今年の課題分析「美術館の分館」

今年の一級建築士試験 製図課題は「美術館の分館」

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建築技術教育普及センター

それでは今年の課題を分析していきましょう。

ツイッターなどでは「もはや地域コミュニティ施設!」とか言われています。地域のための部分が強くなることは課題発表の中の 注1)からも明白です。

注1)
既存の美術館(本館)の隣地に、美術、工芸等の教育・普及活動として、市民の創作活動の支援や展示等を行うための「分館」を計画する。

また最近の美術館でも地域住民が使える場所を含んだ計画が見受けられます。以前プロポーザルが行われた「八戸新美術館(設計・計画:西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体)」の計画も地域の文化拠点としての役割を担う計画になっています。

こういった流れからもただ作品の展示を行う美術館から、地域の住民が学ぶ場としての機能が求められて来ているのだと思います。

それでは今回の課題で重要な部分はどこなのか見ていきましょう!

1.美術館の分館とは。

これが課題に合致する美術館分館ですとはっきり言えるものは少ない気がしますが、県立美術館などの公共の美術館、加えてギャラリーが併設している公共の施設などを見学しておくと良いと思います。

特に住民活動を行っている(住民のための借りられるスペースがある・教育活動に力を入れているなど)美術館があれば見学や図面などを調べてみると良いと思います。

今回も美術館の分館ですので、美術館の本館があるはずです。その本館で収まりきれないものや活動を分館で行うはずです。ですのでただ作品を展示するだけではない活動(市民の創作活動など)が求められてきます。

地域に寄与するものなので、ギャラリーが併設している図書館なども参考になるかもしれません。

まずは出来るだけ見学をして、こんな感じでいいんだなという感触を掴んでほしいと思います。

2.まずは動線

まずは美術館の分館で市民の創作活動と謳われているので、当たり前ですが動線の整理が重要になってきます。
利用者(市民)・管理者(運営)・学芸員や美術館(管理者に含まれる可能性もあり)・美術品の搬入導線・機械設備の維持管理・少なくともこれだけの動線が考えられます。

まとめられる動線もありますが、こういった動線を特に利用者とその他の動線が交錯しないように、そしてその中で各業務が滞りなく行われる状態でなければなりません。

毎年動線については、敷地内アプローチも含めきちんと整理しないといけない課題が出ています。またこの動線をしっかりクリア出来れば課題が上手く解くことができます。
ですので見学の際は利用者から見えない動線も考えながら見学することをオススメします。

3.ゾーニングもいつも大事

次も当たり前ですが、ゾーニングです。美術館機能と市民活動の機能はもちろん適切にゾーニングしなければ行けないのですが、大空間などの関係ではっきりとしたゾーニングが難しくなる場合もあります。そんな時は基本の階別ゾーニング、それが無理だったら要求室の利用形態を考慮した上で別の階に一部移すという流れを覚えておきましょう。

そういった時のためにも事例研究は大事です。判断に迷った時今まで見学した公共の施設を思い出してください。それが参考になります。
AとBという要求室は近くなくても大丈夫そうだな! などの判断が実際の建物から知見として得られます。しっかりゾーニングをするためにも実際の建物をしっかり研究しておきましょう。

4.アプローチや屋上庭園で迷わせる

毎年そうですが、配置図だったり、防火設備だったり、敷地の断面図だったりと落ち着いて考えれば問題ないが、試験で出されると驚いて迷ってしまう箇所が本試験には必ずあります。

今年はそれが屋上庭園や本館からのアプローチになってくるかもしれません。試験自体もこれまで何度も出題の仕方が変わってきていますが、ここ最近では敷地図を別にしたりと今まで無かった方法で受験生を迷わせています。しかし落ち着いて考えればいつもと変わらない内容であったりします。

ここで重要なのはイレギュラーな問題は落ち着いて、現実の建物に置き換えてみれば対応できるという点です。

去年もアプローチは特異なものでしたが、一般的な同様の建物を考えればアプローチ計画はそんなに難しいものではありませんでした。
今年も敷地条件からアプローチ、屋上庭園をイレギュラーな形で出題してくる可能性もありますが、事例研究などをしっかりやることで対応できると思います。

5.結局基本は変わらない

説明をしてきましたが、あれ?と思った方も多いと思います。そうです、結局イレギュラーな部分が出ても、基本は変わらないのです。
公共の施設を基本とした事例研究、動線とゾーニングが基本であること、そういったことは出題形式がイレギュラーになっても変わりません。

建物の種類が変わっても、利用者が第一ということは変わらないし考え方は同じです。

ですので、しっかり事例研究をして製図の勉強をして行きましょう!




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