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ソーシャルビジネスの経営支援で考えてみた_「三方良し」編

「三方良し」
この言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。近江商人の経営哲学のひとつで「商売において、売り手と買い手が満足するのは当然のことで、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方です。「新しく事業を始めたい」という方のお話を伺っていると、データがあるわけではないですが、肌感覚では約半数の起業者の方は、何かしら「社会課題」に対して事業で解決していこうという考えを持たれているように思います。社会課題も時代を反映して様々で、児童虐待、災害の激甚化、LGBTQ、技能実習生の雇用の問題など、多くの社会課題に対して事業で解決していこうという人が確実に増えているのは、経営コンサルティングの現場からも感じます。


「ソーシャルビジネスで自分が理想とする社会へ少しでも変えていきたい」と思うことは、とても素晴らしいことですし、一過性のトレンドで終わるのではなく、これからの社会を生きていく人が向き合わなければならないことなのですが、ここで一つ気になることがあります。起業する人の話を聴いていると「世間よし」つまり、社会課題解決の部分を熱心に考えるあまり「売り手、買い手良し」の部分をおそろかにしてしまう傾向がよく見られるのも事実です。


なぜなのでしょうか?あくまで仮説ですが、社会課題に対する想いが強いために「困っている人を助けたい」「社会をもっと良くしたい」ということをトッププライオリティに考えてしまうため、どうしても「利益を生んでいく」という考えを後回しにしがちなのではないか、と思うときがあります。もちろん、原因はそれだけではないと思いますが、人間、興味のないことには、そもそも関心が薄く、後回しにしがちなのかもしれません。

でも「世間よし」ばかり考えていると、どこかで事業が行き詰ってしまう、あるいは、最初は1,000万円近くあった軍資金も、あっという間に人件費、家賃をはじめとした経費に消えてしまい、1年も経たないうちに、いつの間にか銀行口座には残り僅か、ということもよくあります。


もし、前述した仮説が正しければ、毎月ビジネス(事業)の成績を、健康診断と同じように、毎月数字でチェックする仕組みを創るということが課題になります。

税理士が毎月出してくれる試算表をベースに確認する仕組みをつくる、あるいは、月額4千円ほどで利用できるクラウド会計ソフトの機能を利用してみるなど、昔に比べると事業の健康状態を把握することもぐっと身近になってきましたので、毎月の自分の事業に関する状況を、ほぼリアルタイムで数字で把握する習慣をつけてみるとよいです。


ソーシャルビジネスは、ソーシャル(社会課題)をビジネス(事業)で解決する。もっと言えば、ビジネス(事業)で、ソーシャル(社会の病気)の解決スピードを速める、という意味があるのではないか、と思います。だからこそ、流されそうになる自分に言い聞かせて、数値で事業の健康状態を効率よく確認することも、以前にも増して大切になってきていると感じます。

経営アップデート 代表 匂坂俊夫(中小企業診断士/事業構想士)


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