【短編小説】キスマークの男
起き抜けにつんと鼻に入ってきた煙草の匂いがガラムの甘い香りだったので、ミキはぼんやりした頭の片隅で、あ、またアミが部屋に入ってきているな、と思った。枕許に置いてある目覚し時計を掴み顔の前に持ってくる。八時四十分。指先でまぶたを擦りつつあくびをし、首だけ起きあがらせて足許を見ると、思った通り、部屋の入口にアミが胡座をかいて座っていた。
「や、おはよう」と彼女は片手を上げて言った。
「おっはー」ミキも答えた。
薄暗い部屋にカーテンの隙間から指し込む細い光が伸び、アミが吐き出す