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2022年6月実施第1回東大本番レベル模試 スタッフによる所感【現代文】

全体概観:標準


東京大学の現代文は、理系で第一問、文系で第一問と第四問に該当します。文章の難易度が高いわけでも、設問が奇抜なわけでもなく、多くの場合純粋に文章を読解する能力を問う質の高い設問となっています。この時期はまだ現代文に慣れていない人も多いかと思われますが、模試を受験して設問形式に慣れるとともに、自らの解答作成についても復習しておくとよいでしょう。

・第一問:標準


岡崎乾二郎「聴こえない旋律を聴く」よりの出題。近年の東京大学の出題形式にあわせたオーソドックスな内容です。難易度も高くないため、能力のある人間であれば高得点が望めます。逆に、まだ現代文に自信がない人は基礎的な手法について確認しておくことが望ましいと言えます。
(一) 標準
傍線部は「どういうことか」を問う設問。東京大学の現代文で最も頻繁に問われる形式の設問であり、「傍線部中の要素を全て説明する」という解法の基本をおさえておくことが非常に重要となります。今回も、「二つの別の世界」についての説明、「交差」「解離」についての説明を意識すればさほど難易度は高くなかったものと思われます。
(二) やや易
こちらも「どういうことか」の設問。先ほどと同様に、傍線部の要素を把握し、前後の段落・文章の論理関係に即して説明してやれば問題ありません。
(三) 標準
やはり「どういうことか」の設問。傍線部が長いため気圧されるかもしれないが、細かく見ていくと説明すべきことははっきりしているでしょう。
(四) 標準
傍線部全体の説明、あるいは傍線部全体の理由ではなく、傍線部中「ネガティヴ・ケイパビリティ」について、なぜそれが必要かを問う設問。傍線部を含む部分が倒置されていることには容易に気づくはずで、直前部が理由説明の核心にあたることも容易に思いつく。無論これでは字数の点でも不足しているし、何より理由説明になっていない=ネガティヴ・ケイパビリティの必要性を直接説明できていないと考えられるので、文章全体の流れに沿って各種説明を盛り込めばよいでしょう。なお、「本文全体の趣旨を踏まえて」の文言に惑わされて本文全体の要約を意識しすぎた解答とならないように注意したいです。
(五) 易
東京大学の現代文では、例年第一問の末尾に漢字の書き取り問題が出題されます(2015年までは5つ、2015年より3つ)。難易度の高いものが出題されたことはなく、この設問で点数を落としている場合ではありません。

・第四問:標準


文系専用の第四問では、このように随筆が出題されることが多いです。文章の種類としては論説文とは異なるかもしれませんが、あくまで設問に解答する上でなすべきことはさほど変化はないと言えます。苦手意識を持つ人も多いと思われますが、あくまで問題の解き方の基本に忠実でありたいですね。
(一) 易
傍線部の理由を聞く設問。傍線部の直前は当然誰しも見ることになるでしょうが、そこに「〜から」と書いてあってたまげた人間も多いのではないでしょうか。ここを解答の核として使えばよいですね。ただ、まさか「オヤッと気づく程のものもない」などの文言をそのまま解答に使用できるわけではありませんので、適宜説明を加えてわかりやすくする操作は必要になります。
(二) 易
こちらも理由を問う設問。直前直後を見渡してみれば、「何故だろうかと仰々しく考えるほどのことでもない」と言明されていてややげんなりしますが、それでも根気よく読み進めていくと理由が説明されています。文章中の語句をそのまま使用するかについては難しいが、「ケチ根性」「コロリと」などは説明を加えて解答らしい日本語に仕上げるのが妥当と思われます。
(三) やや難
「どういうことか」の設問。傍線部中、「それらしく」の内容説明=指示内容の説明が求められていることには誰でも気づくところですが、この部分の主語である「これ」の指示内容も明示してしっかり解答に反映させたいです。主語については直前の部分を読めばまとめられるでしょう。むしろ「それらしく」の方が難解に思えるかもしれませんが、「それ」はあくまで出てきた名詞を指すことに留意すれば、「母親」を指すことに思いあたりたいです。
(四) やや難
傍線部にあらわれた筆者の心情を説明する問題。心情の関係する設問は共通テストにも出題されますが、いずれにせよ傍線部や文章の内容を踏まえるという基本は確認しておきたいです。今回の場合も、あくまで傍線部とその直前部を参考にすれば、解答の大まかな流れは掴めたかもしれませんが、多少難易度は高かったでしょうか……。

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