態が続くと予測されます。一昨年のコンセプトルームから自分たちが設定する部分の精査がはじまってきているとしたら、一発不合格の項目を多く設けて足切りにすることが考えられます。

試験側も変わってきていると思いますが、これが当たり前なんです。内部がまとまっていたら合格、一級建築士はそのようなことでは良い訳がありません。これは国家資格なのです。

製図試験の課題文はお施主様からの要望書です。それを満たして初めてスタートラインなのです。それを忘れずに今年ダメだった人は来年度しっかり一級建築士の免許を取るということを肝に銘じましょう!



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